『TED驚異のプレゼン』


あなたは

自分のアイデアが会社に採用されず、

悔しい思いをした経験はありませんか?


新プロジェクトのアイデアをパワーポイントにまとめ、

取締役や部長、課長がずらりと並んだ会議室で、

プレゼンテーションするのです。


そして結果はあえなくボツでした。


そんな経験です。


多くの人は、

自分のアイデアを発表して

それがボツになった経験をすると、


アイデアがダメだったのだと思ってしまいます。


しかし、

その考えは間違っていることが少なくありません。



というのも、

あなたのアイデアが採用されないのは、

アイデアが悪いからではないのです。


アイデアはむしろ、

ありきたりのものだったりしたほうが、

採用されるケースがあります。


では、

何が問題だったのでしょうか?


それは、



伝え方が悪かったのです。




どう伝えればいいのかを、

TEDの実例を通して具体的に解説してくれたのが、


本書です。


『TED驚異のプレゼン』(カーマイン・ガロ)


第一部 感情に訴える

 第1章 内なる達人を解き放つ

 第2章 ストーリー技術をマスターする

 第3章 会話のように話す


第二部 目新しさを出す

 第4章 みんなが知らないことを教える

 第5章 驚きの瞬間を演出する

 第6章 ユーモアで軽快に


第三部 記憶に残す

 第7章 18分ルールを守る

 第8章 五感を刺激して記憶に残す

 第9章 自分らしく語る


この目次を見てもわかる通り、

人前で話すときのテクニックがふんだんに紹介されています。

セミナー講師はぜひ読んでおきたい本です。


ここでは、

本書のなかに記載されている、

ちょっとおもしろいエピソードを紹介しますね。



ひとつは脳卒中をみずから体験した脳科学者のお話です。


ハーバード大学のドクター・ジルは、

ある朝、

左目奥の突き刺すような痛みで目が覚めます。


頭痛はますますひどくなり、

身体のバランスも失われ、

まもなく右腕が完全に麻痺しました。


脳の左側の血管が破裂し、

脳卒中を起こしたのです。


普通、

脳卒中を起こすと、

完治したとしても、

後遺症がのこることが多く、


深刻な病気として、

かかった人間は、

落胆するものです。


しかし、


ドクター・ジルは

「素晴らしい幸運」と考えました。


2008年3月のTEDの講演で、

ジルは聴衆にこう語りかけます。


「『大変、脳卒中になっちゃった!』と思った瞬間、

脳のなかでこんな声がしたわ。

『最高!自分の脳を徹底的に調べられる脳科学者なんて、

そういるもんじゃない!』って」


ジルは、

脳の解剖の専門家だったのです。


凄いですよね。

脳卒中になって喜ぶ人なんて、

世界中探しても、

たぶんこの人だけですよね。


この発言が話題になり、

ジルのプレゼンの動画は、

1000万回以上も視聴され、


2008年版世界で最も影響力のある100人に

選ばれました。





もうひとつのエピソードは、

「感情の伝わり方」を測定した研究のお話です。



ミネソタ大学のジョイス・ボノ教授と、

ミシガン州立大学のリーマス・イリーズ教授の研究です。


2人の研究結果から


「カリスマ性のスコアが高い人は、

書面あるいは口頭によるコミュニケーションで

前向きな感情をより多く表現する傾向がある」ことがわかりました。


2人は、

前向きな感情は伝染し、

聴衆の気持ちを盛り上げることも発見しました。


2人はこう語ります。


「我々の研究結果は、

リーダーの感情表現が説得力や魅力、

さらには聞き手のムードまで、

大きく左右することを明確に示している。


さらに、

リーダーのカリスマ性は、

組織の成功と結びつくと示唆している。


なぜなら、

カリスマ的リーダーは、

部下に前向きな感情を持たせられるからだ。


重要なこととして、

リーダーの行動は部下の情緒に影響を与え、

彼らの幸福と安心感を明らかに高めることも示している」


幸福感という感情も伝染すると2人は言っています。


ですから、

あなたが幸福感に浸っていたら、

周囲の人々も、

幸福を感じることができるということです。


おもしろい研究ですね。




本書は、

プレゼン技術を身につけるためのものですが、

こうした素敵なお話も、

多数紹介されています。


(高橋フミアキ)