『2100年、人口3分の1の日本』(鬼頭宏)
著者は上智大学経済学部教授で歴史人口学者です。
日本の人口は、
現在の1億3千万人が50年後には9千万人に、
100年後には4千万人にまで減ると予想されています。
この人口減少のなかで、
私たちの生活はどう変わっていくのでしょうか?
平安時代、
日本の人口は700万人に増加します。
その後、国家の弱体化と気候変動や飢饉により、
人口は室町時代まで減少していきます。
その後、
戦国時代を経て、
江戸時代前期は、
急激に増加するのです。
耕地の開発は人口増加に追いつけず、
農民1人あたりの耕地はどんどん縮小していきます。
平和な時代が続き、
市場経済化が進むと、
狭い耕地からより多くの収穫高をあげなくてはならなくなります。
稲の品種改良、
ため池、灌漑用水の整備などで、
収穫をあげていきますが、
もっとも重要なのは、
日本人が勤勉になったことです。
家族労働で、
朝から晩まで働き、
夜や農閑期は副業や出稼ぎを行うという、
勤勉な労働慣習がこのころに誕生します。
こうした勤勉さによって、
エネルギーや食糧を完全に自給するという、
「鎖国社会」を日本は築いたのです。
おかげで人口は3000万人を超えます。
ところが、
18世紀に入って突如、
人口減退期を迎えるのです。
享保の大飢饉(1732年)
天明の大飢饉(1782年)
天保の大飢饉(1830年)
天明の大飢饉のときには数万人の餓死者を出したといいますから、
飢饉の凄まじさは想像を絶するものがあります。
しかし、筆者は、江戸期後期の人口減少の原因は、
「少子化」だというのです。
農家の夫婦の生涯出生数は5人以下だったといいます。
子どもの死亡率が高かった当時、
確実に子孫を残すにはぎりぎりの水準だったといえるでしょう。
出生率が下がった要因としては、
いくつか挙げられます。
ひとつは、
出稼ぎによる性交渉の頻度の低下です。
現代の遠距離恋愛とか、
単身赴任とか海外出張、
長時間労働などで夫婦の時間がなくなるケースと似ていませんか?
2つは、
飢饉への幕府の無為無策による将来への不安。
将来への不安で所帯を持つことも、
子ども作ることもできなくなるのは、
今も昔も変わりませんね。
3つは、
飢饉での栄養不足による不妊。
江戸時代は栄養不足によって不妊に陥っていたようです。
現代日本女性も不妊が増えていて、
不妊治療患者数が46万6千人(厚生労働省調べ)もいるそうです。
原因は不明ですが、
無理なダイエットが関係しているかもしれません。
日本はいま人口減退局面にあり、
2100年まで減少が続くでしょう。
しかし、世界は逆に増加しているのです。
2100年には100億人を突破するだろうと予想されています。
新興国の「爆食」で食料危機が訪れるかもしれません。
本書には、
2100年に、世界は、日本はどうなっているか、
いくつかのシナリオが提示されていますが、
大切なのは、
「どうなっているか?」ではなく、
「どうしたいのか?」なのです。
私たちが長期的なビジョンを持って、
国を動かしていかねばなりません。
著者は最後にこうメッセージを記しています。
「人口減少社会というのっぴきならない事態に遭遇している日本が、
今後、持続的な発展を達成するためには、
これまで営々と築いてきた産業社会に代わる新たな文明を創造していく必要がある。
そのためには、
日本人が外に出て行き、
同時に異文化を受け入れることで、
刺激を受け、
アイデアを生み出していかなくてはならない」
知恵と勇気でこの難局を切り抜けていこうではないか!
ということですね。
(高橋フミアキ)