『金持ちゾウさん、貧乏ゾウさん』(本田健/PHP文庫)
これはあるゾウの村でのお話です。
昔、炭鉱で栄えたカネー村。
村のゾウたちは静かに幸せに暮らしていました。
そこに降って湧いた投資の話。
最初は懐疑的だったゾウたちが、
いつの間にか次々と巻き込まれていきます。
ヘッジホントが引き起こすバブルの熱狂。
平和だった村が大混乱になっていくのです。
主人公はナイーゾというパン屋の3代目。
パン屋なのにパン作りが苦手です。
父親からパン屋を継ぎますが、
仕事に誇りが持てず頼りない父親です。
でも家族思いの優しい性格。
美しい妻と賢い11歳の息子。
つつましいけれど幸せな日々を送っています。
仕事とは何ぞや、
お金とは何ぞや、
愛とは、家族とは、
そんなことを考えさせられる寓話的な小説です。
随所に名言が散りばめられていますので、
それを少し拾ってみましょう。
「だから、お金についてよく学んでほしい。
お金は人を恨んだり、
不安にさせたりする力があるが、
人を安心させたり、
愛を伝える力もあるんだ」
「しかし、お金があればそれで安心できるとはかぎりません。
なぜなら、安心できるかどうかは、
心の問題だからです。
不安がどこかにあるかぎり、
本当の安心はやってきません。
世界一の大富豪だったロックフェラーが、
お金の心配のせいで
不眠症になったそうですから、
お金がいくらあっても助けにはならないのです」
「今あなたが持っているお金をどう使うかで、
あなたの人生は、
まったく違ったものになります。
これからは自分やまわりの幸せのためにお金を使える人と、
とにかくお金を使うのが怖くて引きこもる人の、
2極化が進む気がします」
楽しい小説を読みながらお金の勉強ができる、
素敵な本です。
(高橋フミアキ)