落語/幕末竜馬伝


幕末竜馬伝

 

竜馬です。

竜馬が生まれたのは、天保6年11月15日、現在の高知県です。

土佐藩、高知城下の郷士、坂本八平の二男として竜馬は生まれております。

まあ、長男と二男とをくらべましたら、たいがい二男のほうが出世します。

 

実は、わたし、二男です。

ジなんです。

切れるほうの、血が出て痛いんですねえこれが、

でもね、この痔をいっぱつで治す方法があるんだそうですが、

雨の日にお尻をペロリと出しまして、患部を雨にさらすんですなあ、

すると一発で治る!

 

雨降って、ジ固まる!!

 

竜馬です!

 

ちなみに、竜馬のお兄はんの名前は権平といいますが、

「お兄はん」

「おお、なんじゃ竜馬」

「わしは江戸へ行こうと思うちょるキニ」

「おおそうか、江戸はえ~~ど~~」

「え? どこが?」

「竜馬、江戸へなにをしに行くんじゃ」

「千葉道場で剣術修行をするんじゃ」

「そんなことよりも、なあ竜馬。はよう、嫁をもらわんか」

「わしは嫁はいらんキニ」

「お前がはよ嫁をもらってくれんと、先が読めん!」

 

竜馬です!

 

竜馬が江戸へやってきた翌年、

浦賀沖にペリー率いる4隻の黒船が来航しまして、

千葉道場の爆弾娘がのんきな竜馬に食ってかかります。

「坂本さま!」

「どうされました、ここは厠ですぞ」

「坂本さまは開国派ですか、それとも攘夷派ですか」

「さな子どの、厠の戸が開いちょりますキニ」

「では、坂本さまは開国派ですね」

「いやいや、そうじゃあない」

「では攘夷派」

「わしは開国派でも攘夷派でもないキニ」

「そんなの卑怯です」

「さな子どの漏れるキニ。はよ、そこの戸を閉めてくだされ」

「坂本さまはいつからそんな卑怯者になられたのですか?」

「ひぃ~~~きょうじゃ!」

 

竜馬です!

 

このころ、竜馬が詠んだ歌があります。

世の人は我を何ともいわば言え、我がなすことは、我のみぞ知る。

 

竜馬です!

 

尊王攘夷の中心は長州藩、

みかどの意向を無視して開国してしまった幕府を激しく責めたてるんですが、

元治元年(1864年)に勃発した禁門の変、別名、蛤御門の変で、

長州は最大の危機を迎えます。

 

当時、長州に流行ったこんな歌があります。

「♪ららららら~~~~長州~ 力~~~!」(消臭力の歌)

 

竜馬です!

 

「竜馬よ、幕府は、長州を攻めるそうじゃのう。いま、長州が滅びてしもうたら、日本はどうなるぜよ」

「おお、そうじゃのう慎太郎」

「どげんかせんと、いけんぜよ」

「アホなアメリカ、詐欺師のエゲレス、オロシアはよだれをたらしよる。長州が滅びてしもうたら、幕府は日本を異国にかすめ取られるじゃろうのう」

「いけんいけん、そりゃ、いけんぞ。異国の野郎! なめたらいかんぜよ!」

「いやいや、なめたらいくゼヨ。そこんとこ、よろしくお願いしまづ藩」

 

「おお、そうじゃ。薩摩がおった」

「そこでじゃ、慎太郎。その薩摩と長州を結びつけようと思うとるんじゃ」

「薩摩と長州? ああ、いけんいけん、犬とサル、水と油、阿藤海と加藤愛くらい違うぞ」

 

竜馬です!

 

竜馬と中岡慎太郎の尽力により、小松帯刀の京都屋敷において、

長州の桂と薩摩の西郷の会談が実現したんですが、

話し合いは難航しまして、10日間、両者はにらみ合うばかり、

同盟の口火をどちらも切らなかった。

 

竜馬はまず桂の宿を訪ねる。

「桂、どうした?」

「坂本君。私は長州へ帰る」

「わけを聞こう」

「我々は薩摩を恨んでおる」

「薩摩が口火を切らぬというのなら、なぜ長州から口火をきらぬ」

「薩摩はずるい。長州はまっすぐに尊王攘夷を貫いてきた。ところが、薩摩は同じ尊王を掲げておりながら、幕府についたり、こちらについたり、うまく泳いできた。そんな相手に、こちらから口火を切れば、おのずから乞食のごとく、薩摩に援助を哀願するようなものではないか」

「まだ、そげこと言うちょるのか!」

「薩摩に頭をさげたら、私は死んでいった仲間に合わす顔がない」

「長州がどうした、薩摩がどうした。ようは日本人じゃろうが、桂!」

「やはり長州へ帰る」

「わしら土佐人を見てみぃ。わしらが薩長連合に身を呈しておるのは、薩摩や長州のためではないぞ」

 

土佐勤皇党の武市半平太、平井収二郎、岡田以蔵、竜馬の仲間たちの多くは、犬ころのように殺されていった。

そのことを思うと、竜馬の胸に熱いものが込み上げてくる。

「桂、おまんは、しょせん、日本人にあらず」

「坂本君、君の提唱する薩長連合がなさざれば、おそらく長州は滅ぶであろう。ほろんでもかまわん」

「桂~~!」

竜馬は刀を持ってスッと立ち上がる。

桂をぐぐっと睨みつけて宿を出る。

あとを中岡慎太郎が追いかける。

 

「竜馬、どこへいくんじゃ。ちょっと待ってモーメント!」

「慎太郎。わしは腹が立って、しょうがないわい」

「竜馬」

「どうして、どうして、わかってもらえんのんかのう。みんな自分のことばあ考えちょる。のう慎太郎。わしゃあ、悔しゅうて、悔しゅうて、たまらんキニ」

「竜馬、あきらめたらいかんぜよ」

「あきらめとりゃあせん」(ここ拍手するとこ)

 

「どうする、竜馬」

「もう一度、もう一度、今度は西郷に意見しちゃるキニ」

 

ドンドン

「なんでごわすか、こんな夜更けに」

西郷が巨体をふるわせて出てくる。

「西郷、長州が可哀そうじゃ、ないか」

竜馬は叫ぶように言った。

あとは西郷をさすように見つめたまま沈黙。

その沈黙を破ったのは西郷だった。

「坂本はんの言うとおりでごわした」

 

翌日、薩摩から同盟の口火を切ることが決まった。

慶応2年1月21日に薩長同盟は成立するんですが、

当時、日本には300の藩がありました。

 

ところが、明治維新に立ち上がったのは薩摩と長州の2藩だけ。

あとはみ~~んな傍観者。

 

竜馬は二男でしたが、歴史を変えたのは2藩(お兄はん)でした。

ありがとうございました。