『茶髪とピアス』
和音
俺の勤務先である農協へ、都内から来た彼をみて絶句した。
彼を正式採用するかどうかは、俺の判断にかかっている。
どうしたものだろう?
髪は金髪で片方は刈り上げてあり、耳にはピアスがいくつも付いていた。
腰には布を巻いている。というか、どうみてもスカートである。
課長の知人でフリーデザイナーだそうだ。
いまTPPや過疎化問題のうえに、農協を通さずネット販売している生産者も増えた。
特産物をモチーフにゆるキャラを作ることになり、その救世主に町をご案内することになった。
愛想笑いもせず、町を見渡せるところに行きたいと言った。
少し意地悪な気持ちになってきたので、車を止めヤブの中を登ると、少し拓けた所に出た。
細身のわりには、遅れもせずついてきたが、汗で髪はグシャグシャで、ブーツは泥まみれだった。
「良いところだな」
そう呟いた彼の横顔は、夕陽に染められ汗がキラキラしていた。
俺はお気に入りの居酒屋へ誘ってみようと思った。
(了)