『自助論』(S・スマイルズ)
サミュエル・スマイルズがこの自助論を上梓したのは、
1859年のことです。
本書は、
それ以来、
いまだに読み継がれている
ベストセラーにしてロングセラーの書です。
スマイルズは、
もともとはイギリスの医師でしたが、
本書の成功により、
以後、著述家として活躍します。
本書のほかにも、
『向上心』
『探究心』など数々の名著を出版しています。
本書の『自助論』は、
自分で自分を奮い立たせるような言葉にあふれています。
スマイルズ自身も、
自分への自戒のつもりで、
教訓的な言葉やエピソードを体系立ててまとめておきたかったのではないでしょうか。
ある意味、
自分のために書きとめておいた文章かもしれません。
目次を見るだけでも、
人生の啓示になります。
1章/人生は自分の手でした開けない!
1、成長への意欲と自助の精神
2、「努力はとぎれることなく引き継がれる」
3、人間の優劣を決める精いっぱいの努力
4、人生に暇な時間はない
2章/雨霜に打たれてこそ若芽は強く伸びる!
1、常識に明るく、辛抱強い人間になること
2、人生の奥義の9割は快活な精神と勤勉にある
3、逆境のなかでこそ若芽は強く伸びる
4勝負のカギとなる「持続力」
3章/人生の転機を見抜く才覚、生かす才覚
1、勤勉の中に「ひらめき」あり
2、賢者の目は頭のなかにあり
3、独歩の人間に与えられる勝機
4、幸運は手の届くところで待っている
5、信念は力なり
4章/向上意欲の前に壁はない
1、無心の自己修養
2、克己心を植え付ける
5章/自分の使命に燃えて生きる!
1、道なくば道を造る
2、自ら方向づける「意志の力」
3、心にしみる真実の言葉
4、誠実に生きる
5、旺盛な活力と不屈の意志に満ちて
6章/「実務能力」のない者に成功者なし
1、ビジネス手腕にも秀でた天才たち
2、「無為の生活」がもたらす脅威
3、ビジネスを成功させる6つの原則
4、ウェリントンを大将軍たらしめた「実務能力」
5、正直は最良の策
7章/楽をするには汗をかけ
1、金は人格なり
2、節約こそ自助の精神の最高表現
3、人生の転機に身をあやまるな
4、知恵はルビーにまさる
8章/最高の知的素養は1日の仕事から生まれる
1、自らの汗と涙で勝ち取った知識ほど強いものはない
2、鉄は熱くなるまで打て
3、「真の知識」と「にせの知識」
4、才能を最大限に生かすヒント
5、大器晩成の先人に学ぶ
9章/人生の師・人生の友・人生の書
1、人生の指標となる「ものいわぬ無数の手本」
2、よき師、よき友は人生最良の宝
3、後世への「たいまつ」となる勇気ある人生
10章/人格は一生通用する唯一の宝だ
1、人格こそ一生通用する宝だ
2、理想に現実を重ね合わせる努力
3、礼儀作法には金がかからない、しかも礼をつくすだけで何でも手に入る
4、真の人格者を計るものさし
本書のなかには、
教訓に満ちたエピソードや名言が
毎ページ出てきます。
これでもか、これでもかというくらいの名言の数々。
それをひとつひとつ紹介していると、
この本全部を書き写さなければいけなくなってしまうでしょう。
でも、
少しだけ紹介しましょう。
「人格の力は富よりも強い。
人格者があらゆる栄誉を手中に収めても、
金持ちのように他人からその名声をねたまれたりしない」
「立派な人格、
それは人生の最も気高い宝である」
「人格はそれ自体がすぐれた身分であり、
世間の信用を勝ち取れる財産だ。
社会的な地位がどうであれ、
立派な人格者はそれだけで尊敬を受ける」
「顔を高く上げようとしない若者は、
いつしか足もとばかり眺めて生きるようになるだろう。
空高く飛ぼうとしない精神は、
地べたをはいつくばる運命をたどるだろう」
そして、
こんなエピソードをひとつ紹介しましょう。
昔、アテジェ川が突然氾濫を起こし、
民家の立ち並ぶヴェローナ橋を、
中央の1角を残したまま、
一気に押し流してしまった。
取り残されたところには1軒の家があり、
その窓には救いを求める人の姿が見える。
だが、
濁流はいまにもその家を土台もろとも運び去らんばかりの勢いだ。
岸にいあわせたスポルベリーニ伯爵は、
周囲の群集に呼びかけた。
「あのかわいそうな人たちを救った者には、
100ルイを褒美としてつかわそう」
と、その時、
1人の若い農民が群衆をかきわけて前へ進み、
かたわらにある小舟に飛び乗るとみるや、
敢然と激流のなかへ漕ぎ出していった。
彼は橋げたにたどり着くと、
すばやく家族を舟に乗せ、
そのまま安全な岸のほうにとって返した。
「まことにあっぱれな若者だ。
褒美の金を受け取るがいい」と、
感心しきった様子で伯爵は彼に言葉をかけた。
ところが、
若者はこう答えたのである。
「めっそうもありません。
私が命を投げ出すような危険を冒したのは、
決して金のためではないのです。
金を出すというのなら、
この家族にあげてください。
家を流されて難儀しているのは、
この人たちなのですから」
何ともいいお話ですよね。
このような学びを得るエピソードや、
歴史上の偉人たちの逸話がいっぱい含まれています。
この本が売れているのは、
そういうところにあるようです。
(高橋フミアキ)