『脳科学からみた「祈り」』

「祈りは叶う」というと、

否定したくなる人がいるかもしれません。


「祈ったって、願いが叶うわけないだろ」

「そんなの気休めだよ」

「迷信さ」


多くの人はそう思うでしょう。


しかし、

テレビやマスコミで活躍している

有名な脳科学者が、

科学的見地から、

祈りの有効性を語っています。


それが本書です。


『脳科学からみた「祈り」』(脳科学者/中野信子)



祈りにはポジティブなものとネガティブなものがあります。


ネガティブな祈りとは、

人の不幸を祈るような、

いわば呪いに近いものです。


それが社会的によくないことだと、

誰もがわかっていますので、

脳は「ストレス物質」である

コルチゾールという物質を分泌します。


コルチゾールは体に必須のホルモンですが、

脳内で過剰に分泌されると、

記憶の中心的な役割を果たす

「海馬」が委縮することがわかっています。


「人を呪わば穴二つ」と言いますが、

人の不幸を祈ると、

自分もストレスを抱えて不幸になっていくのです。


著者はそう語っています。



一方、

ポジティブな祈りをすると、

人は幸福を感じるようになります。


ベータエンドルフィン

ドーパミン

オキシトシンなどの、


「脳内快感物質」と呼ばれる一連の物質が分泌されるのです。


脳内快感物質とは、

幸せや快感をもたらす物質のことです。


本書にはこんなエピソードが紹介されています。


夫の浮気に悩まされている女性がいました。

心のなかは毎日地獄のようです。


いつしか、

浮気相手の女性を呪い殺したい気持ちでいっぱいになってしまいました。



悩んだ彼女は、

尊敬する先輩に相談しました。


すると、

こんなアドバイスをもらったそうです。


「とにかく、みんなにとって、

一番いい方向にいくように祈ることだよ。

『みんな』というのは、

ご主人の浮気相手も含めてのこと。

相手を憎む気持ちで祈っていたら、

あなたにとってよくないわ」


彼女は、

「自分に苦しみを与えた張本人のことを、

祈るなんて、

できるわけがない」

と抵抗を感じました。


しかし、

それでも、

地獄の苦しみから逃れたい一心で、

アドバイス通りにやってみようと思ったのです。


毎日、

祈っていると、

夫の浮気相手への憎しみが少しずつ消え、

最後には、

相手が幸せになることを祈れるようになりました。


すると、

信じられない展開が待っていました。


彼女は夫にも浮気相手にも何も言っていません。

ただ祈っただけ。


なのに、

夫は浮気相手と別れ、

彼女のもとに戻ってきたのです。


すべての人の幸せを祈ると、

こういう奇蹟が起こるんですね。


また、

こんなエピソードが紹介されています。


ペンシルベニア大のアンドリュー・ニューバーグの研究に

「仏教徒が瞑想や祈りの行為によって、

深い宗教的境地に達する前後で、

どのように脳の働きが違うのか」

という実験があります。


実験に参加した仏教徒たちは、

宗教的境地のことを


「自分が孤立したものではなく、

万物と分かちがたく結ばれている直感」とか、


「時間を超越し、

無限にひらけてくるような感じ」

と表現しています。


さらに

「その直感は極めて鮮烈で、

たとえようもなく素晴らしいものだ」

と感想を述べています。


そして、

そのときの脳の状態は、


脳内快感物質が盛んに分泌されているのです。


つまり、

瞑想しているとき、

あるいは、

祈っているとき、

最高の幸福を感じているということです。



人の幸せを祈ると、

願いが叶うという研究結果もあります。



京都大学の藤井聡教授が、


「他人に配慮できる人は運がよい」という論文を発表しているのです。



「人が心の奥底で、

何に焦点を当てているか」によって、

その人の運の良し悪しが決まるという考え方です。


利己的で自分のことしか考えず、

目先の損得にしか関心がない人は、

配慮範囲が狭い人です。



逆に、

他人に配慮ができて、

遠い将来、

広い範囲の人たちの幸福が祈れる人は、

配慮範囲が広い人だと言えます。



配慮範囲の広い

利他の行為をする人は、

よい人間関係を持続的に築けるため、


自分の周囲に盤石なネットワークを作ることができます。


つまり、

周囲のみんながこぞって、

その人を助けてくれるわけです。


そのことが、

一見、


運のいい人に見えるのです。



人のために祈り、

将来のために祈る人は、


運がよくなり、

周囲の人々から応援され、


願いが叶うようになります。


優秀な

脳科学者がそのことを明らかにしてくれているのです。


凄い本に出合いました。


読んでいて、

びっくりしましたね!


(高橋フミアキ)