『考える技術・書く技術』(バーバラ・ミント)
これは後世に残る名著です。
文章の書き方を教えている私にとっても、
かなりの気づきをもたらしてくれた本ですし、
文章スクールにも文章の講習や講演会などでも、
活用しています。
本書をそのまま講義するだけでも、
素晴らしい内容になりますし、
受講者は、
文章の書き方がすっかり身につくでしょう。
「書くことの主目的は、
読み手がまだ知らないことを伝えることだ」
とミントは言います。
さらには、
「読み手が抱く疑問を見抜き、
その疑問にずばり答えていくこと」
このことが、
読み手を引きつけ続ける確実な方法だというのです。
私が文章の講義をするとき、
いつも
「反論処理をしておきましょう」
と言っていることと合致します。
そして、
人間の頭の中では、
集めた情報をピラミッドグループに並び換えられているというのです。
本書では、
そのピラミッド構造をどうやって作ればいいのかが
わかりやすく解説してあります。
1部では「書く技術」を、
2部では「考える技術」を解説し、
3部では「問題解決の技術」が明かされています。
私たちは常に問題を抱えていますが、
その問題を解決する能力が欠けているせいで、
現実は一向に改善されないまま人生を送っているのです。
夫婦仲が悪いという問題を抱えている人もいるでしょうし、
夢をつかむためにどうすればいいかがわからない
という問題を抱えている人もいるでしょう。
夢自体持てなくて悶々としているという人もいると思います。
問題解決とは、
次のうちのどれかに対して答えを出そうとするものです。
1)我々は何をなすべきか?
(解決策がわからない場合)
2)我々はそれをなすべきか?
(解決策がすでに提案されている場合)
3)我々はそれをいかにしてなすべきか?
あるいは、
あなたはそれをいかにしてなすだろうか?
(解決策がわかっており、
すでに受け入れられている場合)
いずれのケースでも、
まずやるべきことは
問題を定義することです。
文章を書くときも、
考えをまとめるときも、
問題を解決するときも、
第一にやるべきことは、
いま問題にしていることは何なのかを明確にすることなのです。
これを先にやらずして、
解決策をいくら模索しても、
いい解決策は見つかりません。
的のないところで弓矢を射ようとしているのと同じです。
そんな矢は絶対に当たりません。
問題を分析するとき、
一般的には以下のようなプロセスで進めます。
1)データを収集する
2)調査結果を述べる
3)結論を導く
4)行動を提案する
これを文章にするときは、
(1)はじめに(問題提起)
(2)背景
(3)調査結果
(4)結論
(5)提案
ミントは、
・マッキンゼー
・ブーズ・アレン
・AT&T
・ペプシコ
といった一流企業に対して、
ビジネスライティングやレポートライティングの指導をしてきた人です。
いわばそのときの教科書となったものが本書です。
本書の考え方は、
米国一流経営コンサルタント会社の基礎コンセプトとして定着しています。
もちろん、
コンサルタント会社だけでなく、
一般企業でも
プレゼンテーションや社内文書の基本的な考え方として、
世界中で採用されている考え方です。
この技術は、
クライアントに提案するときの
企画書にも使えますし、
経済レポートを書くときにも活用できます。
その他、
一般的な作文やコラムなど、
いろんな文章に応用できるものです。
文章を書く者にとっては、
一度は読んでおきたい本ですね。
(高橋フミアキ)