統計学が最強の学問である


『統計学が最強の学問である』(西内啓)


出版されて35万部を一気に売り

「ビジネス書大賞2014」で大賞に輝いた本です。


統計データがあるかないかが、

ビジネスにおいては勝敗を分ける時代になっているということを、

ヒシヒシと感じさせてくれます。


具体的にどのようなデータを集めればいいのか、

どう集めればいいのかまで、

調査現場の事例を豊富に紹介し解説してくれます。



たとえば、

コンチネンタル航空では、

飛行機が遅延したりダブルブッキングでキャンセルさせられたときの、

アフターケアをどうするか、

という問題に対して統計学のランダム化比較実験という手法を使いました。


まずトラブルが起きたお客を

ランダムに3グループに分けます。


1)ただ正式な謝罪にレターを送る


2)謝罪レターに加えプレミアムクラブへのお試し無料入会期間を与える


3)特に何もしない


この調査をした結果、

3の特に何もしないグループのお客は、

何か月かたった後もまだ怒っていました。


1と2のグループは、

翌年コンチネンタル航空へ費やすお金が8%も増えたといいます。


さらに、

プレミアムクラブ無料入会期間を与えてもらった顧客の3割ほどは、

無料期間が終わった後も、

自腹で会費を払ったのです。


つまり

「嫌な思いもしたけど、

なかなかいいやつらじゃないか」

ということです。


この実験で、

コンチネンタル航空は、

1億5000万ドル以上の売り上げ増加が得られました。



このエピソードだけ聞くと、

別にお金と時間をかけて、

調査し統計する必要はないんじゃないか?


と思うかもしれません。


アイデアがあるのなら、

どんどん実行してみればいいんだし、

やって効果がなければ辞めればいい。


しかし、

大企業になると、

謝罪文を作成して送付するだけでも

大変なコストがかかるわけです。



ですから、

アイデアを実行する前に

統計データを集める必要があるのです。


なぜ、

クレーム客が航空会社のファンになり、

8%も増加売り上げに貢献したのでしょうか?


その理由はわかりません。


それは消費者心理ですから、

心理学の分野の担当になります。


ただ、

統計学は理由はわからなくても、

現実に売り上げがアップするのだということが、

明確に証明されるわけです。


これはパワフルです。



理由が明確に証明されなければ

何も実行しない人間よりも、

とにかくやってみて、

実際に数字が上がれば、

どんどんやるし、

下がれば辞める、


こんなビジネスのやり方が

不確実性の高い現代にピッタリなのです。


現代は、

正解のない意思決定を余儀なくされることが

あまりにも多い世の中です。


こんな時代は、

統計学で乗り切るしかないのかもしれません。


とにかく、

統計学には説得力があります。


大企業の意思決定に効果があるわけです。


大企業のお偉方の

重い腰を動かすのは統計学なんです。


たとえば、

本書にナイチンゲールのエピソードが紹介されています。


ナイチンゲールはクリミア戦争で負傷した兵士の

看護にあたった女性です。


ナイチンゲールは劣悪な環境におかれている負傷兵たちの、

医療環境を改善して欲しいと、

イギリス政府に働きかけますが、

政府は一向に動きません。


そこでナイチンゲールは、

戦争に従軍した兵士の死因を集計します。


その結果、

戦闘で負った傷自体で亡くなる兵士よりも、

負傷後に何らかの菌に感染したせいで死亡する兵士のほうが、

圧倒的に多いことを明らかにしました。


ナイチンゲールのあげた最も大きな業績は、

この統計データを明らかにしたことだと言われています。


ナイチンゲールは、

このデータをもとに

「戦争で兵士ひいては国民の命を失いたくなければ、

清潔な病院を戦場に整備しろ」

と軍のお偉いさんや政治家に迫ったということです。


いかがですか?



統計学が最強の学問だということですね。



(高橋フミアキ)