節電
菊本さつき
6月13日、月曜日。薄ぐもりの朝。
人のいない暗い部屋。
テレビの中で節電を呼びかけるアナウンサーの声。
「今、節電できる家電製品が売れています。
魔法瓶や炊飯器の保温機能は、
意外と電気を使うので、節電機能があるものに買い換えるといいですね」
心の中のつぶやき。
まだ使えるなら処分したくない。
視線の先に家の旧型炊飯器。
「あれ?電気がついてない」
炊きたてご飯になっているはずの米と水。
流れる冷汗。
コンセントとスイッチをいじる私。
白くなる意識。
過ぎていく時間。
知らせた家族の驚いた顔。
気持ちを切り替えて出勤の支度をする私。
炊飯器を忘れる就業時間。
仕事を終えて行く家電量販店。
見上げると、紫色の雲が浮かぶ空。
見比べる値段と節電機能。
説明上手な店員さん。
頭の中で膨らむイメージ。
つやつや、ふっくら、もちもちの甘いご飯。
5キロを超える荷物と遠い遠い帰り道。
といだお米と家族の期待。
湯気の立つ炊きたての白いご飯、遅い夕食。
満足した、みなの笑顔。
残りご飯のために押す、節電保温スイッチ。
長かった1日。
心の中のガッツポーズ。私の達成感。
(了)