窓から逃げた100歳老人


『窓から逃げた100歳老人』(ヨナス・ヨナソン)


この小説は、

チョーーおもしろい!!


こんなおもしろい小説、

久しぶりに読みました。


ホラーだとか、

サスペンスだとか、

サイコだとか、


残虐な殺し方だったり、


巨人に

大量の首が食いちぎられたりと、


昨今は、

目を覆いたくなるような物語が多いですが、

多くの読者は、

もううんざりしているのではないでしょうか?


強い刺激がないとモノが売れない時代ですから、


小説だけでなく、

マンガや映画やドラマなど、

物語も刺激が求められているのだと思います。



しかし、

この小説は違います。


ユーモア小説です。


ユーモアの語源は「ヒューマン」


人間が人間らしく生きるには、

ユーモアが必要なんです。


ホラーやサイコや殺人事件など必要ないんです。



この小説はスウェーデンの作家が書いたものです。

これが処女作だといいますから、

物凄い才能です。


日本の10分の1も人口がいないスウェーデンで、

100万部も売れたベストセラーですから、

スウェーデンでの人気ぶりは物凄いものがあります。


現在はスウェーデンのゴットランドという小さな島で、

息子と猫と鳥ととも暮らしているそうです。


そういう暮らし、

あこがれますよね。



ところで、


物語は、


100歳の誕生日パーティの当日、

アラン・カールソンが老人ホームの窓から逃走するシーンではじまります。


ひょんなことから、

ギャング団の大金を奪ってしまい、

追っ手たちからの逃走劇となるのです。


フラッシュバックする、

アランの生まれたときから、

現在までのストーリーがちょうど20世紀の歴史的事件に絡んできます。



アランは爆弾技師で、

原子爆弾の鍵となる難問をいとも簡単に解いてしまうのです。


それで、

アメリカのトルーマン大統領と飲み仲間になります。


かと思えば、

スターリンに原爆を作れと迫られて、

断ったらシベリアに抑留され、


ウラジオストクで町全体を爆破して脱走したり、


収容所で、

アインシュタインの弟と友人になったり、


毛沢東の奥さんの命を助けたり、


毛沢東からお礼にもらった大金でバリ島で暮らすことになったりします。


まあ、

奇想天外なハチャメチャストーリーです。


でも、

単なる逃走劇ではなく、

スケールがでかいんですよ。



いうなればデタラメ小説ですよね。


でも、

そのデタラメさ加減がおもしろいんです。


デタラメについて著者がインタビューでこう答えています。


「祖父は杖に寄りかかって、

噛みタバコを噛み噛み、

孫たちによくお話を聞かせた。


『でも、おじいちゃん、それホント?』


と問うと、

祖父はこう答えた。



『ホントの話しかしない人の話を聞いてもつまらんぞ』」



たしかに、そうなんですよね。


読者というのは、

ドキドキワクワクしたいわけですから、


ホントかどうかなんてどうでもいいんですよね。



デタラメ小説、サイコ~~!!


(文・高橋フミアキ)