人生の転機って、
どんなふうにやってくるものでしょうか?
多くの人は、
凄まじい体験をして、
はじめて、
生き方を変えるものだと思い込んでいるようです。
50億円の借金をして、
首をくくろうとしたとき、
おでんの赤提灯を見つけて、
最後に一杯だけ、
おでんを食べて死のうと思った。
そこで出会った人に、
励まされて、
もう少し生きてみようと思い、
頑張って成功したんだ、
という苦労話を聞いたことがあると思います。
しかし、
実際は、
そんな人間ばかりではないと思うのです。
そもそも、
自殺しようと思うほどの
どん底を経験しなきゃ人生の転機が迎えられないなんて、
おかなしな話ではないですか。
何気ない日常のなかで、
人生の転機を見つけることだってあるんです。
作家の村上春樹さんは、
まさにその人です。
春樹さんは、
京都に生まれますが、
まもなく兵庫県の西宮市に引っ越します。
早稲田大学に進学するまでは、
神戸で暮らしていました。
春樹さんの両親は
ともに国語の教師だったせいで、
本好きの読書家になっていきます。
10代の頃は、
両親が買ってきた『世界文学全集』を、
1冊ずつ読んでいったといいますから、
親子の関係は良好だったようです。
作家にありがちな、
過激なトラウマがあるわけではなく、
ごく普通の家庭で、
ごく普通に大人になっていった人です。
大学では演劇学科に入っています。
別に役者や演出家や脚本家になりたいという
情熱があったわけではなかったようです。
文学が好きでたくさん本を読んだ経験から、
なんとなく演劇を勉強してみようと思ったそうです。
学生時代は、
学校へはほとんど行かず、
ジャズ喫茶に入り浸る毎日を送ります。
奥様とは、
学生結婚です。
そして、
大学在学中に国分寺南口にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を開店します。
夜はバーになるという喫茶店です。
1977年に「ピーター・キャット」を千駄ヶ谷に移します。
そして、
春樹さんの転機がそこで起こるのです。
1977年神宮球場で、
春樹さんの人生の転機が起こりました。
ヤクルト対巨人戦の観戦中です。
1回の裏、
ヤクルトの先頭打者デイブ・ヒルトンが、
2塁打を打ったときです。
デイブが1塁を蹴って、
2塁に到着したとき、
「小説を書いてみよう」
と思い立ちました。
この瞬間が、
春樹さんの人生の転機です。
この日から、
春樹さんは、
ジャズバーの営業が終わってから、
深夜に小説をせっせと書きはじめます。
そして、
1979年に『風の歌を訊け』が、
群像新人文学賞を受賞しました。
1987年には『ノルウェイの森』が上下巻430万部を売るベストセラーとなり、
村上春樹ブームがやってきます。
2005年ニューヨークタイムズ年間ベストブック大賞
2006年にフランツ・カフカ賞
同年フランク・オコナー国際短編賞
2009年にエルサレム賞と、
海外で高い評価を得ています。
あなたの人生の転機は、
いつ来るのですか?
何気ない日常で、
決意し、覚悟を決めたときが、
人生の転機です!
(高橋フミアキ)
後記
村上春樹さんの小説は、
次の4つはぜひとも読んでおきたいですよね。
『ノルウェイの森』
『海辺のカフカ』
『ねじまき鳥クロニクル』
『1Q84』