福山城をのんびり散策して文学を楽しむ!
福山は、
僕の田舎です!
僕は18歳まで、ここ福山で育ちました。
福山といっても街から遠く北上した小さな谷間の村です。
「福山市加茂町下加茂941 小明団地104」
というのが、
僕が過ごした村の住所です。
井伏鱒二は、
この加茂町の粟根という、さらに北にいった場所で生まれました。
作家の日野啓三さんの出身地、
福山市駅家町は、加茂の隣町です。
とにかく、
福山はいいところです。
僕の知り合いに、横浜から家出してきて、電車の窓から城が見えたので、
この地に降り立ち、そのまま福山に住みついたという人がいます。
福山で結婚し、子どももできて、幸せに暮らしています。
とにかく、福山はいいとこなんよ。
東京に長く住んでいると、
故郷への思いは強くなるばかりです。
井伏も故郷を懐かしみ、
小説の舞台にしたり、詩を書いたりしています。
写真に小さく見えるのが福山城です。
福山駅に隣接した城は、
全国でも珍しいそうです。
たいてい、城といえば、駅から遠く離れた山の上にあるものです。
この城は、
幕末に活躍した若き阿部正弘が城主だったんですよ。
大老にまでなった阿部は、心労がたたって、39歳で死んでいます。
八方美人と揶揄され、現代人にはあまり人気がありませんが、
阿部の采配ぶりは見事なものです。
阿部は、早くから、外国船を追い払うのは無理だと判断していたようで、
攘夷派の首領である水戸の徳川斉昭にその趣旨の手紙を送っています。
時代の流れや状況を幕臣のなかで、一番冷静に把握していた人物といえるでしょう。
そのうえで、
開国派と攘夷派の間をうまく周旋したわけです。
阿部がもう少し長生きしていて、もう少し独裁的だったら、
幕府は薩長に負けなかったかもしれませんねえ。
ま、歴史に「もし」はありませんけどね。
そんなことを考えながら、
福山駅から歩いてお城を散策し、そのままのんびり歩きながら、
「ふくやま文学館」までお散歩するのも、いいもんですぞ。
文豪・井伏鱒二の魂に触れる!
1回は特別展があって、毎回福山や近隣も町にゆかりのある作家の展示物があるんですが、2階には井伏の常設展があります。
いつでも、井伏の魂に触れることができる文学館です。
井伏といえば『山椒魚』ですよね。
国語の教科書にも載っていたので、知っている人は多いと思います。
独特の「戯画手法」を駆使した文体が井伏の特徴なんですよね。
絵の心得があったので、
まるで絵画を見るような感覚で読めるんですよ。
原爆をテーマにした小説『黒い雨』は、悲惨な広島の状況を、
ビビットに迫真の筆致で描いてありました。
常設展で目を引くのは、小説『山椒魚』の世界を再現したオブジェですね。
岩穴に山椒魚が見え隠れしているのが、ちょっとコミカルでした。
井伏の遺品に宿る文豪の魂!
モノには魂が宿ると言われています。
僕はそのことを信じています。
羽織袴や墨、筆、茶碗など、井伏が愛用していた遺品が展示してありました。
そこには確かに、井伏の魂が宿っているような感じがします。
井伏の肉筆で書いた原稿用紙には、文豪の気迫のようなものは迫ってきます。
「だった」とか「である」など、語尾に修正が多く入っているところに、
ちょっとした感動を覚えましたねえ。
文豪の魂が僕のなかにパワーを吹き込んでくれるように、
じっと見つめながら念じていました。
幸い、日曜日なのに、来館者は僕ひとりです。
文学というのは、やはり、人気がないんですねえ。
でも、そのかげで、2時間くらい、文豪の魂を感じながら、
まったりと椅子に座っていることができました。
文豪の書斎に自分の姿を思い浮かべてみる
明治、大正、昭和と生き抜いた井伏は、書いて書いて書きまくった作家です。
作品点数は物凄い数です。
数えたことがないので、具体的な数字がわかりません。
コツコツと書きつづったんですね。
井伏を語るうえで忘れてはならない場所は3つあります。
「広島県・福山」、「山梨県甲府」、「東京都・荻窪」です。
どこにいても、井伏は酒を飲み、魚釣りをし、絵を描きながら
小説の創作活動をしたみたいです。
そんな井伏を慕って、若手の作家たちが、よく井伏の家へ来たそうです。
お酒が大好きだった文豪・井伏
晩年はウィスキーの水割りが好きだったみたいですね。
奥様の談話が動画で紹介されていました。
「まあ、よくお酒を飲み人でしたよ。でも、ひとりでは絶対に飲みませんの。
家にいて、ひとりで飲むから酒の用意をしろなんて一度も言われたことがありません。
でも、誰かがいらしたら、すぐにお酒です」
若き開高健も、井伏を慕って、よく荻窪の家を訪問したそうですね。
開高は世界の海で釣りをしていますし、井伏も釣りが好きですから、
飲みながら釣りの話を夢中になってしたそうですね。
酒が文学を生むんですなあ。
(高橋フミアキ)
■アクセス/ふくやま文学館
広島県福山市丸之内1‐9‐9
JR福山駅北口から徒歩8分
山陽自動車道福山東インターより西へ車で20分
開館時間/午前9時~午後5時
休館日/毎週月曜日