学問のすすめ

『学問のすすめ』(福沢諭吉)


1万円札になっている福沢諭吉。

彼の書いた本『学問のすすめ』は、

明治の混乱期の大ベストセラーです。


日本は開国へと踏み切り、

西洋の文化が押し寄せてきて、

国内は激動の時代となりました。


変化の激しい時代に、

この本は多くの人々の心をとらえたのです。


現代はまさに激動の時代。


今一度、

この本を読み返してみようと思いました。


岬龍一郎さんの現代語新訳によって、

読みやすいものとなっています。


まず目を引く言葉がこれです。

この本の核心といってもいいでしょう。


「広くこの社会を見渡すと、

賢い人がいたり、

愚かな人がいたり、


あるいは貧しき人、富める人、

身分の高い人、低い人もいて、


人の生き方に雲泥の差があるのはなぜだろう。


その理由ははっきりしている。


『実語教』という本に


『人、学ばざれば智なし、


智なき者は愚人なり』


とあるように、

賢い人と愚かな人との差は、


学問をしたかしないか、

によって決まるのである」



「人間にはもともと貴賤や貧富の差などない。

その差が生じたのは、

学問を修め、

物事をよく知った人は出世し、

金持ちとなり、

それに反して学問に励まなかった人は、

出世もできず、

貧乏となって身分の低い人となるからである」



また、

福沢諭吉は、

平和が続いた日本人は過保護に育てられたのだと言っています。



「今日にいたるまで国としての独立を失わなかったのは、

国民が鎖国の風習に慣れ、

たまたま外国との戦争の危機がなかったからである。


外国との交流がなければ平和も戦乱も国内だけの問題である。

すべては国内問題だっただけに、

外国との交戦など考えることもなかった。

だから独立は保たれたのである。


たとえていえば、

それは家庭内で過保護に育てられ、

世間の荒波を知らない子供の

ひ弱さと同じものというべきである」



そして、

最後の段で、

友だちを大切にするように呼びかけています。


「友人を得たいのならば、

まず人を好きになること。


人望とか栄誉などの話は別にして、

友人がたくさんいることは

友人が1人もいないより何かと都合がよいではないか。


人生は百倍も楽しくなる。


(中略)


交際を広くする要諦は、

心を開いて活発にし、

多芸・多能を心がけ、


いろいろな人と接することだ。


学問の友、

商人の友、

あるいは書画の友、

将棋の友など、


博打や女遊びの悪事以外なら、

どのような人とでも積極的に接すると、


友人を広げる機会となる」


現代にも役立つ、


日々を生き抜く指針が、


随所にあります。



(高橋フミアキ)