価値観をがらりと変えてくれる本と出合うことがあります。
そのとき、
私はいい本に出合ったなと思い、
購入金額よりも数倍の価値を受け取った気持ちになるものです。
それは至福の時間ともいえます。
この本も、
私の価値観をがらりと変えてくれました。
『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)です。
本書は、
青年と鉄人の会話形式をとっています。
物語を感じさせながら、
難解な哲学をわかりやすく解説してくれています。
理論の根幹をなすものは、
アドラー心理学です。
最初の章で感情の支配について語られています。
ここで目のウロコが落ちるほどの衝撃を受けるのです。
現代では常識とされている
トラウマの議論を、
真っ向から否定しているからです。
「トラウマの議論に代表されるフロイト的な原因論とは、
かたちを変えた決定論であるい、
ニヒリズムの入口なのです」
アドラー心理学は、
このニヒリズムの対極にある思想だといいます。
要は、
幼少期に父親から虐待を受けたことがトラウマとなり、
それが原因で大人になっても、
人間関係がうまくいかない
というのは間違っていると本書では言うのです。
もしも、
トラウマが原因ならば、
父親から虐待を受けた人間は
すべて人間関係で問題を抱えていなければいけません。
実際は、
そんなことはなく、
うまくやっていけてる人もたくさんいます。
アドラー心理学では、
トラウマさえもない
と言っています。
本人が、
そういう行動を選択しているだけです。
選択によって、
人間関係がダメになったのなら、
違う選択をすればいいという考え方です。
父親に折檻を受けた経験から、
「世の中の年上の男性は、
全員暴力的だ」
という考え方を採用するのか、
「そんなの気にしない。
自分は自分の生き方をする」
という考え方を選択するのか、
その選択なわけです。
私にとって、
これはちょっとした衝撃でした。
いままで常識と思っていた
フロイトのトラウマ原因説が、
くずれ去ったわけですから。
この本に出合えたことに、
感謝します。
(高橋フミアキ)