『仮説思考』(内田和成)
著者はボストン・コンサルティング・グループで、
日本代表を務めていた人です。
本書のコンセプトには、
私自身も驚きました。
いままで信じていたものが根底からくつがえされ、
クラクラっとめまいさえ感じるほどでした。
現代のビジネスにおいてはアイデアがもっとも重要です。
早く走ることよりも、
強くあることよりも、
智恵と勇気のほうが重要な時代だと言えます。
上質なアイデアを生み出すためには、
大量の情報が必要だというのは、
当然のことです。
常識と言ってもいいでしょう。
情報が足りないといいアイデアも浮かんできませんし、
いい意思決定もできません。
情報が多ければ多いほどよい意思決定ができるということです。
しかし、
本書は、
その常識を真っ向から否定します。
できるだけ多くの情報を集めて、
それらを分析して解決策を見つけるというのが、
従来のやり方です。
しかし、
徹底的に調べてから答えをだすというやり方には無理があります。
情報を集めているうちにどんどん時間は経過し、
時代は変わっていくのです。
情報収集には終わりがありませんので、
結局は時間切れになり、
無理矢理、
結論を出してしまいます。
実は、
仕事のできる人は、
答えを出すのが、
普通の人よりも100倍速いものです。
まだ十分な情報が集まっていない段階や、
分析がちっとも進んでいない段階で、
自分なりの仮の答えを持って、
すぐに行動しているのです。
この仮の答えのことを仮説と呼びます。
この仮説を持つのが、
早ければ早いほど、
仕事はスムーズにいきますし、
成功する確率は高くなるのです。
ちなみに、
コンサルタントがどんなとき仮説を思いつくのか
というアンケートをとった結果があります。
1位は、ディスカッションのときでした。
つまり、
誰かと話しているときに仮説を思いつくというものです。
成功する人たちは、
自分にインスピレーションを与えてくれる人を、
重宝します。
2位は、インタビュー中でした。
顧客と話しているときは、
課題を見つけることに専念していますが、
課題が見つかると、
その場で答えが見えてくることもあるようです。
3位は突然ひらめく、
4位はじっくり考えているとき、
となっています。
次に、
仮説思考を鍛えるためのトレーニングが本書に紹介されています。
●トレーニング1/So What? を常に考える。
「だから何?」
たとえば、
AKB48が売れているという現象があります。
そこで、こう考えてみるのです。
「AKB48が売れることでどんな分野にどんな影響があるだろうか?」
●トレーニング2/なぜを繰り返す
なぜを5段階くらい繰り返すことです。
〈1段階〉
「なぜプロ野球は流行らないのか?」
⇒プロ野球がつまらないから
〈2段階〉
「なぜ、プロ野球はつまらないのか?」
⇒スターがいないから
〈3段階〉
「なぜスターがいないのか?」
⇒若い有望な選手がプロ野球に入ってこないから」
〈4段階〉
「なぜ若い有望な選手がプロ野球に入ってこないのか?」
⇒サッカーなど魅力的なスポーツに若者が向かっているから
〈5段階〉
「なぜサッカーが若者を惹きつけるのか?」
⇒Jリーグが魅力的だから
⇒中田英寿や中村俊輔らがヨーロッパで活躍しているから
⇒ワールドカップがあるから
⇒世界中のチームに移籍できる可能性が高いから
⇒地元のクラブチームが若いうちから選手を育成しているから
このなかでプロ野球でも真似できそうなものをピックアップすれば、
プロ野球の活性化のために解決策が見つかるわけです。
●トレーニング3/日常生活のなかで仮説を立てる訓練をする
日常起きていることのなかで、
それが将来どうなるのか、
あるいはその理由などの仮説を立ててみるトレーニングです。
たとえば、
テレビを見て韓流ドラマが流行っている理由の仮説を考えてみましょう。
【韓国側の理由を考えてみる】
〈仮説1〉韓国俳優が日本女性の心をつかんだ
〈仮説2〉純愛というテーマが日本人女性にフィットした
〈仮説3〉韓国のテレビドラマの作り方が日本とは違う
〈仮説4〉韓国そのものの魅力に日本人が気づきはじめた
【日本側の理由を考えてみる】
〈仮説1〉日本のテレビドラマがワンパターンで飽きられはじめている
〈仮説2〉日本に中高年女性向けの良質のテレビドラマがなかった
〈仮説3〉日本のような下り坂の国のドラマよりも、韓国や中国のような勢いのある国のドラマが受ける
こうした仮説を立てたら、
検証することも忘れないこと、
この方法は思考力が高まり、
文章を書くときにも役立ちます。
仮説思考は、
さっそく私の文章スクールに取り入れてみようと思いました。
(高橋フミアキ)