この本を読みんさい/モンスター


『モンスター』

(百田尚樹)

 
整形手術で人生は変わるのでしょうか?
醜い容姿から「バケモノ」と呼ばれた
女が整形手術により、美を手に入れ、

かつて自分を蔑んだ人間たちへの復讐と
初恋の相手へ思いを遂げようとする物語です。

田舎町で、オシャレなレストランを経営する主人公の鈴原美帆はかつて、

醜い容姿で周囲からは

バケモノ扱いされ、悲惨な日々を送っていました。

思い悩んだ末、自分に振り向いてもらいたくて、

好きだった男の子にメチルアルコールを飲ませ、

目を見えなくしようとしました。

盲人にとっては、美人も不美人もないという理由で。
その事件がきっかけで、町の人からも「モンスター」と呼び嫌われ、

親からは勘当され、町を追い出されます。

東京へ出てきたものの、そこで待っていたものは、
それまでと同様、短大に進学しても就職しても容姿のことで差別され続けました。
やがて整形手術に目覚め、巨額な費用をかけ、
美人に変身をとげます。まったく別人になり町へ戻ってきて、
かつての初恋の相手、高木 英介を待っていたのです。

「外見よりも中身が大事」だと言うけれど、
人を判断する材料として、多くの人は、外見の印象で判断しています。
外見が大事でなければ人は、メイクをしたり、髪型を変えたり、

着飾ったりすることはないはずだからです。
外見が美しいと、それだけで違うということは分かっているからです。
美しい人とそうでない人では生きていく中で、明らかに損得があります。
美しい人の方がチヤホヤされたり、

特別扱いされていい思いをすることが多いのは事実です。

美帆は醜い姿からモンスター扱いされていましたが、
美しくなっても、欲を追い求めている姿は

モンスターそのものとは言えないでしょうか。
モンスターの正体は異常な執着心ではないかと思えてなりません。
   
人間は実に欲深い生き物です。満たされても、また欲が出てきます。
欲があり続ける限り、

私達も何らかの「モンスター」なのかもしれません。


(文・浅加怜香)