『ブラック企業2/虐待管理の真相』今野晴貴
ブラック企業がなくならない根本の原因は何なのか?
それを探るためには、
ブラック企業の現状を知る必要があると思い、
本書を手に取りました。
ブラック企業が社員を食いつぶしていく多くのパターンは、
次のようなものです。
1)大量に採用して、
2)選別し、
3)使い潰す!
新入社員を大量に採用するために、
虚偽の募集広告が横行しています。
月収の誇張、嘘の待遇、
正社員になれるという餌などです。
選別するときには、
地獄のような研修と、
現場でのパワハラです。
イジメや虐待までも起きています。
そうやって9割以上の新入社員が辞めていきます。
ブラック企業の特徴としては、
離職率が異常に高いことです。
使い潰すときは、
まず残業を支払いません。
そして、
極端な長時間労働。
幹部や経営者にしてしまって使い潰すというパターンもあります。
さらに辞めさせないで脅すというブラック企業もあるのです。
かくて過労死、自殺、うつ病患者が、
大量生産されます。
とある不動産会社の事例。
研修では1週間、さまざまなテストが行われます。
競争をあおられ続け、
順位がつけられます。
Aさんは軒並み最下位で叱られ続けるのです。
満点が取れないような意地悪なテストを作っておいて、
「これくらいのテストでなぜ満点が取れないんだ。
勉強してないんだな」
と怒鳴られまくります。
泣き出す同期もいっぱいいます。
ある同期は
「もう1度やらせてください!
殴ってください」
と上司に懇願していたというのです。
こんな研修にどんな意味があるのでしょうか?
日本の教育は競争を教えないで、
生ぬるい人材を世に送り出しています。
それを入社後の研修で叩き直す
ということでしょうか。
2006年12月、
東京・聖蹟桜ヶ丘の喫茶店「ココナッツ」で、
店舗責任者だった25歳の女性が、
自宅マンションから飛び降り自殺を図ったという事件がありました。
会社は「東和フードサービス」です。
ここでは
わずか2か月の研修で、
いきなり店舗責任者に抜擢され、
重責を任されるというパターンがありました。
25歳の少女が店長と同じ仕事をさせられるわけです。
そして、
この業界は慢性的な人手不足。
人手不足を上司に相談すると、
「シフトが少ないとか多いとかの報告は、
恥ずかしいからしなくていいよ」
「人が少ないのは、
責任者だったら何とかするのが仕事だよ」
人手が少ないと残ったスタッフにしわ寄せがいき、
そのスタッフも仕事がきつくなると、
どんどん辞めていきます。
店舗責任者は休みも取れない状態が続き、
精神的にも壊れていくのです。
彼女の自宅にはこんな遺書が残っていました。
「みんなこと大好きでした。
絶対にHAPPYな職場にしたいと思ってました。
不幸にしてごめんなさい。
きっと、私がいなくなったら、
もっとHAPPYに働けると思う。
本当にごめん。
シフトも協力してね。
みんな大好きでした!
もう一度チャンスがあったら、
メイトとして、
もう一度、働きたいです。
店も好きです。
みんなもすごく協力してくれました。
お母さん好きです。
お母さんみたいになりたい。
お母さん。お母さん。
私、みんなを不幸にしました」
涙がでる文面ですね。
ブラック企業に若者が入社してしまうのには次の3つのパターンがあります。
1)わかっていたけど、他に内定が取れなかった。
2)わからなくて入ってしまった。
3)わかっていたけど、みずから入った。
3のグループに属するのは、
多くがエリート大学の意識の高い学生たちです。
上昇志向の高い学生ほど、
ブラック企業にからめとられているのです。
そして、このケースが一番多いのだと言います。
こうした事例を読んでいると、
ブラック企業は、
こんなことして儲かってるんだろうかという疑問が浮かんできました。
たとえば、
たかの友梨ビューティークリニックの社長、
高野友梨氏が膨大な財産を貯め込んでいることが報道されたことがあります。
社員には残業代を支払わず、
休憩も与えないで心身に支障を負わしておきながら、
「ハワイに3件目の別荘を10億円で購入しました」
「宝石も不動産も、
すべてキャッシュで買ってます」
と公言しているのです。
ユニクロの柳井氏の収入は、
2011年に報道された情報によると、
52億4300万円です。
その金をもう少し社員たちに還元したら、
ブラックがグレイくらいにはなるんじゃないでしょうか?
しかし、こうした経営者らが、
社員から搾取して私腹を肥やしているという
単純な構図ではないような気もします。
経営者の資産は会社の資産とリンクしますから、
経営者の財産は、
内部留保と考えることもできます。
先行き不透明な時代ですから、
内部留保をたっぷりと持っていないと不安だということも一理あります。
ブラック企業がなくならない根本の原因は何なのか?
本書では、
「人口減少による国内市場の縮小」という問題は取り上げていませんでした。
企業がブラック化している原因の一番は、
売上が頭打ちになっているからだと思うのです。
うつ病患者たちは生活保護ですし、
欲のない若者も増えていますから、
人口減少を待たないまでも、
市場は縮小しています。
そこで生き残るためには、
「社員を酷使して人件費をきりつめる」
という単純な方法を取る会社が出て来るのは自然な流れでしょう。
世界へ飛び出して、
売れる場所を探すか?
新しい商品やサービスを考え出して、
国内で売れるものを作るか?
それとも、
座して淘汰される側になるか?
難しい選択ですね。
(高橋フミアキ)
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