この本を読みんさい/バビロンの大富豪「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのか


『バビロンの大富豪「繁栄と富と幸福」はいかにして築かれるのか』

(ジョージ・S・クレイソン(著)大島 豊(翻訳))

 

今は無き古代都市バビロンは、

ユーフラテス川のほとりの平坦で乾燥した谷に存在した。

豊富な天然資源にも恵まれず、森も鉱山も、建築用の石材すらなかった。

しかし現在世界中で認められ活用されている「富の原則」が生まれ、育成された「揺籃(ようらん)の地」であった。
 本書ではいかにして富を築いたのかを

物語形式に書かれており、

一話から七話の終わりには格言や教えが載っている。

 【プロローグ】こんなに働いているのに、どうしてお金が貯まらないのだろう
 ――戦車職人バンシアの素朴な疑問
 戦車職人バンシアは、なぜ働いても働いても自分の財布が空であるのか疑問が浮かんだ。そんな時、親友の楽士のコッビが尋ねてきた。

バンシアは自分の疑問をコッビに伝える。

二人は話し合いの末、バビロンでもっとも裕福な男、

アルカドの知恵を学びに行くことを決断する。


 【第一話】財産を築くには不滅の「原則」があった
 ――富豪の金貸しアルガミッシュの忘れ得ぬ言葉
 バビロンの大富豪アルカドのもとに、若い頃の友人たちが尋ねて来て、なぜ金持ちになったのかを訊きにきた。

アルカドは自分が粘土板に文字を刻みつける書記の仕事をしていた若い頃の話をした。

金貸しのアルガミッシュと出会い、富を手に入れるまでの話を…。
’稼いだものは、すべてその一部を自分のものとして取っておく’


 【第二話】富をもたらす黄金の「七つの知恵」とは
 ――大富豪アルカドの価値ある講義
 労働者たちの失業、客のいない商店、作ったものを売ることができない農民、王サルゴンは自活できない民を目の当たりにした。
 王は大富豪アルカドを呼び人々に知恵を教えてくれるよう頼む。

そしてアルカドは七つの知恵を人々に教える。
黄金の「七つの知恵」
第一の知恵ー財布を太らせることから始めよう
第二の知恵ー自分の欲求と必要経費と混同するべからず
第三の知恵ー貯めた資金は寝かさずに増やすべし
第四の知恵ー損失という災難から貴重な財産を死守すべし
第五の知恵ー自分の住まいを持つことは、有益な投資と心得よ
第六の知恵ー将来の保障を確実にすべく、

今から資金準備に取りかかるべし
第七の知恵ー明確な目的に向かって、自己の能力と技量を高め、

よく学び、自尊心を持って行動すべし

 

 【第三話】「幸運の女神」が微笑む人間とは
 ――大富豪アルカドと受講者たちとの白熱の議論
 バビロンには学ぶための立派な施設があった。

その中で大富豪アルカドが司会進行を務める。
 服飾職人の発言により幸運を誘い込む方法について議論がなされる。
’「幸運の女神」は行動する人間にしか微笑まない’


 【第四話】金貨の袋か、「知恵の言葉」が刻まれた粘土板か
 ――大富豪アルカドの息子ノマシアの過酷な試練
 老カラバブは、自分に仕えてくれた二十七人の若者たちに

アルカドの息子ノマシアから聞いた五つの黄金法則の話をした。


「五つの黄金法則」
一、将来の資産と家族の財産を築くため、最低でも収入の十分の一を貯めるならば、黄金は自ら進んで、しかもだんだんとその量を増やしながらやってくるだろう。
二、貯まった黄金がさらなる利益を生むような働き口を見つけてやり、

家畜の群のごとく増やせる賢明な主人となるならば、黄金は勤勉に働いてくれるだろう。
三、黄金の扱いに長けた人々の忠告のもとに黄金を投資するような貴重な主人であれば、黄金はその保護のもとから逃げようとはしないだろう。
四、自分のよく知らない商売や目的、あるいは黄金を守ることに長けた人々が認めないような商売や目的に使われる黄金は、

その人間から逃げてゆくことだろう。
五、あり得ないような莫大な利益を生ませようとしたり、詐欺師の誘惑的な誘いに従ったり、あるいは自らの未熟で非現実的な欲望に頼ったりするような人間からは、

黄金は逃げてゆくことだろう。


 【第五話】自ら稼いだ資金の運用は、こうして決める
 ――富豪の金貸しメイソンの忌憚なき忠言
 槍職人ロダンは、国王陛下から金貨五十枚をもらった。

後日、ロダンは顔色の悪い顔をほころばせながら、金貸しメイソンを訪ねた。
 妹の旦那を商人として成功させるために、その金を貸してほしいと、

心底大事にしている妹に言われた。ロダンはメイソンに相談する。
’より慎重な選択こそが、大きな後悔から身を救う’


 【第六話】「強固な城壁」は、人々を恐怖や不安から守ってくれる
 ――老戦士バンザルの確固たる自信
 バビロンにアッシリア人の圧倒的な軍勢が急襲してきた。頑丈な城壁を越させまいと、老戦士バンザルは敵からの攻撃に備えていた。
’安心なくしては我々は生きられない’
 【第七話】奴隷に成り下がっても、「人間としての誇り」を忘れなかった男
 ――元奴隷、富豪の駱駝商人ダバシアの数奇な体験
 タルカドは借金をしていたダバシアに街で会う。
 ダバシアに食堂に連れてかれて、奴隷であった彼の昔話を聞かされる。
’決意あるところ、道は開ける’
 【第八話】「バビロンの知恵」は現代にも通用するか
 ――出土した粘土板が伝える貴重な記録
 考古学者アルフレッド・H・シュルーヴェリィは粘土板の翻訳をしていた。そこにはアラビアンナイトのようなロマンスと冒険が刻まれていると思った。

が内容は借金を返すとともに財布の中身を太らせるという方法が記されていた。彼はその方法を実践する。


 【第九話】幸運――それは「労働の喜び」を知ること
 ――元奴隷、富豪の大商人シャルゥ・ナダの愛ある教え
 バビロン一の大商人シャルゥ・ナダ親友の孫アラド・グラとキャラバンで旅を続けていた。父親の放蕩によって遺産を失い、生活もめちゃくちゃになった彼をシャルゥは救いたかった。

しかし彼は労働とは奴隷のすることと思っていた。

そんな彼に自分と彼の祖父が出会った奴隷の時の話を始めた。


 【おわりに】――富が支えていたバビロンの繁栄(物語とその背景)
 古代都市バビロンの解説


(文・だいのすけ)