文章テクニック12


■文章テクニック12/ ひとつの段落にはひとつの内容を入れる

 

まずは次の文章を読んでみてください。

 

 ほとんどの人が夢を実現できないのは、気を紛らわせるだけの活動に自分の集中力を浪費しているからだ。夢をみる力があれば、人は誰でもそれを実現できるのである。動物は夢を見ない。夢が見られるのは人間だけだ。絶望しかない時代である。希望が持てない時代に夢を持っている人は素晴らしい。人は生きているだけで十分素晴らしいといえる。その奇蹟を大切にしてほしい。
 なぜ人は言い訳ばかりするのだろう。言い訳をしても状況は何も変わらない。決断して行動するしかないのだ。自分には何もないと思うのではなく、自分はこんなにも持っていると思えばいいのだ。必要なものはすべてそろっていると思えばできないことなど何もないのだ。
 「より多く得るためには、より多く与えよ」という言葉がある。より多くの売上を望むのなら、顧客により多くの価値を与えなければならないのだ。より多くの愛を望むなら、より多くの愛を与えなければならないのだ。より高い給料を望むなら、より質の高い仕事をすることだ。

 

  いかがでしょうか?

 気のきいた素敵な言葉が並んでいるだけで、読者の頭には何も残りません。

 

 この文章は3つの段落でできています。

 1段落目(青い字)をもう一度読んでみましょう。夢のことを語っているように見えますが、1文目と2文目の内容が微妙にズレています。3文目も4文目も夢について語っているように見えるのですが、これも微妙にズレています。

 たしかに、1段落目は夢について語っています。しかし、内容がズレてしまっているため、読者にはまったく伝わりません。伝わらない文章というのは、このようにして出来上がります。

 

では、どうすればこうしたミスを防げるのでしょうか?

結論を先にいうと、読者の身になって考えるということです。

 

最初の1文にこう書いてあります。

 

ほとんどの人が夢を実現できないのは、気を紛らわせるだけの活動に自分の集中力を浪費しているからだ。

 

この文を読んで読者はどんなことを考えるでしょうか?

あるいは、

どんな疑問を持つでしょうか?

 

おそらく、こんな疑問を持つはずです。

 

1)気を紛らわせるだけの活動に自分の集中力を浪費している

とは、どういう意味だろう?

 

2)気を紛らわせる活動とは、

具体的にどんな活動のことを言うのだろうか?

 

ですから、

この疑問に答えてあげなければいけません。

 

具体例をあげてあげるとわかりやすいでしょう。

 

 ほとんどの人が夢を実現できないのは、気を紛らわせるだけの活動に自分の集中力を浪費しているからだ。たとえば、ここに司法試験を目指している男性がいたとする。彼はストレスを発散するために高価な時計を買うことと毎日カラオケで歌うことに興じている。お金がすぐになくなるのでアルバイトを3つも掛け持ちしなければならず、司法試験の勉強どころではないのだ。彼の貴重な時間はストレスを解消することに浪費され、夢を実現することにはほとんど使われていなかった。

 

 いかがでしょうか?

 このようにすれば読みやすくなるだけでなく、読者に伝わる文章になります。読者の身になって考えるとは、こういうことです。