貧困大国アメリカ

『ルポ貧困大国アメリカ』堤美果



私たちは、

アメリカにどんなイメージを持っていますか?


アメリカといえば経済大国であり、軍事大国であり、

世界で一番強い国、

そして自由の国、

給料が世界一高い国、


そんなイメージを持っているのではないでしょうか?


本書はそんなイメージをくつがえす、

アメリカの負の側面を抉り出しています。


アメリカ農務省のデータによると、

2005年にアメリカ国内で「飢餓状態」を経験した人口は、


3,510万人!


全人口の12%にもおよびます。


うち成人は、

なんと10.45%


10人に1人は飢餓状態。


これは凄い数字です。

しかも、政府発表の数字ですから、

実態はもっと多いと推測できます。


多くの人はフードスタンプで生活していて、

それでも足りないので、

教会の炊き出しに並ぶわけです。



中間層の人たちも、

一度病気になるとたちまち貧困層に転落してしまいます。


医療費は世界一高い国なんです。


貧困から抜け出そうと考える高校生の多くは、

アメリカ軍に入隊します。


しかし、高卒で入隊しても、

最下級の新兵の給料は平均して年間1万5,550ドル。

貧困ギリギリのラインの額なのです。


駐留期間を終えて本国に帰ってきても、

まともな職に就けないままホームレスになるケースが多いといいます。


2007年のデータですが、

350万人のホームレスのうち、

50万人は帰還兵だというのです。


帰還兵の精神障害も深刻な問題として、

アメリカ国内に蔓延しています。

無抵抗な一般市民を殺害したおぞましい経験や、


24時間、敵がどこにいるかわからない緊張感にさらされた

精神的ダメージ、

良心の呵責、

大義のない戦争に加担したというストレスが、

兵士の心を壊していくのです。



そして、

本書では戦争に行く兵士をどうやってリクルーティングするのかが

克明に紹介されています。



「素晴らしいお仕事の話があるんですがね」


と街で声をかけられたり、電話で勧誘されたりするわけです。


そして、説明会に参加してみると、海外勤務であることが明かされ、

そこで死亡するケースもあるということなどが説明されます。


つまりイラク戦争のとき、

現地で戦った兵士たちは、

本国では生活が立ちいかなくなったワーキングプアの人たちだったのです。


政府は格差を拡大する政策を次々と打ち出し、

国民を経済的に追い詰めていきます。


そして、

国民はイデオロギーとは関係なく、

生活苦から戦争に行ってくれます。


そうやって、

巨大な利益を生み出す戦争ビジネスを支えているのです。


日本には、かつて「1億総中流」といわれた理想の時代がありました。


しかし、「規制緩和」「民営化」「自己責任」といったキーワードが象徴する、

自由競争とグローバリズムの波にのまれていったのです。


結果、日本の中流層は貧困層に転落し、

過労死やうつ病の犠牲になってしまいました。


アメリカだけの問題ではありません。

日本も同じような流れに行き着いています。


こうした

日本の現状を打破するには、

まず「いま何が起きているのかを知ること」が大切だと筆者は強調します。


真実を受け止めるアンテナと、新しい目で世界をとらえなおす視野が、

私たちに求められているというのです。




(高橋フミアキ)