テンプレート9


 

(9)時限爆弾のテクニック

 このままでは○○○後には○○○してしまうだろう。

 ○○○○○○○○○○○○○○○○  (その場の様子)

 ○○○○が経過した。

○○○○○○○○○○○○○○○○  (その場の様子)

 ○○○○が経過した。

○○○○○○○○○○○○○○○○  (その場の様子)

 ○○○○○○○  (経過を刻む)

 そのとき、○○○○○○○○○○○○○○○○  (爆発の様子)

 

 

 

【文章例】

 

 ガスコンロの火に気づいている者は1人もいない。このままでは1時間後には鍋は破裂してしまうだろう。

「宴たけなわとなってきましたので、ここらでひとつ、王様ゲームをやりますかね?」

 と、お調子者の男子が言いだす。女子たちは「いや~」といいながらも、まんざらでもない様子。なかにはすでに男子の太ももに手を添えて、胸を押しつけている女子もいた。

 30分が経過した。まだ、コンロの火を消す者はいない。

 「さあ、2番の人と、5番の人、だ~~れ?」

 美人と美男が手をあげる。そして王様はこう言った。

「じゃ、まずはキスをしていただきたいと思いますが、みなさん、いかがでしょうか?」

「え~~」と美女。ニヤニヤ笑うだけの美男。

45分が経過する。コンロの火は赤々と鍋の底を燃やし続けている。蓋からはもう煙すらあがらなくなった。

「キッス! キッス! キッス」とキスコール。

55分。56分。57分。もう限界だ。鍋はいまにも破裂しそうだった。

 美男が美女の肩に手をかける。少しずつ唇を近づけていく。部屋中の視線が、二つの唇の接点にそそがれる。

 そのとき、爆発音が鳴り響いた。

(了)(458w)

 
 
 
コメント: 20
  • #20

    星野ゆか (木曜日, 17 7月 2014 23:28)

    『チップ社会』

    1時間後には、システムが異常を起こしてパニックになるだろう。

    2160年、世界連盟の政府は「国民は、手の中にチップを入れなければならない。」という法律を作った。
    反対意見も多かったが強行採決となり、1年後には実行された。

    チップを入れるだけで次のような恩恵を受けられるが、チップを拒否する人は厳しい生活を強いられる。
    ・本人確認書類等が不要になるので、役所での手続もわずか数分で終了する。
    ・チップを機器にかざすだけで銀行から自動引き落としされるシステムのため、手ぶらで買い物したり交通機関を利用できる。
    なお、チップを使ってATMにチャージすれば、銀行の預金額が自動更新される。
    ・海外旅行でもビザやパスポートが不要になるので、気軽に旅行へ行ける。
    ・政府から、チップ連動型タブレットが支給される。
    タブレットを利用するだけでその人に合った品物・選択を指示してくれるので、人々は決断にかける時間を減らすことができ、悩む必要がなくなる。
    ・政府に支払う総合税金が50%減額になる。
    ・チップ生活の補助金が毎月9万円支給される。
    少数の人はプライバシーを懸念したが、国民の95%が便利で楽な生活を享受する生活を選んだ。

    それから62年が経ち、2222年になった。
    大きな問題は起きず、チップなしでは考えられない社会に変貌していた。
    ある日の深夜2時。
    政府は極秘計画を実行した。
    チップのシステムを操作して、1時間後に誤作動するトリガーを入れた。

    2時45分。
    換気口から煙が出た。深い眠りの中、異変に気が付く人は誰もいない。

    2時55分。
    煙が人を包み込んだ。煙に気がつき、目が覚めた人もいた。

    3時00分。
    チップが「警告」を出さない。人々は安心して、再び眠りについた。

    3時01分。
    そのとき、有毒ガスが心臓を直撃した。
    チップの指示に従い、思考を放棄した95%の国民は永遠の眠りについた。

  • #19

    浅加怜香 (木曜日, 03 7月 2014 06:15)

    『シャンパングラス』

    仕込み終了。
    30分後に里佳子は毒薬を塗ったグラスでシャンパンを飲み死んでしまうだろう。

    そもそも、里佳子が悪いのだ。
    「亜美と大紀の間を取り持ってあげる」
    と安心させておきながら、
    里佳子は大紀に猛アピールし、結婚まで決まってしまった。
    今日は、結婚パーティーを行うから
    その場で手を下すことにした。

    里佳子が使うグラスにはバラの模様。
    大紀が使うグラスには、葉っぱの模様が描かれているグラスを用意したから、他の人が間違えないようにしてある。

    10分が経過した。
    すべてのテーブルセッティングを終えた。

    25分が経過した。
    参加するメンバーが全員そろい、
    シャンパンが注がれていく。

    「カンパーイ」
    あともう少しよ。
    ところが、里佳子はグラスに口をつけず、テーブルに置いた。

    どうして飲まないのかしら。まさか気づかれた?

    「大紀、私の代わりに飲んで」
    大紀は飲み干したグラスを置き、里佳子のグラスを手に取った。

    どうしよう。大紀が飲んじゃう!

    そのとき、大紀が血を吐いて倒れた。

    「大紀、しっかりして!」
    里佳子が慌てて駆け寄ったが、息絶えていた。

    里佳子は、
    「私のお腹にはあなたの子がいるのに……」
    そう言った。

  • #18

    山口倫可 (水曜日, 02 7月 2014 21:44)

    「瞬間湯沸かし器」

    もうすぐ開店の時間だ。

    社長の綾小路は、スタッフ控え室の奥で目が覚めた。
    前日テレビ局との打ち合わせで遅くなり、ここで寝たのだった。

    開店30分前、
    スタッフが一人、二人と出勤してきた。
    ロッカーを開けながら着替え始める。
    誰も、奥の部屋にいる綾小路に気づかない。
    綾小路は、いたずら心を出してしばらく黙っていることに決めた。

    開店15分前
    着替え終わったスタッフ達の話し声が聞こえてくる。
    「社長さあ、すごいよねぇ。テレビつけると必ず見るって感じじゃない?」
    「ハードだよねぇ。何人かそっくりさんとかいて仕事してたりして」
    「そういえばさ、このあいだ石原さとみと対談してたよ。羨ましいかぎりだねぇ」
    綾小路はそのときのことを思い出してニンマリと笑った。

    開店5分前、チャイムが鳴った。
    「ところでさぁ、社長のあのカツラ、なんとかならないのかなぁ」
    「ああ、あれねぇ。カツラってバレバレだよねぇ。それにさ、最近ちょっと若作りし過ぎ!
    なんか、見ててちょっとイタイよねぇ」
    綾小路は、それを聞いてわなわなと震え始めた。

    開店1分前、一人、二人と控え室から出て行く。
    残った二人が小さな声で話し出した。
    「わたしさあ、最近テレビで社長見ると思わずいっちゃうんだよねぇ~」
    「なにを?」
    「フフ…。人差し指立てて 『どんだけぇ~~!』ってさ」

    そのとき、綾小路の中で何かが爆発した。
    「バタン!!」
    ドアを蹴り開けた綾小路を見て、スタッフ達は凍り付いた。

  • #17

    山口倫可 (水曜日, 02 7月 2014 21:19)

    「落とし穴」

    その森の中心には、ふかーいふかーい穴があった。
    穴の中ではウワバミが、落ちてくる動物を待って蜷局を巻いていた。

    森の中の生物はみな利口で、なかなか穴に落ちてこない。
    ウワバミは、死にかけていた。

    ところが、ここのところ
    食べたことのない、上質の脂がのった生き物が
    わっさわっさと落ちてくる。
    ウワバミは上機嫌だった。
    「今日もあの、ご馳走が食べたいもんだ」

    そんなこととは知らず、
    恋人同士が手を繋ぎながら歩いている。

    10メートル前
    「可愛い!ほら、あそこにリスがいる」白樺の木を彼女が指さす。

    5メートル前
    「美しい鳥の声が聞こえるね。素晴らしい森林浴だ」
    会社でストレス続きだった彼は、マイナスイオンの空気を肺いっぱいに吸った。

    1メートル前
    「弾丸ツアーだったけど、来てよかったね」彼女が彼に、にっこり微笑んだ。

    次の瞬間、がささささぁーと落ちる音がした。
    仲良く手を繋いだまま、二人は
    ふかーいふかーい穴に落ちていった。

    森の入り口には「世界遺産登録の森」と書かれた
    大きな看板が立っていた。

  • #16

    星野ゆか (火曜日, 01 7月 2014 00:13)

    『あ・な・た』

    このままでは女の怒りが大爆発して、男は殺されてしまうだろう。
    妻はベッドのシーツを取ろうとしたとき、見慣れないダイヤのピアスがあることに気が付いた。
    妻は直感した。「私が出かけていたとき、主人は他の女と浮気したんだわ!絶対に許さない・・・!」
    妻は白い手袋をして、片方のピアスを玄関の前に置いた。

    午後7時。
    「ただいま~。」何も知らない夫が帰宅した。
    妻は、玄関で丁寧に「お帰りなさい。あ・な・た」と迎えた。
    いつもと違う妻の様子に、夫は困惑したが妻の前に置かれているダイヤのピアスを見て、一気に青ざめた。
    「ち、違うんだ!こ、これは・・・。」
    妻は、優しく言った。
    「あ・な・た?何をそんなに慌てているのかしら?上がったら?」

    1分が経過した。
    夫は恐怖におびえながらリビングに行き、鞄を置いた。
    テーブルの上にはハンバーグと一緒に、もう片方のピアスが置かれていた。
    夫は、頭が真っ白になった。
    妻は「あら?これは何かしら?」と今、気がついたようにピアスを持ち上げた。
    「どうしてピアスがここにあるのかしら?私はピアスをしないのに。まさか浮気していないわよね?あ・なた?」
    夫はぎょっとして妻を見た。
    「い、いや・・・俺も知らないな。義姉さんの忘れ物じゃないか?」
    それまで穏やかだった妻の目は、一瞬にして鬼の目に変わった。
    「私のお姉ちゃんもピアスしていないわよ?嘘をついたらどうなるかわかっているわよね?」
    「そ、そうか・・・じゃあ俺の友達が彼女を連れてきた時の忘れ物じゃないかな。」

    沈黙の時間が流れた。
    カチッ、カチッ・・・いつもは気にならない時計の音がリビングに響き渡る。
    妻は、椅子から立ち上がった。
    夫が深呼吸をした時、鬼の形相をした妻がナイフを持っていた。
    慌てふためいた夫は、浮気を認めて謝罪しようとした。
    その時、ナイフが夫の腹に命中した。
    夫の意識がなくなる中、妻は優しい声で「あ・な・た?ウフフ」と微笑んでいた。

  • #15

    山内たま (火曜日, 01 7月 2014 00:10)

    「SOS」
    こままでは一時間後の終電を逃してしまうだろう。
    忘年会で野球サークルの仲間と別れ
    「高野さぁ、吉田と途中まで沿線同じみてぇだから、連れて帰ってくれる?」
    と、先輩の命令にしかたなく、泥酔した吉田先輩と新宿から電車に乗り10分経過。
    違う沿線だという他の先輩との別れを急に惜しみだし、閉まるドアに上半身を投げ出したところで、思いっきりはさまり、車内放送で怒られ20分経過。
    お前は期待の新人だから何かあっちゃいけないと言いだし、優先席に座るように命じられ断ると、俺の命令がきけないのかと怒鳴り始めたので、おとなしく座った。周りから笑い声が聞こえ、もう、死にたくなるぐらい恥ずかしくなり40分経過。
    先輩の最寄りの駅に着いたが、気持ち悪いというので下車し、トイレに二人でこもり50分経過。
    吉田先輩は便座に座ってスヤスヤと眠ってしまった。応答なし。
    「先輩すみません、俺、終電なんで失礼します」と別れを告げたのが終電1分前。
    「高野…」と肩をつかまれ振り返ると先輩の吐瀉物を浴びる。
    その時、「下り方面の最終電車は終了しました〜」と車掌のアナウンスが流れた。

  • #14

    まりこ (火曜日, 01 7月 2014 00:08)

    「千代田線の彼女」

    代々木公園前から千代田線に乗り込んだ俺は「今日もラッキー!」と思った。「千代田線の彼女」がいつものシートに座っていたのだ。「千代田線の彼女」は俺の勝手な命名。話したこともない。時々出勤の電車でいっしょになる女性だ。年の頃は27、8か。涼やかな和風美人だ。彼女を見かけた日は仕事がうまく行く。今日も仕事は順調だな。よし!

    俺はいつも彼女のすぐ前には立たず、無理せずに彼女を眺められる場所に立つ。だって恥ずかしいじゃないか。
    今日も彼女は少しスマホをいじり、その後コックリコックリしはじめた。無防備な寝顔も可愛いらしい。
    そのときだ。俺は彼女の頭上の壁に、ある不穏な生き物を見つけた。それは七センチくらいの蜘蛛だった。足の長い女郎蜘蛛だ。その蜘蛛が下に向かって這っていっているのだ。このままでは蜘蛛は彼女のうなじに到達してしまう。彼女は目を覚ますだろう。そしてどうなるか。ああ、そんなことはあってはならない。
    蜘蛛はゆっくりと下に向かって這っていく。なんとかしなければ。蜘蛛を追い払う?どうやって?彼女を起こす?どうやって?
    その時電車がガタンと揺れて止まった。表参道に着いたのだ。蜘蛛も動きを止めた。たくさんの人が降りる。蜘蛛はじっとしている。何か考えているようだ。電車が動き出した。蜘蛛は向きを変えた。蜘蛛は右の方に向かって動き出した。よしよし、それでいい。
    安心したのもつかの間、2分後、乃木坂でまた蜘蛛は止まり、また向きを変えた。今度は左だ。
    こうして蜘蛛は電車が止まる度に向きを変え、乃木坂から8分後の今は荷物棚の下部を這っている。彼女の頭の真上に向かって。
    彼女は5分後の大手町で降りるのだが、蜘蛛よなんとか5分間じっとしていてくれ。俺は念を送った。日比谷から二重橋までの3分間が過ぎた。俺の念が効いたか蜘蛛は彼女の頭の上でピタリと止まっている。
    電車が二重橋を出た。あと少しだ。
    と、蜘蛛はするすると糸を出しながら下に向かって降り始めたのだ。下には彼女の頭が。俺は乗客を掻きわけ彼女の前に向かった。そして手を伸ばし蜘蛛の糸を掴んだ。その時だ。彼女が俺の動く気配で目を覚ました。目を開けた彼女の前には俺の手からぶら下がった大きな蜘蛛が。「きゃあーーー!」彼女の絶叫が車内に響いた。


  • #13

    dainosuque (月曜日, 30 6月 2014 23:17)

     このままでは三分後には信号は青になってしてしまうだろう。動き出さないタクシーを不振に思う人が近づいてくるだろう。
     先ほど、殺したタクシーの運転手が眠ったように頭を垂れている。私は運転手の内ポケットから財布を取り出し自分のかばんに閉まった。
     一分が経過した。
     私は、金庫を見つけた。きっと大金が入っているだろう。しかし鍵がどこにあるかわからず探す。  
     二分が経過した。
     運転手の胸から血が出てきたが、私はお構いなしに鍵を探しつづけた。 
     残り三十秒、私は帽子の裏にある鍵を見つけた。
     残り二十秒、金庫を開けた。
     十、九、八、七、六
     中味を見た。なんと、そこには白い粉が入っていた。おそらく麻薬だろう。私は呆然とした。  
     そのとき、後の車のクラクションが鳴り響き、運転席側のドアをドンドン叩いた。
    「どうかしましたか?」
     私が顔を上げると、その声を発したであろう警官と目が合った。  

  • #12

    蘭子(佐藤晶子) (月曜日, 30 6月 2014 16:24)

    「記念日」

    急がないと2時間後には、和也が家に到着してしまうだろう。
    美咲は買ってきたものを開封して、所定の場所に運び込む作業に追われていた。
    大きなビニールシートに、肉切り包丁が三本、新品の台車にクーラーボックス。
    週末にバーベキューでもするつもりなのだろうか?

    一方夫の和也は、六本木のオフィスで仕事を急いで片付けようとしている。
    美咲の好きなシャンパンを土産にしようと、秘書の女性に買ってきてもらった。

    1時間が経過した、美咲のパーティ準備はまだ始まらず、荷物整理が続いている。
    ビニールのエプロンに、浴室用ブーツ、それに消毒液・・・、これらを全て浴室に運び込んでいる。

    和也はその頃、美咲との結婚生活の日々を思い出していた。
    合コンで華やかな美咲に一目惚れしたのは10年前のこと。
    しかし結婚生活は幸せでは無かった。和也は仕事のストレスが重なると、美咲に暴力をふるっていたのだ。
    一度は美咲の鼻を折ったこともある。

    和也が幼いころ、同じように父は母に暴力をふるい、止める和也にも暴力をふるっていた。
    そんな父と同じことをしている自分がイヤでたまらなかった。
    「美咲ごめんね」暴力をふるった後は、泣きながら謝った。

    そんな暮らしも今日で終わりだ。
    今日は結婚記念日で、離婚記念日になるのだ。
    離婚を切り出したのは和也。
    もう半年も前になる。
    実は和也には新しい彼女がいて、彼女の薦めでカウンセリングを受け、
    暴力をふるう父と、抵抗をしなかった母への憎悪が解消されていないことを知った。
    美咲は母の代わりだったというわけなのだ。
    ずっと離婚に応じなかった美咲が何故か急に離婚しましょうと言ってくれたとき、ずっと背負ってきたものから解放されるのを感じた。

    さぁ約束の時間まであと15分。急いで帰らないと。

    そのころ美咲は準備を終え、デリバリーのピザを受け取っていた。
    さぁ、もうじき到着ね。

    二時間経過。
    ピンポーン。
    ふふっ。美しい美咲の笑顔が久しぶりに見れて、和也もホッとした。
    そのとき!
    和也が最期に見たのは、笑顔の美咲が世にも恐ろしい顔で、ワインボトルを振りかざす姿だった・・・。

    デリバリーのピザをシャンパンで流し込むと少し興奮状態が落ち着いた。
    ビニールエプロン、手袋、ゴーグルを身につけ、和也の解体を始める。
    夜が明ける前に、あちこちに捨ててこなくてはならない。
    美咲の長い夜が始まる。

  • #11

    秋 カスミ(佐藤亜矢子) (月曜日, 30 6月 2014 00:13)

    「好みに仕上げた家」
    このままでは10分後には観測史上最大の竜巻におそわれ、この家は吹き飛んでしまうだろう。
    ハナとけんじは、モルディブの新婚旅行を終えて帰って、この家で新しい生活をスタートさせたばかり。築30年の一軒家をリノベーションして自分たち好みの家にした。
    その好みに仕上げた家で、今、家具の配置でけんかをはじめた新婚の二人。

    5分が経過した。ヒューヒューと風が吹いているが外の音などけんか中の二人の耳には入っていない。
    「やっぱりね、ソファは窓を背にするべきよ」
    「いや、テレビをこっちにして、ソファは窓に向けるんだよ」
    さらに3分が経過した。窓がガタガタとし始めた。
    「いつもそうやって自分の言い分を押しつけるのよね!」
    「なんだよ、すぐそうやって感情的になるんだから」
    けんかはしながらも、新婚の二人。なんだかんだ言ってぎゅっとしあって仲直りのいつものパターンになっていく。
    50秒・・30秒・・20秒。
    「もう、けんじったら」
    そのとき、バルバルバルルル!!!!バキバキバキ!!!

    好みに仕上げた家は跡形もなくなった。

  • #10

    翔一(篠木謙一) (日曜日, 29 6月 2014 23:22)

    「振り込み期限」

    このままでは、あと一時間後には振り込みの期限を過ぎてしまうだろう。
    この辺にはコンビニがないため、駅の近くにある銀行のATMで振り込むしかない。
    机の上にはまだ片付いていない仕事がいくつか残っている。
    今日中にやらなければならないものだけを片付け、銀行に向かうしかない。
    30分が経過した。仕事を切り上げた俺は荷物をまとめ始めた。タイムカードを押し、急いで会社を出た。
    40分が経過した。ようやく来た駅へと向かうバスに俺は乗った。駅まではバスで15分ほど。何とか間に合うだろう。
    55分が経過した。バスが渋滞に捕まり、なかなか動かない。俺は一つ前の停留所で降りて、駅まで走り出した。
    56,57、58分、目の前に銀行が見えた。よかった。これで間に合う。
    59分、安堵した俺の目の前で信号が赤に変わったため、俺は足を止める。
    信号が変わり、俺は入り口まで走りだす。銀行に入ろうとしたが、既に入り口にはシャッターが閉められていた。

  • #9

    夏来 みか(戸部みか) (日曜日, 29 6月 2014 21:28)

    「断腸の賭け」

     このままでは、6ヶ月後には、私に対する死刑は執行されるだろう。

     僕の愛する妻が、なぜか、同僚を殺したという罪で死刑になってしまった。妻は、同僚を殺していないと言う。僕は彼女が人を殺せるとは思えない。どうしても、真犯人を見つけなければならない。

     3ヶ月が経過した。夫は、手紙を書いても書いても、会いに来てくれない。私は同僚を殺していない。冤罪を被り、最愛の夫にも見捨てられてしまった。このまま死んでも、悔いはない。

     妻に対する、死刑執行の手続きがどんどんと進んでいく。彼女に会いに行くこともせず、海外に飛んだかもしれない、真犯人を捜している。真犯人は見つからない。彼女の冤罪を晴らす方法も、わからない。時間ばかりが経過していく。

     5ヶ月が経過した。もう、私は、この世に会いたい人もいなければ、やり残すこともない。身に覚えのない罪で、殺されることは悔しいし、悲しいけれど、そんな不条理なこの世と「おさらば」できることは唯一の救いだ。

     僕は、どうしても妻を救いたい。「断腸の賭け」を思いついた。

     明日、私は殺される。覚悟を決めて、心静かにしていた。ところが私は、医療刑務所に移送され、死刑は延期された。看守の子供を、妊娠していたのだ。

  • #8

    佐伯 悠河(小林亜紀) (日曜日, 29 6月 2014 20:43)

    「満月の夜」

    飲み忘れた薬が卓上に置かれている。このままでは、1時間後には発作が起きてしまうだろう。

    男と女が連れだって帰ってきた。男はこの家の主、女はその恋人だ。今夜、デートの後で男が女を自宅に誘ったのだ。
    二人は居間で極上のワインを開けた。グラスを重ねるにつれ、女の緊張がほぐれ、親密な空気が高まり始める。
    30分が経過した。男は薬のことなど忘れている。
    ワインが女の頬をうっすらと染め、瞳を潤ませている。男が隣に座り、肩に手を回しても抵抗しない。
    45分が経過する。薬は依然としてそこにある。
    男はグラスを置いて女の頬に唇を寄せ、その体をまさぐり始めた。甘い吐息がこぼれる女の唇を、男の唇が荒々しく塞ぐ。
    55分。56分。57分。もう限界だ。男の体内で、薬の効果が切れようとしていた。
    男は女の体をソファに押し倒し、服を脱がす。あらわになった胸に手を伸ばし、口づけようとする。
    そのとき、薬の切れた彼の全身が激痛とともにきしみ始め、全身が黒い剛毛で覆われていく。
    恋人の突然の変貌に、女は悲鳴を上げることもできず凍り付いていた。

  • #7

    鵜養真彩巳 (土曜日, 28 6月 2014 00:12)

    「悪夢」

    船内にはその場に留まるように、というアナウンスが繰り返し響いている。
    船が傾き始めて10分が経過した。安全のためとはいえ、このままじゃまずいだろう。
    しかし周りの観光客は平気な顔をしている。船員の姿はまったく見えない。
     さらに10分が経過した。傾きがまた少し大きくなっている。アナウンスは未だに、安全のためその場に留まるように伝えていた。でも俺の頭の警報が鳴りっぱなしだ。
    「行こう!」
    俺はひとり手すりにつかまりながら、非常口を探した。他の客は相変わらず、おしゃべりを続けている。
    さらに10分が経過した。船は傾き続け、俺は一人非常口を求めて廊下を彷徨っていた。なぜか非常口が無い。外に出るドアはみな外から鍵が掛けられている。
    「チクショウ!船員はどこだ!外はどっちだ!」
    船内アナウンスももう聞こえなかった。もしかして、その場に留まっていたら、船員たちの誘導があったのだろうか。
    ガガガガッと嫌な音がしたかと思うと、一気に船内に水が入ってきた。
    ああ、もう俺は終わりだ。いや、ダメだ!家に帰るんだ・・・。

    そして、俺はいつもの朝を迎えた。そう、あれはいつもの夢なのだ。俺は数人の乗客と共に、無事船から脱出できた。あのアナウンスを聞かなかったから。しかし、船員達の不手際と間違ったアナウンスのせいで、その他大勢の乗客が船とともに沈んでしまった。
    あの時、俺は非常口を目指す前に、どうして他の乗客に声をかけなかったのか。自分にできることは、もっとあったのではないか。
    そう思うと、また嗚咽をこらえることができなかった。

  • #6

    高山雄大(髙荷一良) (金曜日, 27 6月 2014 19:21)

    「2人の運命」

    このままでは30分後には爆発してしまうだろう。本当にそれで大丈夫なのだろうか。

    「おい、生きてるか?」
    「あぁ、何とかな」
    頂上まであとわずかというところで岩が崩れ2人は宙づりになった。落ちる時にあちこちぶつかったせいか顔や手が血だらけだ。

    10分が経過した。リーダーによれば爆風が上昇気流をつくるという話だ。にわかには信じがたいが今は専門家の意見にすがるしかない。

    血は止まるどころかとめどなく流れていく。声を出す気力も流されていくようだ。
    「稜ちゃん、…オレ、やばいよ…」
    声がとぎれとぎれに聞こえてきた。稜太が下を覗くと血の気を失った吾郎が苦しそうな表情を浮かべている。

    20分が経過した。急に上向きの風が強くなった。このままでは火薬量が多いのではないかというささやきが聞こえてきた。
    「おい、人の命がかかってんだぞ」
    叫んだがどうにもならない。

    稜太はもう一度登ろうとするのだが思うように手があがらない。少し動かしただけで激痛が走る。

    爆発まであと3分。先ほどの風が微風に変わった。
    「頼む、うまくいってくれ」
    私は両手を合わせてただひたすらに祈った。

    残り30秒、…15秒、10、9、…3、2、1、爆破!

    「オレたち、このまま、か、…な」
    「もっと、酒、飲みたかった、よ…」
    次の瞬間、稜太、吾郎の声をかき消す音がつんざく。息つく間もなく猛烈な風が吹き上げてきた。
    「うわぁぁ」
    「うっ、ぎゃぁぁ」

    地上では救助マットが2人を待ち構えていた。

  • #5

    林夏子 (月曜日, 23 6月 2014 18:01)

    「Departure」

    このままでは1時間後には飛行機に乗り遅れてしまうだろう。
    別居中の妻キャサリンと息子と私の三人で文字通り家族の再出発をしようとキャサリンに提案し、航空券を送ったのは私だった。

    いよいよ旅行に出掛けようとした時、急を要する仕事が入ってしまい、家を出るのが予想以上に遅れてしまった。空港へ続く道は渋滞しており、私と息子を乗せたタクシーは完全に停まってしまった。
    一方、キャサリンがゆっくりと空港のロビーへ入ってきた。ベンチに腰掛けて手帳にはさんだ息子の写真を眺めて微笑んだ。

    30分が経過した。私たちはようやく空港に到着した。
    搭乗開始のアナウンスが流れ、キャサリンは搭乗ゲートで夫と息子の姿を探す。

    45分が経過した。
    遅れて着いた私と息子は手荷物検査とセキュリティチェックに長蛇の列が出来ており、中々キャサリンの待つ搭乗ゲートまで辿り着けない。
    ようやく検査を通過して、搭乗口まで駆け出そうとしたところ、手を握っていたはずの息子がいないことに気がつく。
    大声で息子の名前を呼ぶが雑踏にかき消されて息子には届かない。

    58分、59分、ついに、最終の搭乗締め切りのアナウンスが流れた。飛行機はゆっくりと離陸していく。
    キャサリンは悲しそうに首を振って、キャリーバックを引きながら空港から去っていった。

  • #4

    岡田那津子(おかだなつこ) (月曜日, 23 6月 2014 12:57)

    『修羅場はこうして始まる』

    このままでは30分後には修羅場と化してしまうだろう。本当なら深夜まで続く仕事が奇跡的に片づいた裕太の婚約者、洋子が、サプライズをかねて彼の部屋に向かっているからだ。

    そんなことはつゆ知らず、裕太は、やっと口説き落としたキャバ嬢のアケミが鼻歌交じりで浴びているシャワーがいつ終わるのかと、そわそわしていた。

    15分が経過した。洋子を乗せたバスが駅をでる。裕太の大好きなアサリのパスタを作るための材料を手にして。

    そんなことはつゆ知らず、裕太はシャワールームから出てきたアケミの耳元に甘い言葉をささやきながら、ねっとりとしたキスを繰り返しつつベッドに押し倒した。

    15分が経過した。タクシーを降りた洋子は慣れた手つきでオートロックを解除してマンションの中に入ってきた。エレベーターに乗り込み9階のボタンを押す。もうだめだ、今から服を着たって間に合うはずがない。

    そんなことはつゆ知らず、裕太はアケミのバスローブに手をかけた。やっとアケミを抱くことができる!

    そのとき、「ガチャッ」とロックのはずれる音がした。
    裕太とアケミはすべての動きを止めて、呆然と見つめあう。

    「裕太、いるんでしょー。今日予定よりすっごく早く仕事が終わったからパスタ作る、ね?」

    洋子の足下にバサっと荷物が落ちる音がした。生まれたままの姿の二人の全身に広がった鳥肌は、これからの修羅場がどれだけ激しいものになるかを暗示していた。

  • #3

    敷布団 (木曜日, 19 6月 2014 21:53)

    『イタズラ心とサプライズゲスト』

    「ふふふ、これぞロシアン餃子」
     わたしは笑いをこらえながら、餃子のひとつに胡椒をたっぷりと入れた。
     揚げてしまったら、自分でも区別できなくなった。
     大皿に餃子を並べる。
     準備は万端、あとは夫の帰りを待つばかり。
    「ただいま」
     帰ってきた!
    「お邪魔しますよ」
     あれ? お客? しかもこの声は……。
    「おひさしぶりね。リョウコさん」
    「お、お義母さん!」
    「母さんも晩飯一緒して問題ないだろ?」
     きてから言わないでよ!
     しかしもう遅い、3人で食卓を囲うことになった。
     餃子は全部で20個ある。
    「おいしい餃子! リョウコさんはほんとうに料理上手ね」
     と、お義母さんは餃子をひとつ口にして言った。
    「あ、ありがとうございます」
     よかった! 当たりじゃなかった。
    「うん。うまいうまい」
     夫もひとつ食べた。
     残り18個……。
     わたしは必死に目をこらして当たりを探しながら食べた。
     しかし、なかなか当たりは出ない。1個、1個と餃子は減っていく……。
     残り10個。
     もう、いつ誰が当たりを引いてもおかしくはない。
     わたしは食べるペースをあげた。
    「うっ!」
     ついに当たりを引いた。
     しかしわたしは口を押さえてトイレに駆けこまなければならなかった。
     咳きこみながら口の中のものを吐き出し、やっと落ちつく。
     よかった、どっちにも食べさせずにすんだ……。
     夫とお義母さんが、トイレの前でわたしを待っていた。
    「おまえ、そうなのか?」
    「まあまあ、おめでとうリョウコさん!」
    「え? ……あ、ちがっ!」

  • #2

    山口倫可 (月曜日, 16 6月 2014 20:19)

    『スイッチ』

    「このままでは地球は、死の星になってしまうだろう」

    宇宙管理委員会では、人間の無謀な行為に頭を痛めていた。

    せっかく与えた美しい環境を破壊し、地球上の生態系を変え、自然のサイクルを無視した行為を重ねているからだ。

    宇宙委員会は、ある日決断を下した。

    「これ以上、経過観察はできない。あの『スイッチ』を設定する。30年後にセットしてゼロ値に戻してからまた新しい生態系を造り直すのだ」



    かくして、その『スイッチ』は人間が気づかぬうちに、あちこちにセットされた。



    10年が経過した。

    A 国が、代替エネルギーと期待されるシェール層を見つけた。

    掘り出し始めて3年後、A国では地震が多発し、地盤沈下にも悩むこととなった。



    また10年が経過した。

    B国が、ウラン資源開発を始めた。B’国との境界線近くだったため両国は険悪なムードになった。



    また、10年が経過した。

    C国が、海洋資源の開発に乗り出した。海洋権を無視した開発に周囲の国は激怒した。



    最後の時がやってきた。

    資源を掘り出している全ての場所で、大きなボタンの形をした岩が見つかった。

    A国もB国もC国もその他の国も、みな資源開発に夢中だったので、話し合うこともせず岩を壊して先に進んだ。その岩は、宇宙管理委員会が設置した『スイッチ』だった。

    次の瞬間、地球上の生物という生物、存在している全ての物が成層圏を越えて宇宙に飛び出していった。

    『スイッチ』は、地球の重力解除スイッチだったのだ。

  • #1

    関根 雅史 (筆名:石賀 次樹) (土曜日, 14 6月 2014 20:00)


    『老人とサウナ』

     その老人は無人のサウナでうっかり眠り込んでしまった。あと20分もこのままだと予定よりも早めのお迎えがくることになる。

     彼は毎日、人の少ない午前中ゆっくりサウナに入るのが楽しみだった。今日は老人の他に利用客がおらず、彼は「しめしめ」と思った。しかし、逆にそれがあだとなり、彼のピンチに気づく人が誰もいない。

     5分経過。老人はタオルの上に仰向けになり、高いびきをかいている。まだ他の客は一人もこない。こういう日も珍しかった。

     10分経過。老人は全身から汗を噴き出しながら、それでも一向に目を覚まさない。本来ならそろそろ従業員がタオルの交換にくる時間だが、なぜか今日はまだ顔を出さない。

     15分経過。老人は茹でダコのように体中を真っ赤にして横になっている。すでに寝ているというよりも、意識を失っていた。しかし、しかし、いまだ従業員も一人の客も現れない。

     そのときサウナの扉が開き、全身刺青をした三人組の男が入ってきた。
    「おい、爺さん。こんなところで寝てんじゃねーよ。死んじまうぞ!」と言って、男たちの中の一人が老人の頬をビシビシと叩いた。
     彼は跳ね起きてサウナを飛び出し、ザブーンと水風呂に頭から浸かった。