小説を書くうえで忘れてはならない5つのこと

◇その1/そもそも小説とは

 

 そもそも小説は何でしょうか?

 

 「小説」という言葉が生まれたのは明治期です。「ノベル/novel」の訳として坪内逍遥が『小説神髄』のなかで「小説」と名づけたことからはじまりました。坪内逍遥は、「小説」という言葉を、勧善懲悪を斥け、人情を映す文学作品として定義づけました。

 

 そもそも「小説」という言葉は中国の後漢時代(25年-220年)の書物『漢書』のなかではじめて出現しました。このときは文学などありませんでしたから、文学用語として生まれた言葉ではありません。

 

 『漢書』のなかで、小説とは「街談・巷語、道聴・途説する者が造る所なり」と説明してあります。どういう意味かというと、「ちまたで語られているつまらない話」ということです。

 

 これこそ小説の起源だと思います。

 

 松本人志の「すべらない話」というテレビ番組がありますが、まさに、あれこそが小説のはじまりではないでしょうか?

 

 ですから、難しく考えないでいただきたいのです。小説を書くうえで、絶対に忘れてはならないことの第一は、「小説とはつまらない話なのだ」ということです。

 

 小説塾の参加者らが、よく

 

「小説って難しいですよねぇ」

と言われます。

 

 難しく考えると難しくなります。難しくなると、どんどん難しくなって、小説を書くことも、小説を読むことも、どんどんできなくなり、どんどん落ち込んでいくのです。そうなると悪循環ですから、このマイナスのスパイラルに絶対にはまらないでいただきたいのです。

 

 社会問題をするどくえぐる必要はありません。社会悪を舌鋒鮮やかに喝破することもありません。人生を美しく歌い上げなくてもいいんです。

 

 そんな難しいことは、ちゃんと書けるようになってから考えればいいことです。

 

 いま、考えるべきは、「ちょっとしたお話」を見つけることです。そのことに専念すればいいのです。

 

 

 

 

◇その2/ちょっとしたお話とは?

 

 では、「ちょっとしたお話」とは何でしょうか?

 

 どうせ書くのなら、読者に褒められたいですよね。

 

「君の小説はおもしろかったよ」

 

「君の小説はハラハラドキドキしたよ」

 

「君の小説を読み始めたら寝るのを忘れてしまったよ」

 

などと言われたくないですか?

 

 

 もちろん、言われたいですよね。

 

 

 

 しかし、これほどの最上級の賛辞をもらうには、それなりに技術を身につけてセンスを磨く必要があります。長年の努力の褒章として与えられるものなのです。

 

 ですから、最初は、ちょっとおもしろい話を目指すといいのではないでしょうか?

 

 それこそ、松本人志の「すべらない話」です。

 

 松本人志の「すべらない話」をしっかりと見てみてください。YouTubeで検索すると出てきますので、何本か見てみましょう。あれをそのまま文章にしてしまえば、ちょっとした小説になります。

 

 まずは、そこからはじめてみましょう?

 

◇その3/身近な「すべらない話」を探す

 

 松本人志の「すべらない話」は、自分たちの体験談を話しています。芸人さんたちが、実際に体験したことを話して、「すべらんなぁ~」と言って笑っているわけです。あの話が本当かどうかなんてどうでもいいことで、創作している部分もかなりあると思います。

 

 とにかく、おもしろければいいわけです。

 

 芸人たちは日常、すべらない話になりそうなネタを探しています。西新宿の街を歩いていて、ホームレスが「ビッグイシュー」を売っている姿を見たとき、あ、これで笑える話ができないかな、と考えるわけです。

 

 たとえば、こんな話はいかがでしょうか?

 

 私が、買おうか買うまいか悩んでいたら、若い女性がやってきて、ホームレスに5,000円渡すわけです。それでいて、女性は「ビッグイシュー」を1冊ももらわない。もらわないで、何をするのかというと、いきなり泣き出して女性が話し出すんです。つまり、ホームレスのオッサンに人生相談してるわけ。その人生相談の会話がおもしろい。

 

「彼氏にフラれて生きる気力がなくなりました」

 

「オレなんか、会社にも、社会にも、人生にもフラれたよ。でも生きてる。毎朝、太陽が、もっと生きていいよって祝福してくれるんだ」

 

 ちょっといい話ですよね。ホームランじゃないけど、ちょっとおもしろくないですか?

ホームレスが「ビッグイシュー」を売ってるのは本当の話ですが、そのあとのことは創作です。それでいいんです。とにかく、おもしろければいいんですから。

 

 そもそも、小説は嘘の話です。

 

 だから、嘘でいいんです。

 

 日常生活のなかで、こうしたネタを探してみましょう。 

 

 

◇その4/ネタの探し方

 

 ネタ探しは自分探しです。

 

 自分が何に興味を持つかということです。何でもいいんです。興味を持ったことをスマホのメモ機能に書いておけばいいだけのこと。あとで書こうとすると忘れてしまいますので、気がついたときにその場で書くようにしましょう。

 

 たとえば、先述したホームレスの話だったら、こうメモしておけばいいんです。

 

・ホームレス

 

・ビッグイシュー

 

・新宿西口

 

 たったこれだけ。

 

 あとのことは創作です。女性がやってきたことや、ホームレスが人生相談することなどは、創作ですから、あとはパソコンの前で小説にするときに考えればいいのです。

 

 1週間に1日だけ、ネタ探しの日と決めましょう。

 

 朝、出勤するとき電車に乗りますよね。そのとき、あなたの興味を刺激したものはありませんでしたか? 何でもいいんです。

 

・電車内の車掌のアナウンス

 

・貧血かなにかで駅のホームでうずくまっている女性

 

・週刊誌の中づり広告に見入っているオッサンの禿げ頭

 

 会社に行って仕事をしますよね。そのとき、何か関心のあるものってありませんか?

 

・ときおりフリーズするパソコン

 

・ランチのとき大きめの財布を持って歩くOL

 

・やたらとパソコンのなかを覗き込んでくる上司

 

 

 仕事が終わって飲みにいきますよね。そのときも、ネタはいっぱいころがっています。とにかく、あなた自身が興味を持ったり、関心を示したりしたことを、箇条書きでいいので書いていけばいいだけなんです。

 

 

◇その5/ネタをおもしろく創作するコツ

 

 ネタはすぐに探せます。日常生活のなかで、興味や関心を持った事象を箇条書きでメモればいいだけですから、誰でもできますよね。

 

 大事なのは、このあとです。

 

 このネタをふくらませておもしろい話にしなければいけません。

 

 ここで、注意しなければいけないことがあります。それはホームランを狙わないことです。どうしても、人間ですから、特大のホームランを打ちたいと思いますよね。

 

 しかし、ホームランを狙うと、いつまでたっても完成しません。

 

 ホームランは長年練習して力をつけた者だけが打てるのです。精鋭の技と力が栄光のホームランとなって勇者に与えられます。

 

 ぜひとも、ホームランが打てるようになってほしい。

 

 そのためには、1,000本ノックを何度もやることです。ノックでいいんです。

 

 ノックを打つつもりで書いてみましょう。

 

 

 ネタからおもしろい話を創作するコツがあります。このコツをつかんでノックを打ってください。

 

 そのコツとは、すべらない話のパターンを知ることです。そのパターンにあてはめておもしろい話を創作していきます。

 

 私は、お笑いのパターン研究をしました。YouTubeの「すべらない話」を約12時間分たっぷりと見て、私がつきとめたお笑いのパターンは次の12通りです。「すべらない話」で語られている話は、だいたい、この12通りのパターンで語られています。

 

1、 怒っている姿が笑いになる。

 

2、 小さな勘違いが大きなズレになって笑いになる。

 

3、 小さな嘘が大きなトラブルへと発展して笑いになる。

 

4、 やってはいけないことをやってしまうと笑いになる。

 

5、 常識とは違う奇妙な行動をする人物がいると笑いになる。

 

6、 読者の予測を大きく外したとき笑いになる。

 

7、 単純に驚きが笑いになる。

 

8、 見られたら(聞かれたら)恥ずかしい(困る)ことがしっかりと見られていたとき笑いになる。

 

9、 悪い奴が落ちていく気持ちのよさが笑いになる。

 

10、 ドジな奴がドジなことをすると笑いになる。

 

11、 アメリカンジョークのような会話が笑いになる。

 

12、 言葉遊びのダジャレが笑いになる。

 

 もう少し詳しく小説の書き方を勉強してみたい人は、

 下記の本を読むことをおススメします。