小説のプロットづくりに関する5つのポイント

▼ポイント1/そもそもプロットとは?

 

 

▼ポイント1/そもそもプロットとは?

 

 プロットというのは、ストーリーの要約のことです。

 

 「ストーリーライン」ということもありますし、「小説の設計図」とか、単に「構成」という人もいます。

 

 実は、この要約ができない人が少なくありません。

 

 大学を卒業した、頭のいい人が、小説の要約ができないのです。なぜできないのか、私も文章を教えるうえで、要約できるようにするにはどう教えればいいのか、いろいろと考えたり、悩んだりしました。

 

 受講生らに、要約文を書いてもらうと、必要のない文章がダラダラ書いてあって、ちっとも要約になっていないのです。

 

 プロットの段階で何を書けばいいのか、不要なネタと、必要なネタが理解できていないんですね。

 

 これは、しばしばプロットとストーリーは違うということの議論になることです。

 

 

▼ポイント2/プロットは因果関係です!

▼ポイント2/プロットは因果関係です!

 

 プロットは因果関係ですが、ストーリーは単なる出来事です。変化に対して因果関係のない出来事はプロットには不要となります。

 

 そのへんの違いを、イギリスの作家 E・M・フォースターが1927年に発表した『小説の諸相』で、こんなふうに言っています。

 

「国王が亡くなった。そして王妃が亡くなった」はストーリーです。これは、国王の死とは無関係に王妃が続けて死去しています。そこに因果関係はありません。

 

それに対して、「国王が亡くなった。そして王妃は悲しみのあまり亡くなった」はプロットです。国王の死が原因で王妃が死去しています。ここには、因果関係がありますよね。

 

たとえば、シンデレラのプロットを考えてみましょう。いろいろな出来事がありますよね。

 

1) 幸せな夫婦のもとにシンデレラが生まれます。

 

2) 母親が亡くなります。

 

3) 父親が後妻をもらいます。その後妻には、2人の娘がいます。

 

4) 父親が亡くなります。

 

5) 継母と義理の姉たちが、シンデレラをいじめます。

 

6) 掃除、洗濯、料理など家事全般をシンデレラにやらせる。

 

7) シンデレラにはいっさいおしゃれをさせない。

 

8) お城で王子様の婚約者を選ぶための舞踏会が開かれます。

 

9) 姉たちは自分が婚約者になるのだと張り切ります。

 

10) シンデレラも舞踏会に行きたいと思いますが、貧しい身なりじゃ行けません。

 

11) 舞踏会の当日、魔法使いのお婆さんが登場してシンデレラに魔法をかけます。

 

12) 舞踏会で王子様はシンデレラと恋に落ちます。

 

13) 午前0時になると魔法がとけるのでシンデレラは舞踏会を抜け出します。

 

14) 王子はシンデレラを追いますが、そこにはガラスの靴があるだけでした。

 

13)王子が靴を手がかりにシンデレラを探します。

 

14)靴はシンデレラの意地悪な姉たちの足には合いません。

 

15)靴が足に合ったのは王国でシンデレラだけ。

 

16)王子様とシンデレラは幸せな結婚をします。

 

 これは、出来事を時系列に並べただけなので、ストーリーです。プロットではありません。

▼ポイント3/どこからはじめるかが重要

▼ポイント3/どこからはじめるかが重要

 

 シンデレラの物語のなかの16個の出来事を列挙してみました。これは、単に出来事を時系列で並べただけですから、ストーリーです。

 

 このストーリーを要約してみましょう。つまり、プロットにするのです。

 

 要約するうえで、不要な出来事は何でしょうか? 考えてみてください。

 

 小説を書くうえで、「どこからはじめるか」というのは、もっとも重要です。

 

 読者はすぐに飽きてしまいます。小説の書き出しから、読者の心をつかんでしまわないと、なかなか最後まで読んでくれません。

 

「中間あたりから、おもしろくなるから、最初は辛抱して読んでみて」

 と言い訳してもはじまらないのです。

 

 映画やドラマだったらいいんです。映像や、音楽や、役者たちの演技で、観衆の心を鷲づかみできますから。

 

小説は、映画の真似をしてはいけません。

 

 小説は文字しかないのです。挿絵をはさむこともありますが、基本的には文字で勝負しなければいけないのです。

 

 何度も言います。書き出しで、読者の心をつかまなければいけないのです!

 

 ですから、このストーリーのどこからはじめるかをじっくりと考えてみましょう。

 

 

▼ポイント4/入口と出口を考える

▼ポイント4/入口と出口を考える

 

 小説の書き出し部分を「入口」といいます。終わりの部分が「出口」です。

 

 この入口と出口を先に考えておきます。

 

 シンデレラの場合、生まれたときが「入口」で、王子様と幸せな結婚をするのが「出口」です。この入口と出口が、もっともシンプルなプロットです。

 

 さて、このプロットで、本当にいいんでしょうか?

 

 読者を飽きさせずに、最後まで読ませる小説が書けますか?

 

 とくに「入口」です。ストーリーでいうと、シンデレラが生まれるというのが、「入口」になっていますが、小説を書くときは、ここからはじめる必要はありません。

 

 「入口」で問題提起をすると、読者を惹きつけることができます。小説の書き出し部分で、問題を発生させるわけです。

 

 シンデレラの場合、どこからはじめるのが適切でしょうか?

 

 問題というと、「母親が死ぬ」「父親が死ぬ」「シンデレラがいじめられている」が出てきます。

 

 「母親が死ぬ」ことと、「父親が死ぬ」ことの間には何年か、長い時間の流れがあります。そして、父親が死んでからいじめられるところにも、長い時間の流れがあります。つまり、シーンがころころ変わることになります。

 

 最初は、読者も探り探り読んでいますので、コロコロと場面が変わるのはよくありません。コロコロ変わると感情移入もしづらいですからね。

 

 ですから、この場合、「シンデレラがいじめられている」シーンを入口にするのがいいと思われます。

 

 このシンデレラのストーリーを小説にするときのプロットはこうなります。

 

・入口/シンデレラがいじめられている

 

・出口/王子様と結婚して幸せになる

 

 両親が死ぬのは、シンデレラが継母と暮らしている理由ですから、因果関係がありますが、プロットでは不要です。

 

 ですから、シンデレラの物語を要約(プロットに)すると、こうなります。

 

「継母たちにシンデレラはいじめられていました。シンデレラが、いじめられる苦しさに耐えて前向きに生きてきたおかげで、人を愛することを学んでいたのです。だから、王子さまを愛し合い、結婚して幸せになりました」

 

 それ以外は不要です。幸せな結婚をすることの因果関係をプロットにもってきました。

 

 シンデレラの物語は、この要約文が幹となっていて、その幹に枝葉末節な出来事や人物がくっついて肉付けされています。

 

 こうやって、まずは、幹となるプロット(要約)を見つけることです。

小説を読んだら、こんなふうに、要約する練習をしてみてください。要約力を身につけたら、小説を書くうえでも大いに役立ちますよ。

 

▼ポイント5/定型のプロットに材料をあてはめる

▼ポイント5/定型のプロットに材料をあてはめる

 

 「入口」と「出口」というシンプルなプロットに、肉付けするコツをお話しします。「入口」と「出口」だけというシンプルなプロットに、もう少し因果関係をつけて、幹にしていきます。

 

「因果関係」というのは、「出口」から考えていきます。王子さまと幸せな結婚をするわけです。なぜ、幸せな結婚ができたのか? その因果関係を考えてみましょう。

 

 このとき、多くの人が大きな間違いを犯します。それは次の3つです。

 

 

・間違い1/自分の思いついた材料をあてはめて肉付けしてしまう。

 

 とにかく、自分の思いついた材料をどんどんあてはめてしまう人がいます。出来事や、事情や、秘密など、材料をどんどん盛り込んでいくことは大事なことなのですが、そこには整合性がなければいけません。統一感といってもいいでしょう。それがなければ、支離滅裂な小説になってしまいます。

 

 整合性や統一感を保つために、プロットが大事になるのです。幹となるプロットを作っていない段階で、枝葉末節な出来事や行動をどんどん入れて、「はい、プロットができました」と言っても、その小説はきっと失敗します。

 

 たとえば、シンデレラが舞踏会から逃げ出すとき、ガラスの靴を落としていきます。そして、それをもとに王子がシンデレラを国中から探し出します。この出来事はめちゃくちゃおもしろいです。しかし、これはプロットには不要です。

 

 ガラスの靴のエピソードがメインの話になってしまいます。大きな物語のスジは、これなんです。

 

「継母たちにシンデレラはいじめられていました。シンデレラが、いじめられる苦しさに耐えて前向きに生きてきたおかげで、人を愛することを学んでいたのです。だから、王子さまを愛し合い、結婚して幸せになりました」

 

 ただ、小説を書くとき、こうしたアイデアは重要ですので、ハコ書きにメモしておくといいでしょう。

 

 

 

・間違い2/理由づけばかりに気をとられてしまう。

 

 理由づけを考えておくことは重要です。

 

「どうして、王子様はシンデレラのことが好きになったのか?」

 

「どうして、シンデレラはいじめられるのか?」

 

「どうして、シンデレラは午前0時なったら、突然パーティから逃げ出したのか?」

 

「どうして、父や母は死んでしまったのか?」

 

 こうしたことをしっかりと考えておかなければいけません。

 

 しかし、そのことばかりに気を取られていると、物語があらぬ方向へ行ってしまいます。

 

 まずは、1本スジの通ったプロットが必要になるのです。そのプロットの幹に、枝葉をつけていくわけですから、幹を作る段階で、枝葉ばっかりたくさん作ってしまってはいけません。

 

 プロットは因果関係ですから、理由づけを考えるのは重要なことです。

 

 しかし、シンデレラのプロットの場合は、出口となる「幸せな結婚」が結論ですから、この理由づけ以外はメインのプロットでは不要ということなのです。

 

 

・間違い3/「時間の流れ」を無視してしまう。

 

 基本のプロットは、「入口」と「出口」です。

 「入口」では、問題提起をします。そして、「出口」で、その問題が解決しているわけです。これが基本の大きな幹となります。

 

 そして、途中のプロットを作っていくとき、「時間の流れ」を無視してしまう人が少なくありません。

 

 「入口」で、「シンデレラがいじめられていて、不幸な生活をしている」という問題を提起しているのに、次のシーンでは、「3年前の母親が亡くなる場面」へ行ったり、「1年前の父親の亡くなる場面」へ行ったりするのです。

 

 たしかに、シンデレラの両親が亡くなるという出来事は重要です。シンデレラがいじめえられている理由にもなりますし、因果関係を考えると、プロットに入れておかなければいけないような気がします。

 

 しかし、読者は、どんどん次へ行って欲しいのです。過去を振り返るのは、時間の流れが逆行します。

 

 「亡くなったお母さんの古いドレスを修繕すればまだ着られるわ」と入れておけば、母親が死んでいることは説明できます。

 

 継母に「シンデレラ! お前の父親が残した財産も、もう底をついてしまったんだよ!」と言わせれば、父親が死んだんだということがわかります。いちいち説明したり、回想シーンに戻る必要はありませんよね。

 

 出来事のなかから、どれが必要で、どれが不要なのかを考えていると、要約(プロット)は見つかりません。

 

 

 小説や映画の要約ができない人の落とし穴はここにあったのです。

 

 あなたは、最近みた映画を要約して人に説明できますか?

 

「最初に、こんなことが起きて、次に、こんなことが起きて、それから、こんなことになって、どんどん、こんなふうに展開して、最後は、こうなるのよ」

 

 おそらく、あなたは見てきた映画の記憶をたどって、覚えているだけの出来事を並べるでしょう。それでは、聞いている人は、いったいどんな話なのか、さっぱり理解できません。アウトです。

 

 要約するうえで、大事なのは、定型のプロットに、材料(出来事や行動など)をあてはめていくことなんです。出来事を並べて取捨選択するのではないのです。

 

 1)まず、主人公はどんな人なのか?

 

 2)入口として設定してある問題や事件はどんなことがあるのか?

 

 3)その問題を解決するために、主人公はどんな行動を取り、どんな出来事に遭遇するのか?

 

 4)転機となる出来事はどんなことが起きたのか?

 

 5)出口として、入口で提起された問題はどう解決するのか?

 

 この5点を話せば、明確に小説や映画の要点を話せます。

 そして、これがプロットです。ちなみに、定型のプロットは基本となるものが数種類あります。感動させる定型プロット、笑わせる定型プロットなど、無数にあります。

 小説を書く場合は、その定型のプロットに材料をあてこめばいいのです。

 

 シンデレラの「入口出口プロット」をふくらませて、「5つの展開プロット」にあてはめてみましょう。

 

1) 継母たちにいじめられるシンデレラ。苦しくても前向きに生きている。

2) 王子様の婚約者を決める舞踏会にシンデレラは出席できないという問題。

3) 母親のドレスを修繕するがダメ。継母にお願いするが、ますますキツイ仕事を言いつけられる。

4) 魔法使いのお婆さんが登場する。綺麗なドレスとカボチャの馬車。舞踏会に出席し、王子様と恋に落ちる。

5) 後日、王子様がシンデレラを見つけ出し、結婚して幸せになる。

 

 これが、シンデレラの幹となるプロットです。これに、いろいろと肉付けしていきます。