エッセイの提出場所です


文章スクール/基本コースで、

エッセイの書き方を講義いたしました。

 

そのとき、課題を出しました。

 

テーマは

「初恋」です。

 

書きあげた作品を下記の掲示板にアップしてください。

 

そのとき、

次の3点を忘れないようにしてください。

 

 

1)タイトル

 

2)ペンネーム

 

3)本名

 

 

【小説の手法を応用したエッセイの書き方】

 

 1)目的(願望のテクニック)を明確にする

2)感情の高ぶりを描く(心のつぶやき/心身の変化)

3)状況説明(5W1H)

4)実況中継でディティールを描く

5)感情曲線を上下させる

 

 

【小説風エッセイの構成テクニック】

 

1)まず決意する(What/何を決意したのか?)

・告白すると決意する

・初恋を感じたジャニーズのファンクラブに入ると決意する

・初恋の相手をデートに誘うと決意する

 

2)When(いつ)+Where(どこで)+Who(誰が)

を早い段階で書く

 

3)常にWhy(なぜ)を忘れないように。

性格が原因で起こったことや、心理描写などがあるので、それは全体で表現していく。

 

4)How(どのようにして)は、実況中継ゲームのように書く。

 

5)Howを描いているときに、感情を上下させる

 

6)最後は、決意がどうなったのかを読者に伝える

 

 

 

【文章例】

 

 僕は「今日こそは、やるぞ」と決めていた。決めた瞬間、ドキドキしはじめた。学校へ行くときも、足が地についていない感じがして、ともすると転倒しそうだった。実際、学校の階段を上るとき足がガクンとなって慌てて手すりにつかまるほどだった。

 何をやるって決めたのか? 恥ずかしくて口にできない。文章にするだけでドキドキする。そう。キス。ファーストキス!

 夏から秋に変わる頃だった。高校2年生。広島県福山市の山間部にある小さな進学校である。

僕と彼女は、付き合って3ヶ月。無事、映画デートもクリアし、そろそろ次のステージへ行く時期だった。次のステージって何だ? 健全な若い男女はデートの次に何をするべきなのか? 友人に教えてもらった。次は…。

 お昼休憩だった。彼女は、友人たちとお弁当を食べていた。

「あの、ちょっと話があるんだけど」

 僕はモジモジしながら言った。下を向いたままで、彼女の顔がまともに見られない。

「フミちゃん、どうしたの?」

 彼女は、弁当を終えて、廊下に出てきてくれた。

「ちょっと、外へ出よう」

 僕は、彼女を校庭の木陰のベンチへ誘った。とにかく、2人きりになる必要があった。誰かに2人の会話を聞かれたらと思うと恥ずかしくて死にそうだった。校庭でサッカーをしている連中や、近くの駐輪場にたむろしている奴、クスクス笑いながら歩いている女子らの視線が気になってしょうがなかった。みんがこっちを見ているように感じた。そして、何か僕に関する噂話をしているのではないかと思った。

「あ、あの2人、付き合ってるんだぞ」

「ヒューヒュー、お熱いこと」

「いやらしい」

 そんな声が聞こえそうだった。

秋の突風が彼女のスカートの裾を揺らした。

「どうしたの?」

 彼女はドギマギしている僕の目を覗き込んで言った。

「あ、あ、あの」

 次の言葉が出てこない。

「で、何の話があるの?」

「あの。クィーンの新しいアルバム買ったんだけど、聴きにこない?」

「へえ。聴きたい!」

「放課後に、僕んちへ…」

 『来ないか?』とはっきり言えなかった。恥ずかしいから。これだけ言うのでも、心臓が破裂しそうだった。

僕の家は学校から歩いて20分ほどの場所にあった。彼女はまだ一度も来たことはない。男の部屋に女子が1人で訪問するなんて、当時は尻軽な行為だと思われていた。もちろん、彼女は尻軽女ではない。断る可能性のほうが大きい。

「いいわよ。一緒に帰ろ。フミちゃんちにも、一度行ってみたかったから」

 え? と思った。小躍りしたい気分だった。家に来る、彼女が僕の家に来る。ということは、僕の部屋で2人きりになれるということだ。素晴らしい!

 学校のグラウンドを見おろしながら坂道を降りていく。彼女は、少し後ろを歩いている。僕は、少し速足になっていた。早く、学校の見えないところまで行きたかったのだ。

 田んぼのあぜ道を通り、さらに歩くと上り坂になる。その坂を上りきったところに僕の家があった。ここまで来れば、もう安心だ。高校生たちの姿はどこにもない。変な噂を立てられる心配もなかった。

 僕は彼女の手を握ろうと左手を伸ばした。映画デートしたとき、彼女のほうから手を握ってきたので、手を握るくらいなら許してくれるだろうと思った。僕は恐る恐る手を伸ばして、彼女の指に触れた。そのとき、

「フミちゃん、お帰りなさい」

 近所のおばさんの声がした。僕はとっさに手を引いた。野良仕事の帰りらしいおばさんが、好奇な目で僕たちを見ていた。ヤバイ! 彼女と歩いていたことをオカンに告げ口される。オカンもオトンも仕事で家にいない。家には誰もいないのだ。そんなところに、女の子を連れ込んで何をやっていたのかと詰問されるかもしれない。最悪の気分だった。

「あ、あ、あの…」

 僕は近所のおばちゃんに挨拶もできず、逃げるようにその場を去った。彼女も少し速足で歩いてくれた。

 僕の部屋でやっと僕たちは2人きりになった。しかし、キスをする勇気は僕にはなかった。喉がカラカラになり、コーラを何杯も飲んだ。クィーンのアルバム名は『オペラ座の夜』。「ボヘミアン・ラプソディ」や「マイ・ベスト・フレンド」などクィーンの代表曲が入っていて、彼女も喜んでくれた。彼女の横顔を眺めるのがやっとだった。

 僕らにはクィーンの曲を評論する力はなかった。メンバーの裏話も知らない。おまけに、僕の頭のなかは、いつキスをすればいいのか、キス、キス、キスと、キスの文字がぐるぐる回っていた。だから、出てくる会話は「この曲、いいね」くらいだった。会話がとぎれると、沈黙して、重い空気が流れた。沈黙するたびに、キスが遠のいていくようだった。

 思い切って、顔を近づけてみた。彼女との距離が10センチくらいになる。彼女はつぶらな目で僕を見つめる。その先を行く勇気が僕にはなかった。顔が火照ってしょうがなかった。キスを意識するたびに、心臓の鼓動が激しくなった。もうダメ、ダメ。逃げ出したい気持ちになっていた。

 外はすっかり暗くなっていた。『オペラ座の夜』は、もう5回ほど聴いた。そろそろ飽きてきて、他のアルバムを聴こうかどうしようか迷った。

「ピーター・フランプトンの二枚組アルバムがあるよ。それとも、チープ・トリック聴く?」

 喉が枯れ、震える声で僕は訊ねた。

「ごめん、もう、遅いから帰る」

 残念そうに彼女は言った。

 あ、あ、ヤバイ。このままだと、キスできないまま終わる。どうしよう、どうしよう。たしかに、もう8時を回っていた。彼女の家は、電車に乗って1時間ほどかかる。遅く帰ると叱られる。そんなことになったら申し訳ない。彼女を苦しめるわけにはいかなかった。かくなるうえは、少しでも彼女と一緒にいるために、僕は駅まで送ることにした。キスはまたの機会にするしかないだろう。あきらめる気持ちが支配的になった。

「じゃ、駅まで送っていくよ」

 駅への近道があった。その近道は地元民である僕は当然知っている。神社の境内を通りぬける道だった。

「近道があるんだよ」

 彼女と僕は神社の境内に入った。街灯もない、暗い場所があった。もしかして、ここはチャンスかも、と思った。突然、僕のなかで高揚感が押し寄せてきた。いまだ! 僕は、立ち止り、彼女の手を取った。そして、グイッと引き寄せる。

「あの、あの」

「え?」

 僕の勢いに彼女はビックリしたようだ。

「僕、僕、僕…」

 僕は、「僕」の次に何を言いたかったのだろうか。自分でもわからない。「僕は君のことが好き」と言いたかったのかもしれないが、そのときは、勢いよく唇から彼女に突進していったものだから、何も言えなかった。

 彼女の唇に到達すると同時に、僕は彼女の細い肩を抱きしめた。彼女は釣りあげられた魚のように、おとなしく僕の腕のなかで呼吸していた。僕の唇は彼女の前歯にぶつかり、少し切れたようだ。血液の味がした。

 僕のファーストキス。それはしょっぱい血の味だった。

 

(了)2,777w

 

 

 

 

 

作品集をキンドル出版しますので、よろしくお願いいたします。

 

 

コメント: 22
  • #22

    夏来 みか (土曜日, 16 8月 2014 21:49)

    タイトル:恋より重要なもの
    ペンネーム:夏来 みか
    本名:戸部 美香

     

     よし、せっかくだから、状況をすすめよう。と決心した。私は高校1年生。渋谷駅近い、校則のゆるい、私立大学の附属高校の生徒だった。季節は秋、文化祭が、近い時期だった。
     すすめたい状況。それは、4月から始まった初恋だ。中学が、女子校だったし、リアルの男子を「好き」と思ったのは、あれが初めて。好きと思った次は、どうすればいいか全くわからなかった。だから、ただただ、毎日見ているしか出来なくって、状況は自分中で、膠着状態だった。
     でも、見てるだけなんてやってても「ファーストキス」が体験できるわけでもないし「映画デート」ていう経験も出来ない。だから、何かしようと思った。
     そこで、高校生にして、もう既に、男性経験豊富な、元子ちゃんに相談した。元子ちゃんは、付属の小学校から持ち上がりできていた、目立つクラスメートだった。なぜか、高校から入学した、新参者の私と仲良くしてくれていた。
    「元子ちゃん、きっと気がついているって思うんだけど...」
    「どうしたの?いねこ、あらたまって」
    美香という美しい名前があるのに、元子ちゃんは私のことを『田舎の子みたいだからいねこ』といって、一人で「いねこ」と私を呼んでいた。
    「あのね、富岡くんの事が好きなんだけど」
    「うん、見ていればわかるよ。いねこはいっつも富岡のこと見てるもんね」
    「でしょ。どうすればいいかな?」
    「どうすればって。どうしたいの」
    「富岡君に、私のこと好きって言ってもらいたいの」
    「え?自分が『好き』って言うんじゃなくって?」
    「だって、男の子から言ってもらった方が嬉しいじゃん」
    「そりゃそうだけど...富岡は、いねこの事、好きだと思う?」
    「わからないけど...でも、なんとなく好きでいてくれるような気がする。何でかって言うと、富岡君、前に『好きな人のイニシャルはT』って言ってたし」
    「え~それだけ?私から見たら、富岡君がいねこの事、好きだとは思えないけどな」
    「お願い。元子ちゃん。私が富岡君のこと、好きって、代わりに言って。でね、『つきあってあげなよ~』ってお願いして。一生のお願い」
    「う~ん。自分で言った方がいいと思うけど」
    「だって...自分で言えるくらいなら、もうとっくにやってるもん。お願い」
    「わかった、言ってみるよ」

     そして、文化祭が明日という前夜祭の夕方。クラスの催し物の展示の準備も終わり、さて、これからどうやって放課後を過ごすかな?という時間だった。教室で、家に帰るでも、帰らないでもなく、うだうだしていた。元子ちゃんと、センター街をぶらついてから帰ろうかな?と思って、元子ちゃんの方をみると。元子ちゃんは、富岡君の膝の上に腰掛けていた。そして、二人は恋人同士みたいに、べたべたし始めたのだった。私は二人に近づいていった。
    「元子ちゃん」と声をかけると、元子ちゃんは、
    「私たち、昨日からつきあうことにしたの」と言った。
    あまりの事に、私は頭の中が、真っ白になってしまって、その日は家に一人で帰った。

     次の日、文化祭。クラスの催し物の当番があったり、富岡君なんかより、よっぽどかっこいい人たちのバンドをみたりして、昨日あったことは、なるべく思い出さないように、ふれないようにして過ごした。ふとした時に富岡君と元子ちゃんがべたべたしているのが目に入った。でも、そんなの全く気にならないように装った。

     私は、自分の友達が好きって言った人と、好きでもないのに、つきあう出しちゃう人は信じられない。と思った。けれども、元子ちゃんは、学年で有名人の部類だったし、「元子ちゃんが仲良くしている子」っていう立場も1学年10クラスもある幼稚園から大学まで一環の、マンモス高校のなかで、高校から入学した新参者としては重要だった。だから、なんで元子ちゃんと富岡君がつきあうことになったのか、元子ちゃんにあらためて問いただして気まずくなるようなことはしなかった。
     だから、自分が富岡君を好きだったことも、なかったことにした。なぜならば、私が富岡君の事を好きになったのは「僕の好きな人は名前にTがつく」から始まった、と思ってて。そもそも、私は彼の事、好きじゃなかったのかも。と思ったからだった。
     それに、世界は広いから、富岡くんにこだわらなくったって、素敵な人は沢山いる。とも思った。
     そんな風に、私の初恋はあっけなく、半年で終わった。

  • #21

    高山雄大(髙荷一良) (金曜日, 15 8月 2014 18:35)

    1)タイトル:「恋に破れて男は育つ」
    2)ペンネーム:高山雄大
    3)本名:髙荷一良

    予備校に入校して間もなく、私はとてつもなくすらっとして瞳のぱっちりした女の子に恋をした。名前はMさんという。桜はとうに散り緑が濃くなった頃だ。とてつもなくというのは大げさかも知れないが、身長は170cmを超えたモデル体型だ。かといって派手さはなく、黒板を見つめる瞳にはまっすぐな心根が透けて見える。

    「今日こそは声をかけるんだろうな」
    予備校の席についた途端、ポンと後ろから右肩をたたかれた。振り向くといつの間に来たのか友人の野口が口をあけて笑っている。
    「うん、おぉ、やるよ…」
    私は強く言えず、曖昧な決意で応じるしかなかった。

     数日前、人影もまばらな池袋の公園で初めて野口に胸の内を明かした。子供たちのにぎやかな声が響くのには間がある夏の昼下がり。野口とて恋人がいるわけでもないのに、こういう時になると恋愛の先生かのようにふるまう。
    「声をかけてみるんだよ」
    それしかないと野口はいう。野口は高校の同級生。私が硬派を気取っていつの間にか女の子と話すのが大の苦手となったいきさつをよく知っている。極端なあがり症ということもだ。
     
     授業はすでに始まっている。人気のある古典の授業なので満席に近い。講師ののびやかな声が室内に響き渡っている。だが、私の耳には届いてこない。

     声をかけた途端、すぐに顔が赤くなり、言葉はどもって出てこなくなる。こんな調子で告白などできるのか…。こんな苦い思い出がある。
     高3の1月だ。私がインフルエンザにかかって一週間休んだ時、授業のノートをとってくれた女の子がいた。元気になって学校に行って初めてその事実を知った時、私はとても嬉しくなってお礼を言おうとした。 ところが、いざその子の前に立った時、じっと見つめられたと感じた瞬間、顔が赤くなり、口は開いたのだが次の「あ」が出てこない。汗が吹き出てきた。女の子はにっこり微笑んでいる。決して美形と言うタイプではないのだがどこか愛嬌のある人だった。
    「あ、あ…」
    「病気なおってよかったね。気にしなくていいよ。ただ写しただけだからさ。中身に間違いあったら、メンゴということで」
    先に言われてしまい、とうとう言葉は尻切れ、お辞儀だけのやり取りとなってしまった。
     その日以来、私はその子にどんな言葉をかけてよいのかわからなくなった。授業中や放課後、顔を合わせると微笑んだりするのだが、声をかける糸口すら見つからない。とうとう「ありがとう」の言葉をかけられないまま私は卒業した。
     
     そんな思いにとらわれているうちに古典の授業が終了となった。

     「おい、行くぞ。今日はオレもついていくからな」
    今日に限って野口がやけにしつこい。お前にできるのか、できるわけないよ、そんなニュアンスが言葉に感じられる。
     教科書やノートをかばんに詰め込み出口に向かう。教室は2階なので一気に階段を駆け下り外にでる。夏期講習の真っ最中なので浪人生の数はいつもより多い感じだ。車の数は少なく、あちこちで数人のグループがいくつも輪をつくっている。校舎を背にして左に向かうと野口に打ち明けた公園、右が池袋駅。
    「そろそろ降りてきてもいい頃だ」
    野口がつぶやく。私は汗が浮かんでは額から流れていく。時折背中からも。ハンカチを取り出そうとした時、野口が脇腹をつつきすかさず歩き出す。

     まぶしい日差しを気にする様子はなく静かな足取りで彼女が池袋駅に向かう。慌てて追いかける私。足は動くのだが決意という心持ちは校舎の前に置いてきた感じだ。行きかう人は皆明るい顔をしているように見えた。私だけを除いて。
    「やはりだめだ。言えない」
    「失敗するに決まっている。第一喋ったことないんだから」
    「いきなり告白なんて。普通じゃない」
    口からついて出てくる言葉は悲観的な言葉ばかり。

     道を挟んで飲食店が多くなってきた。人通りも行きかう車も増えてきた。とりとめのない思いが浮かんでは消え、そうこうしているうちにもう地下に向かう階段だ。

     「おい、どこで言うつもりだ」
    野口が言う。
    「どこでって。そんなの知るか」
    「お前、とにかく言うんだ。言わなきゃだめだ。言えば次が始まるんだ」
    「今日じゃなくてもいいよ。機会はまたあるよ」
    「だめだ、今日だ」
    「何でそんなにけしかける」
    「いいからつべこべ言わずやってみろよ。それが大事なんだよ」
    私と野口は足を速めて彼女の後ろについた。

     人は風景となって目に飛び込んでくる。飛び込んできては去っていく。
     もうすぐ改札だ。野口が私の背中をたたく。何度もたたく。音がするほどだ。
     しのびよるその音に気付いたのだろう、突然彼女が振り向いた。憧れの人は今目の前にいる。
     もう話すしかない。
    「あの~。オレ、…実は同じ予備校で…。もしよかったらお茶しませんか?」
    沈黙がおそう。戸惑う彼女。不思議そうにこちらに目を向ける瞳はやはり素敵だ。私は次の言葉を発することもできずただ立ち尽くしていた。
     気が付いた時には、彼女は改札口の向こう側に消えていた。

     振り向くと野口がびっくりしたような顔をして立っている。
    「おい勇気あるな。ダメもとだったんだからOKだ。あれでうまく言ったらおれが困る。さぁメシ行こう」

     私は、失敗した。大失敗だ。だが、確かな手ごたえが身体の芯から湧き起る感情に酔いしれていた。そして、あの時、言えなかった「ありがとう」の言葉が今は言えるという確信も芽生えていたのである。
     



  • #20

    広告漫画家・似顔絵師さや☆えんどう (木曜日, 14 8月 2014 15:42)

    1)タイトル:「下敷きを知った時期」

    2)ペンネーム:さや☆えんどう

    3)本名:小塩 幸子

     今日こそは憧れのキャラクター「ハーロック」のグッズを探してやる。

     ハーロックは、古すぎてその辺ではグッズも見つからない、私の幼少期の初恋のキャラクターだ。中学生の私は、少ないお小遣いを握りしめて、横浜駅東口のアニメグッズショップ、アニメイトへと来ていた。

     しばらく前、場所のわかりづらいアニメイトヘ友達に案内してもらって来た時は、ハーロックのグッズなど見つからなかった。仕方が無い、10年以上前の古いアニメなのだし。店内をつぶさに見て探したかったが、一緒に来てくれた友人を待たせるのは申し訳なく、その日はそのまま何も買わずに帰った。でももう場所は覚えたし、今度は気兼ねせず一人で来られるんだ。

     再び訪れた私は、店内の商品を、丁寧に奥のほうのものまで見て行った。マグネットにメモ帳、セル画にポスター、店内所狭しと並ぶ沢山のグッズの多くは、最近放映された人気アニメのものだ。そちらの方がファンが多いので売れるからだろう。作品ごとにまとめられていればいいのに、そうくっきり分けられないのか、色んな作品が交じり合い、思いもよらぬグッズが思いもよらぬところで発見される、カオスである。
    この中からお目当てのものを探すには、まさに一つひとつ確認していくしかなかった。何時間もかかった。ほとんど営業妨害である。

     くたびれ果ててきた頃、努力が天に通じたのか、沢山ある中に一枚だけ見つけた。
    ハーロックの下敷きだ!!

     見間違いでないか何度も見てしまったが、間違いない。私は早速それをにぎりしめてレジへと向った。

     混んできたのかレジは長蛇の列だった。仕方がないので並んでいたら、オタク同士の気楽さか、後ろに並んでいた女の子と会話がはじまってしまった。
    「ねえ何買うの?みせて?」
    私は、握り締めていたハーロックの下敷きを見せた、相手は一瞬間を置いて、
    「…シブイね…」
    と一言言って黙ってしまった。

     わ、私の趣味はやはり変だったろうか…今風のアニメが好きな人だと、やはり古いアニメの画風が妙に見えるんだろうか…ぐるぐる考えていたら、なけなしの自信が余計無くなってきた。

     そうしているうちにレジの番が来た。
     もしかしてレジの人もこの下敷きを見て変だと思わないだろうか。周りの下敷きはみんな、最近のアニメばかりだったのに、これ一枚だけ古くて売れ残りの雰囲気をかもしだしていた。こんなのあったっけと、変な反応を返されないだろうか。そう思ったら、まるでエロ本でも買うかのごとくにぎこちない動きになり、裏返して下敷きを差し出した。

     店員はあっけなく下敷きを表にし、チラッと一瞥しただけで、レジを打った。支払いは何事も無く終わり、薄い紙袋を握り締めて、私は駅前からバスに乗った。

     帰り道こっそり袋のテープを開けて、下敷きを出さない状態のまま、中を何度も確認した。古すぎてレアになった憧れのキャラクターは、夢ではなくちゃんとそこにいた。

  • #19

    石橋 弘至 (火曜日, 12 8月 2014 03:24)

    タイトル「ふりだしへもどる」
    ペンネーム:猫田にゃーお

     もう自分の好みなんか信じない。とにかく疲れた。本日、私は離婚届けを出した。
     人生は選択の連続だ。今日は休もう、今日はがんばろう。こうしたい、ああしたい。これが好き、あれが嫌い…。1日1日1分1秒ごとに何かを選択して人生を歩んでいる。
     30歳のときに結婚した。それは今思えば30年間選択し続けて辿り着いたひとつのゴールだった。選択というのは非常に自分の好き嫌いに左右される。特に異性に対しては嫌いな人を自分で選ぶはずはないのだから当然といえば当然だ。奥さんは綺麗な子ではあるけれど、どうにもエキセントリックだ。そのエキセントリックなところに魅かれた。しかし、その魅かれた部分が仇となった。
     数か月前の話だが、私はたまたま初恋の親戚という人(女性)に出会った。
     私の初恋は小学6年生。名前は路子ちゃん。目が大きくて、今でいえば柴﨑コウのような目が印象的で、いつの間にか好きになっていた。特にしゃべることもなく、その子の姿を見つけるだけでうれしかった。その初恋は中学1年まで続いた。
     中学ではクラスは別々だった。共通の友達がはやしたて、知らぬ間に2人は付き合っていることになった。特に二人で会って話したりすることもなく、そうこうしているうちに、知らぬ間に2人は別れたことになり、彼女には新しい彼氏ができた。それも私と彼女をくっつけた共通の友達が私に教えてくれた。彼女は女性の間では不人気だった。私の初恋はこんな感じで終わった。
     路子ちゃんの親戚とは東京で仕事の関連で出会った。同郷の人同士がよくやるように、と非常にローカルな話しで盛り上がった。
    「僕の家は〇〇中学校の道を挟んだここ!」
    「私の親戚は〇〇中学校の正門前の〇〇食堂!」
    「えっ!?もしかして〇〇路子ちゃん?」
    「そうでーす」
    「僕、同級生、同級生!」
    なんだか久しぶりに興奮してきた。何せ私の初恋の人だ。
    「路子ちゃんは今何してるの?」
    「少し前に離婚したの。でも性格悪すぎるからねぇ、全然かわいそうとも思わないんだ。」
    絶句…。初めてあった人に自分の親戚が大嫌いっていうか?普通。当時の彼女の姿が記憶が頭の中を駆け巡った。
     まんざら嘘ではないなと思った。だって彼女は中学の時も同性には嫌われていたから。
     「路子ちゃんが私の初恋の人」だなんてとてもじゃないが、ふざけてでも言えなかった。
     親戚さんの名前も忘れてしまった。
     私の初恋の人は性格が悪いのか。私は小学生の頃から性格が悪い女が好きなんだ。小学生のときから布石があったのだ。途中の道のりもそうではないか。
     今回のゴール、なぜ今の奥さんに辿りついたのかよくわかった。全然彼女は悪くないのだ。
     私は離婚を決意した。また一からやり直しだ。

  • #18

    さとうあやこ (日曜日, 10 8月 2014 20:06)

    タイトル「ホワイトデー」
    ペンネーム:秋カスミ
    本名:佐藤亜矢子

    この日が勝負と決めていた。10年とちょっとの人生で、学校のテストと運動会の徒競走以外、勝負ごとは経験がなかった。
    今日はホワイトデー。チョコレートをもらった男子が女子に何らかのアクションを起こす日。1ヶ月前のバレンタインデーでふり絞った勇気に対する審判を仰ぐこの日に、恋の勝敗が決まるのだ(と思っていた)。

    卒業を控えた小学校6年生の2月。たかしくんは学校では児童会長で、地元のサッカークラブではキャプテンをつとめる目立った存在だった。
    勉強はさておき、超がつくほどスポーツ万能。巧みなおしゃべりでクラスのムードメーカー。何よりたかしくんはジャージ姿が魅力的だった。私はそんな彼を春ころから気になり始めていたみたいだ。
    遠足の班決め、席替え、そんな時は私の運の試しどきだった。
    班が同じだったら、遠足の前日は眠れなくなるほど舞い上がり、席替えで隣になれたら天国。しかし、現実はそんなに運を持っていなかったらしく、班はなかなか一緒になれず、席替えで隣になることもなかった。ただ、秋の終わり頃から話す機会も多くなり、私にちょっかいを出してくるようになり、私は学校が楽しくて仕方がなかった。
    そして1ヶ月まえ、無事にチョコレートを手渡した。

    ホワイトデー当日、その日は今にも雪が降りそうなどんよりとした空だった。
    呼び出されるかもしれないなんて期待をして、家にすぐ帰らず、ちょっと学校でふらふらしていた方がいいのか迷っていたら、友達のしーちゃんに一緒に帰ろうと声をかけられた。「うん・・」と少し渋っていると「どうしたの?気になる」と私の顔を覗き込む。私がもたついていると「一緒に帰らないの?」と言われ慌ててランドセルを背負った。

    しーちゃんと別れ、家の玄関前でまたまわりをちらり。うちに来ているかもしれないという期待がそうさせた。塾までの時間を一人で過ごす。中学生の姉は部活で遅いし、パートにでている母も夕方まで戻らない。テレビのチャンネルを次々にかえては落ち着かない。お菓子をポリポリ食べ始めた。そのときだった。
    玄関のチャイムがなる。慌てて飛び出す。
    そこに立っていたのは赤いジャージ姿のたかしくん。ひょろっとした手の先に小さな包み。
    「これ」とぶっきらぼうに言って差し出すと、くるっと向きを変えて走り去った。
    それから5秒くらい立ちんぼになって我に返る。
    「もらっちゃったぁー!わざわざうちにきたよ。やったね」
    軽く小躍りして気づく。たかしくん、手に紙袋持ってたよね。あれ何?このあと誰のうちにいくの?嬉しさのあまりライバルの子たちのことをうっかり忘れていた。
    そりゃそうよね、サッカークラブのキャプテンだもの。

    その1時間後は、週1で通っている英語塾。クラスは違うけど、たかしくんも同じ塾に通っている。
    そのとき何気ない会話が飛び込む。「たかしくん」「ホワイトデー」「お返しもらう・・」気になるワード。つなぎあわせると、ホワイトデーのお返しをたかしくんからもらい、それがキャンディだったという女子同士の会話。
    「キャンディ・・・」
    あの子たちはキャンディをもらったのか。

    私は、私は、、、。さっきあの小さい包みをあけたら小さな手鏡が入っていた。
    キャンディより上だよね。マジ、私って本命なのかしら。

    初めてのホワイトデー。その時の手鏡は私の宝物になった。私にはどうしてキャンディではなく手鏡だったのか、手鏡に何の意味があるのか。そこを探ることは一切せず、ただただ宝物にした。その日雪は降りそうで降らなかった。

  • #17

    Yanagi(Takayanagi) (日曜日, 10 8月 2014 14:56)

    『オンナになった夏』

     「かよちゃーん 僕が迎えにいくから、
    待っててねー」
     突然大きな声がしたので、びっくりして
    後ろを振り返と、お庭の向こうのプール 
    の中で、ぴょんぴょん飛びながら大きな
    声で叫んでいる男の子がいた。

     ゆり組は今年初めてのプールの時間
    のようで、プールキャップを被った男の
    子と女の子が、両岸に分かれて一列に
    並んで立っていた。
     向こうに見えるプールは、日の光を浴
    びた水面がキラキラ輝き、プールサイド
    の木々ががさらさら風に揺れていて、な
    んだか気持よさそうだった。

     このゲームをすると水が恐くなくなり
    ます。いい?もう一回言うからちゃんと
    聞いてね。最初に男の子が向こうにいる
    女の子をひとり迎えにいきます。それか
    ら二人でペアになって今度はこっちに戻 
    ってきてください、と先生が大きな声で
    話すと、「ヒデく~ん、待ってるからあ」
    と背の高い女の子が大きく手を振った。
      
     「ピーッ」
    先生が吹いた笛の音とともに、一斉に向
    こう岸の男の子達がこっち岸の女の子達
    めがけて駆けだした。「早く!早く~!」
    カヨちゃんと呼ばれた背の高い女の子が
    何度も手招きする。その手の先には、先
    ほど大声で叫んでいたヒデ君が、苦しそ
    しそうな顔をして必死に水を掻いている。
    水の恐さを感じてる余裕なんてなさそう
    で、彼は、水を飲んで咳こんでも前進し
    続け、どうにかカヨちゃんの元に辿りつ
    くと、彼女の手を掴み、自分よりずっと
    大きな彼女を引っ張りながら、今来た道
    を引き返した。

     私はトイレ帰りの廊下で立ち止まった
    まま、じーっとプールの二人を見ていた。
     あの二人は好き合っているんだ・・。
    5歳の私には、好きってことがどんな気
    持ちなのかまだわからなかったけど、好
    き合っているってことは、その時なぜだ
    かわかった。

     「ピ―ッ」
    原田先生の笛の音で、ばら組の男の子
    達が、いっせいにバシャバシャと水しぶ
    きを上げながら、こっちに向かってくる。
    ヒデ君とカヨちゃんの初恋を目撃した私
    は、ドキドキしながら待っていた。誰が
    私を迎えに来てくれるんだろう?
     
     松本君がこっちに向かって来てるよう
    な気がする。ドキドキが早くなる。女の
    子達は、がんばれぇだのこっちー!だの
    飛んだり跳ねたりの大はしゃぎだし、男
    の子達が近づくにつれ波がやってくるし
    で、水が大きく揺れ始めた。私は水に流
    されないように、一生懸命踏ん張って迎
    えを待っていた。

     松本君が目の前にやってきた。ドクン
    ドクンと大きく胸がうちはじめたが、松
    本君が私の前を横切り、隣にいたリカち
    ゃんの手を掴んだ途端、急ブレーキをか
    けたみたいに胸の鼓動は止まった。
     むっちゃんのはしゃいだ声が聞こえる。
    横を見ると章二君が迎えにきていた。ユ
    リちゃんが、突然前に飛び出して、光司
    君に走り寄ると、手をつかんでひきずる
    ように連れていく。
     プールの揺れが小さくなってきたので、
    胸騒ぎがして周りを見渡すと、こっち岸の
    女の子がずいぶん少なくなっていた。

     原田先生が、私を含めた女の子3人の
    手を掴んで、一生懸命、向こう岸に向か     
    って駆けていく。先生はドンドンみんな
    を追いぬいていく。水に浮いたまま、す
    ごいスピードでプールの中を引っ張られ
    て行くのは気持ち良かったけど、私の気
    持ちは沈んでいた。
     誰も私を迎えにきてくれなかった。ば
    ら組は女の子の方が3人多くて、私は取
    り残されたのだ。

     この日から、ちっちゃな私は、まだ見
    ぬ初恋に焦がれて、いろんな男の子を追
    いかけ始めた。
      
     女は生まれた時からオンナである。
    とよく聞くが、私の中のそのオンナが小
    さく芽吹いたのは、あの夏だった。

     追いかけまわした男の子との初恋も、 
    二度めの恋も三度目だって、恋は、私の
    中ですくすくと育つそのオンナのシタゴ
    コロでしかなかった。
     私を迎えにきて。こっちを見て。私に
    触れて、そして私を満たして。
     成長したそのオンナは、もう恋なんか
    じゃ物足りなくなっている。







  • #16

    関根 雅史 (筆名:石賀 次樹)  (日曜日, 10 8月 2014 09:54)


    『私の初恋と宝物』

     これは昭和四十五年の四月、私が小学校の三年生のときの話だ。私は焦っていた。クラス替えで同じ組になった上條法子に一目ぼれして、誰よりも先にその気持ちを彼女に伝えたいと思っていたからだ。新学年早々、すでに法子はクラスの男子の間ではマドンナ的存在になっていた。サラサラの黒髪が特徴のとにかく可愛い子だった。
     それで私は、近所に住んでいた従兄で六年生の竜也くんに相談した。その頃の私にとって彼は自分よりずっと大人で、とても頼りになる兄貴分だった。
    「竜ちゃん、どうすればうまくいくかなあ」
    「そりゃあプレゼントをするに限るぜ、真一」
    「プレゼント?」
    「ああ。女の子はプレゼントに弱いんだよ」
    「どんなものをあげればいいんだろう?」
    「おまえがいちばん大切にしているものをやるんだ」
    「いちばん大切なもの?」
    「そうだ。いいか、ケチるんじゃないぞ」
     家に帰ると私はすぐに自分の部屋に行って、机の引き出しの中と押し入れのダンボール箱に入っているものを部屋の真ん中に全部出して、自分のいちばん大切なものを選んだ。私が子供の頃、遊びで流行っていたのはメンコである。特にプロ野球選手の写真がついたメンコが人気だった。そして私のいちばんの宝物は、巨人の長嶋と王が二人で並んで写っているメンコ。当時、一人だけで写っているメンコは結構出回っていた。しかし、一緒に写っているのは超レアもので、近所やクラスメイトの間でも持っているのは私だけだった。さすがにこれを手放すのは勇気が必要だったが、竜也の「いいか、ケチるんじゃないぞ」という言葉が頭をよぎり、私は決意した。――明日これを持って行って、法子に好きだと言うぞ。
     
     放課後、私は家に帰る途中の法子の後を、気づかれないようについて行った。別の二人の女の子が一緒にいて、それが邪魔だった。しばらく行くとそのうちの一人が「サヨナラ」と言って路地を曲がった。そして少し先の二股の道で、もう一人の子も違う方へ行き、法子は一人になった。
     私はチャンスだと思ったが、なかなか勇気が出ない。あと五分も歩けば彼女は家に着いてしまう。私はありったけの勇気を振り絞って彼女に近づき、「上條!」と声をかけた。すると、そんなに驚かなくてもいいだうというくらいのオーバーなリアクションで彼女は振り返った。そしていかにも怪訝そうな顔をして、「な、何?」と言った。
     彼女を呼び止めたまではいいが、私はどう切り出したらいいかわからなかった。それでいきなり私は、
    「これ、お前にやる」と私は言った。
    「なに、それ?」
    「長嶋と王のメンコ」
    「――いらない」
    「えっ! あの巨人の長嶋と王のメンコだよ」
    「――そんなの欲しくない」
     法子はそういうとくるりと振り返り、走って行ってしまった。彼女の肩までくらいある髪が私の方になびいているのが見えた。私はしばらくの間、呆然としてその場に立ち尽くしていた。

     初恋というテーマで若き日の自分を思い返して、いろいろな場面が頭に浮かんできた。その中でこの話を自分の初恋だと特定した理由は、これが五十歳を過ぎた今でも引きずるところがある出来事だったからだ。それは何かというと、私はいまだにプレゼントという行為が苦手なことと、風になびく女性の髪を見ると切ない気持ちになることだ。

  • #15

    小幡有佐 (水曜日, 06 8月 2014 13:02)

    タイトル 『プレゼント』
    ペンネーム  merlot
    本名     小幡有佐

     ついに、この日がやってきた。
    部活と試験疲れが抜けきれず、しかし前の日は緊張をすることもなく、ぐっすりと寝た。朝の目覚めも良い。
     行ってきます。
     家を出てからしばらくして、傘とハンカチを忘れてしまった事に気づく。空を見上げると、グレー色の空には雲が立ちこめ、午後四時だと言うのにもう夜のような暗さだ。コウモリが飛んでくる。今にも雨が降り出しそうだ。でも大事なものは持って来た。戻るの面倒だし、いいや。これを、とにかく渡そう。
     今日はクリスマス!初めて彼氏と過ごすのだ。そして、初めてプレゼントを交換し合うことになっていた。
     私は、自分の下宿のある荻窪駅から水道橋駅へと急いだ。中央線、総武線を乗り継いで水道橋駅に到着、神保町へと歩き出した。彼は神保町にある小さなビストロでアルバイトをしていた。
     大学二年。私と一つ上の学年の彼とは、今年の夏祭りをきっかけにつきあい始めたばかり。クリスマスは、彼のアルバイトが終わった後に、ビストロで食事をしようと言う事になっていた。
     気に入ってもらえるか?私のプレゼントは、初めて編んだマフラー。まだ少しドキドキしていた。だめだー。部活の試合と朝夕の練習で忙しい毎日の中、移動時間に編み針を動かし、水道橋駅のホームで毎日数十分ずつ編んだそれは、おせじにも綺麗とは言いがたく、編み目も粗かった。しかし、オフホワイトの色と柔らかい手触り、自分の匂いがしみ込んだと感じるほどに愛着もわいていた。
     彼の働くビストロのあるビルに着いた。バッグの中を再度確認してから、エレベーターに乗る。三階に着いた。ドアが開く。
    「いらっしゃいませ」
     いつもの、オーナーの温かい声と笑顔が迎えてくれる。もう何度も足を運んでいるため、オーナーはじめ店のスタッフとは顔見知りだ。 
     厨房の方から彼の声がする。
    「今、仕込みを手伝っているから席で待ってて!」
     クリスマスと言えば、飲食店にとって一番の繁忙期だ。カウンターと厨房の入り口が見える暖炉に近い席に案内され、野菜スティックをつまみながら待つ。
     午後六時を回り、サティの音楽が静かに流れ、次々にお客がやってくる。団体客も多い。
    「一段落したら、今日は早めに開放するからね」
     突然、オーナーがやってきて言った。
    「全然構わないです。でも、ありがとうございます!」
     いつもは深夜までアルバイトをしている彼。初めてのクリスマスの今日は早めにということらしい。私はバッグの中を確認し、書いた手紙をもう一度見直していた。
    “マフラー、気に入ってくれると良いな。これからもっと寒くなるので、お正月の帰省の時にでも良かったら使って下さい”
     そんな言葉を眺めながら、思い返していた。小学生の頃から、いつか本当に好きな人が出来たら初めてのプレゼントはマフラーにしたいと考えていた。北海道で生まれ育ち、十歳で静岡に転校した私には、まだマフラーは必需品という思いが染み付いていた。そして、そんな特別なものを誰かの為に編んでみたいと漠然と考えていた。
     ああ、だめだー。座って本を読んだりしていたけれど、あんな出来ではだめだろう、喜んでくれないのでは、という気持ち。ここにじっとしていられそうにない。
     オーナーに話し、しばし外出する。少し離れたスポーツ専門店に向かう。学生やカップルがたくさんいる。いつも通りかかっていたそこは、ディスプレイが変わっていた。ステキな最新ウェアやサングラスなどのアクセサリーが展示されている。スキーが趣味である彼。プレゼント、スキー用品の方が良かったかな。
     そんな思いを抱えながら、お店に戻り、彼の仕事が終わるのを、ひたすら待つ。
     八時をまわった。ようやく彼が厨房から出て来た。
    「今日はもう帰っていいって!」
     え、と思った。一緒に食事をした後、また仕事に戻る事になっていたからだ。やった、と思った。正直のところ、あのマフラーを人前に出して渡すのが恥ずかしかったからだ。
     神保町駅へ。都営三田線に乗り、彼の下宿へ急ぐ。玄関先に着いた。
    「先に家に入るから、ちょっと待って」
     そう言って、部屋に入って行く。私は玄関先で待つ。時計を見ると九時になっている。数分経った後、彼がひょっこりドアを開けて顔を出した。
    「もういいよ」
     中に入ると暗い。でも部屋の奥に何かガラスのようなものが光っている。よく見ると、それは大きな絵だった。プラスチックの額が光っているのだと分かった。
    「メリークリスマス。笹倉徹平の絵だよ。中にMerry Christmasって書いてあるんだ」
     電気がついた。絵の中にはたくさんの色とりどりの花が入った花瓶、テーブル。その上に置いてある封筒に、確かにMerry Christmasと書いてある。
    「小学生のときから、初めてつきあった彼女への最初のプレゼントは絵にしたいって決めてたんだ。ちょっと渋すぎるって思われないか心配だったけど」
    「え、ほんとに?」
     大きい声を出してしまった。絵。このような大きなものを今までもらったことがない。その絵は縦一メートル、横に一メートル半はある。
    「とても嬉しい。ありがとう!私も同じ。私も小学生のときから決めていたの。少し恥ずかしいけれど、これ、渋すぎるって思われないか心配だった。初めて編んだよ」
     そう言って、マフラーを差し出していた。気がつくと、彼はそれをすぐさま首に巻いていた。気に入ってくれているかは、彼の顔を見れば分かった。彼の丸い顔がますます丸く見えた。
     二人で小さい頃からの夢の話をした。時間があっという間に過ぎ、十二時になった。外は雨が降り始め、寒さに初めて気づき、数時間もの間、暖房を入れていなかった事に気づく。外は、真冬が近づいていた。
     私の初めての彼とのクリスマス。それは私が初めて本当に人を好きになったことを確認した日。そして。本当に好きになった人と心を通わせる事が出来たことを確認できた日。

  • #14

    おかだなつこ (水曜日, 06 8月 2014 12:48)

    タイトル:最初で最後の通学路
    ペンネーム:おかだなつこ
    本名:岡田那津子

    階段を駆け下りていくと、いつもの大きな背中が見えた。それだけでドキドキする。ちょっとだけ右肩上がりの幅広い背中。そういえば、左肩が下がってるのは、剣道をはじめてから毎日防具を背負うから、どうしても左肩が下がるんだよ、お前と一緒だなって笑ってたっけ。

    「せんせ!お待たせ!」
    「お、行くか。」

    振り向いた先生の笑顔。やっぱりいいなぁ。なんだろ、心の真ん中があったかくなる。3年間大好きだった笑顔につられて、私も笑顔で大きくうなずいた。

    先生の生徒でいた3年間。先生のことがずっとずっと好きだった3年間。初めて訪れた絶対に誰にも邪魔されない二人っきりの時間。駅まで10分間、これはチャンス。卒業まで後1ヶ月。今しかない気がする。この気持ちを伝えるチャンスは。

    巡り巡ってきたこのチャンスのきっかけは、今日の高校生活最後の委員会。諸々の引継ぎが終わったのは最終下校時刻ぎりぎりの6時5分前。思いの外長引いたせいで、他の皆は帰ってしまって最後に残ったのは委員長の私と顧問の先生だけだった。

    「すっかり遅くなっちゃったな」
    「もうすぐ6時だよ、せんせ」
    「すっかり真っ暗だなぁ。下校時刻過ぎる前に帰るか」
    「うん。あ!ね、せんせ。あのさ、駅まで一緒に帰ろ」
    「そうだな。じゃ、昇降口で待ってるよ」

    よかった、思い切って言ってみて。それに待ってるよって、うれしいな。だって、まるでデートの待ち合わせみたいっぽくない?そんなこと思いながら大急ぎで下駄箱に走って、上履きから下履きに履き替えて、コートを羽織って階段を駆け下りたんだ。

    「ひでえよ、もう、職員室も誰もいなかったよ」
    「ふぅん、先生たちって案外帰るの早いんだね」

    たわいもないことを話しながら駅を目指す。ちょっとドキドキしているのは内緒。このドキドキが先生に聞こえませんように。それにしても、二人で並んで歩くのがこんなに嬉しくて楽しいなんて知らなかったな。

    「あぁ、3年なんてあっという間だね。あと、1ヶ月で卒業だなんて信じられないよ」
    「ほんとだなぁ。俺も新卒できて4年目、あっという間だったよ」
    「そういえば、せんせ、私たちが1年の頃はよく生徒に間違われてたよね。紺ブレ着なくなったのはそのせい?」
    「おう。もう俺は紺ブレは絶対着ないぞ。」
    「あのときは生徒に完全にとけ込んでたよねー。童顔だし」
    「俺、そんなに童顔?」
    「うん。おもいっきり童顔」
    「そっかー。お前からみても童顔か。なんかさ、生徒から友達としか思われてないもんなぁ。それはそれで嬉しいんだけど、ちょっとは尊敬されてぇなぁ」
    「えー、わたしは尊敬してるよ」
    「お前だけだよー、そういってくれるの」

    先生はくしゃっと笑って、大きな手で私の頭をくしゃくしゃって撫でる。この3年間、何度もくしゃくしゃってされたけど、その度に胸がドキドキした。先生に聞こえてないよね、このドキドキ。なんで好きな人にくしゃってされるとこんなにドキドキするんだろう。どんなに考えても「好きだから」の答えしか見つからないよ。

    「それにしても、もうお前も卒業かぁ。早いなぁ。」
    「ほんとだよ。あっという間、もう来月にはいったらすぐに卒業式。」
    「ま、その後お前は俺の後輩になるけどな。」
    「おかげさまで、無事合格いたしました。ほんとにありがとう、せんせ。」

    そう、私は卒業したら先生の出身大学に併設されている短大への進学する。目指していた学科は受験科目に日本史があって、当時、全国に3校しか設置されていない珍しい学科に通っていた私は、選択科目にも組み込まれていなかった日本史を勉強するために2年間、先生にマンツーマンで教えてもらっていた。

    「俺さ、今だからいえるけどな、お前に「日本史を教えてください」っていわれて本当に嬉しかったんだぜ。」

    突然の先生の一言にドキって胸が鳴った。今、嬉しかったっていったよね。

    「ずっとさ、生徒にチャン付けで呼ばれててさ、俺って教師って思われてないなぁってちょっと落ち込んでた訳よ。でも、お前が「教えてください」って言ってくれてさ。俺を教師として頼ってくれる生徒がいるんだってな。頼りにされてるって、なんかそれが本当に嬉しかった訳よ」

    先生はくしゃくしゃの笑顔でそう言った。
    そんな風に思っていてくれたんだ。もう、どうしようもなく嬉しくて、言葉がでなくて、ドキドキしながらただ先生の目をじっと見つめながら聞いていた。

    「だからさぁ、お前が合格したのは嬉しかったよ。でも、卒業して寂しくなるなぁってのもある訳よ」

    「訳よ」は先生の口癖だ。あと何回聞けるのかな。

    「だからさ、卒業しても、お前はこれからも俺の大切な生徒で、後輩だからな。俺はお前の兄貴みたいなもんだ。だからさ、何か困ったことがあったらいつでも連絡してこいよ」

    先生はあの大きな手を差し出した。私もあわてて手袋を外して手を差し出して握手をした。

    もう、先生はずるいな。私が告白する前に答えがでちゃったじゃない。先生の手をぎゅって握り返しながら心がきゅって鳴った。

    先生、私の気持ちにとうに気づいていたんだね。だからあえて、兄貴みたいなものだろって言ってくれたんでしょ。これからも今までみたいにいれるように。ちょっと泣きそうになったけど、先生を困らせちゃいけないと思って、ありったけの笑顔でこう言った。

    「ね、せんせ、寒いからココア買ってー」

    そっと手を離して自動販売機を指さす。

    「おう」

    先生は大きな笑顔で頷くと、自動販売機の前に仁王立ちをした。なぜかいつも仁王立ち。仁王様って呼んだら顔を真っ赤にして怒ったことがあったよね。

    ガシャンガシャンと缶の落ちる音がする。先生はコーヒーを左手に、ココアを右手に持って私に差し出した。

    「ありがとー」

    ほんのり甘いココアは、ちょっと切なくてまるで私の3年間の恋心みたいな味がした。

    もう一度、ありったけの笑顔で先生に笑いかける。

    「暖かーい、美味しいね」
    「そうだなぁ、うまいなぁ」

    お互いに笑顔で先生はコーヒー、私はココアをゆっくりと飲んで、また笑った。

    「さ、風邪ひかせるわけにはいかないからな。そろそろ行くか」
    「うん」


    先生と帰る最初で最後の通学路。夜空を見上げたら星がきらきら光っているから、先生と星座の話をしながら二人並んで駅を目指した。私は結局先生に大好きって言葉を伝えることはできなかった。けど、でもね、先生、今日は一緒に帰れて本当によかったよ。ありがとう、先生。やっぱり、大好きだよ、先生。この言葉はずっと胸にしまっておくね。

  • #13

    浅加怜香 (土曜日, 02 8月 2014 22:00)

    タイトル 『私だけに教えて』
    ペンネーム  中谷美月
    本名     浅加怜香

    どうして、初恋のことを思い出すと恥ずかしくなるのだろう。
    あのときはあんなに好きだったのにどうしてだろうか?
    好きになった男の子は、顔も性格も成績も
    人並み以上の子だったはずなのになぜなのだろうか?
    もしかすると、苦い思い出だったからなのかもしれない。

    私の場合を考えてみた。
    私の初恋は小学校1年生の時だった。
    相手の男の子は同じクラスメイトの子だった。
    学校で仲のよい友達の一人に「好きな子はいるの? 絶対に誰にも言わないから私だけに教えて」
    と言われたから教えたら、
    気がついたときにはクラスのほとんどの子が知っていて、当然のごとく、好きだった男の子も知っていたらしい。
    おまけにクラス担当の先生まで知っていたのだ。

    元から好きになった男の子とはあまり話す機会はなかったけど、その事実を知ってからは、
    恥ずかしくて学校へ行くのも嫌だったし、
    偶然に目が合ってもすぐにそらすようになってしまったのだ。

    次第に私の心はその男の子から完全に離れてしまった。
    少し経ってから、私が好きになった男の子は
    「実は、私のことが好きだった」ということを知ったけど、そんなことはもうどうでもよかった。
    両想いになっていたのにちっとも嬉しくもなんともなかった。

    このことがきっかけで、一度、離れてしまったものを引き寄せることはよっぽどの力がない限り無理だということを子どもながらに気づいてしまったし、
    「誰にも言わない」という言葉ほど信じられない
    言葉であることを知ってしまった。
    確実に初恋は、苦い思い出になってしまったことは間違いない。

    その後、学年が変わったときにクラス替えがあり、
    好きだった男の子とは別々のクラスになった。
    しかも、この年の後半にはこの男の子は転校してしまったので、もう二度と会うことはなかった。
    周りにいるクラスメイトたちもこの男の子の存在を
    忘れてしまい、話題をすることはなかった。
    そして、私も忘れようとしていた。

    要するに、好きだった男の子の名前をバラされ、
    多くの人に知られてしまい、本人にまでも知られてしまったことが、私が恥ずかしくなる理由なのだ。

  • #12

    宮田 充也 (木曜日, 31 7月 2014 21:13)

    1)タイトル:僕がボールペンを好きな理由
    2)ペンネーム:じゅうや
    3)本名:宮田 充也

    自分が世界で一番不幸だなんて思わない。
    他愛もないことだ。誰もが当たり前に経験する、ごくありふれた出来事だ。

    十八歳。大学浪人した僕は、早々に恋をした。
    予備校に入って一週間くらい経った頃、たまたま僕の隣の席に、とある女の子が座った。
    癖の強い髪をした、頬にニキビのある女の子だった。
    僕もその頃ニキビに悩んでいた。そのせいで僕は、面と向かって人と話すのがとても嫌だった。
    けれどもその子は、僕をまっすぐに見て話しかけてきた。
    「シャーシン持ってる?」
    写真? 僕は首を傾げた。
    「ええと、何の写真?」
    「あ、いやいや。シャーペンの芯」
    僕の小ボケがツボにはまったのか、彼女は歯を見せて笑った。
    ひどく耳が、熱かった。

    結局、それがきっかけだった。
    話しかけてくれた。ただそれだけの理由で、僕は彼女を好きになった。
    アニメやゲーム。マンガやテレビ。典型的なオタクだった僕は、この年になるまで恋などしたことがなかった。
    あのころの僕にとって恋愛とは、フィクションの中で繰り広げられるドラマの要素のひとつでしかなかった。
    ひどく遠いもの。どこかで誰かが興じているもの。
    一言で言えば、他人事だった。

    それが、突然目の前に現れた。
    その日から、あの子のことが頭から離れなくなった。町中で見かける髪に癖のある女性は、みんなその子に見えた。
    しかしその悩みは、苦しい反面、間違いなく楽しくもあった。
    その子のことを考えると、妙に心が弾むのだ。

    告白するだの付き合いたいだの。
    そんなことを考えられるほど僕は大人じゃなかったし、勇気もなかった。
    ただ思っているだけだった。

    そんな気持ちにも、区切りが付くときがやって来た。
    夏の休みの期間が終わって、後半のカリキュラムが始まる頃。
    あの子が、知らない男子と一緒に予備校の廊下を歩いていた。
    吐くかと思った。高鳴った心臓は、しばらく大人しくならなかった。
    ただの友達。
    そう自分に言い聞かせたけど、その子がその男子と一緒に歩いている姿は、それから頻繁に見るようになった。
    そういうことだ。夏の間に、何かあったのだ。

    別に告白するつもりなどなかった。
    だけど、どこかでなにかを期待していた。
    そんな期待も潰えてしまえば、なにもしなかった自分を笑うことしか、もうする事がなかった。

    失恋。
    自分が世界で一番不幸だなんて思わない。
    他愛もないことだ。誰もが当たり前に経験する、ごくありふれた出来事だ。
    何度自分をそう説得したことか。
    しかし思ってしまう。自分が世界一不幸だと。

    結局それで、僕の初恋は終わった。
    などと簡単にすませられればいいのだけど、結局大学に行くまで、気持ちの整理をつけることはできなかった。
    そして困ったことに、シャーペンの芯を見るたびにその子のことを思い出してしまうようになった。
    だから僕は、ボールペンのほうが好きなんだ。

  • #11

    鵜養真彩巳 (木曜日, 31 7月 2014 13:39)

    タイトル「初恋の影響力」
    ペンネーム:鵜養真彩巳
    本名:鵜養まさみ

     初恋が、その人の人生にどのくらい影響を与えたのか、考えてみたことがあるだろうか。何も就職や結婚に至るような大きなコトばかりではない。音楽や食べ物、スポーツのような身近な好みにだって関係していることはあるかもしれない。
     もしかするとそれは、雛鳥が初めて動いたものを見て、親と認識する「刷り込み行動」と同じように、私達も初めて異性を意識したとき、自分の好みに何かが刷り込まれてしまったのかもしれない。
    私の場合を考えてみた。
    私の初恋は、小・中学共に同じ学校だった人だ。ずっと片思いでほとんど口を利いたことはなかったが、そんな彼に一度だけ、私から年賀状を送ったことがあった。
    ある年の冬休みに、差出人の書いていない年賀状が届いたのがきっかけだった。
    「誰からかな・・・?」
    私の知っているお友達からは、みんな年賀状が届いていた。届いた年賀状には、なんの特徴も無く、あけましておめでとうの文字と、ちょっと絵が描いてある程度だった。私はとっさに小学校の卒業文集を引っ張り出し、心当たりのある人の文字を比べてみた。当時、卒業文集は直筆を印刷したものだったので、年賀状と比べて同じ文字が見つかればわかると考えたのだ。あれでもない、これでもないとページをめくっていくと、ふと憧れの彼のページを開いていた。
    「もしかして、彼だったりして!」
    見比べてみると、文字が全て同じように見えてきた。
    「ああ、間違いない。彼が私に年賀状をくれたんだ!今年もよろしくって書いてくれた・・・。」
    私はすっかり舞い上がり、すぐに年賀状の返信を書くことに決めた。
    「でもでも、なんて書いたらいい?お返事ありがとう?今年もよろしく?あ、彼の家族に女の子からの年賀状が見つかったら迷惑かな・・・。」
    勢いで決めたものの私は考えこんでしまい、その結果、なるべく目立たないように宛名も文面も全て黒の鉛筆で書いた。(彼の住所は小学校の卒業アルバムに記載されてあったので、問題無く書けた。)
    しかしここまで書いてやっと、
    「本当にこの年賀状は彼からのモノだろうか?」
    と肝心なことに気付いた。でも、彼には年賀状を出してみたい・・・。悩んだ挙句、私も差出人を書かない、という不思議な年賀状を作ってしまった。
    投函した後、小学校の同級生に、差出人の無い届いた年賀状をみせて相談してみた。すると、
    「あ、これ1組のユキちゃんからだよ!うちにも届いてた。自分の名前を書き忘れたんだねぇ。」とあっさり私の間違いだと判明してしまった。私は自分のうかつさに恥ずかしくなり、ますます大好きな彼に、話しかけるようなことはできなくなってしまった。その代わり、彼の部活動をしている姿を眺めていることが多くなった。(今思うとちょっと不気味な気がするが、あの頃の女の子たちは、これが普通だったのだろうか。)その後、高校はお互い違う学校へ進んだため、結局私の初恋はひとり相撲で終わってしまった。

    そんな「何も無かった彼」でも、私には影響を与えている。彼は、サッカー部のゴールキーパーだった。中学校ではゴールネットのすぐ裏が渡り廊下だったので、さりげなくしかも間近でサッカー部の練習を見ることができた。彼はすらっと背が高くスポーツマンで、両手を広げてゴールを守る後ろ姿が頼もしくてかっこよかった。そんな姿に、私のほかにも憧れている女子がいたぐらいだ。大人になった私は、スポーツ観戦にはまったく興味は無いものの、サッカーの試合には目がいくようになった。しかもロナウジーニョ選手やメッシ選手のような華やかな人よりも、ゴールキーパーにいつも注目をしてしまう。それは単に、初恋の人のポジションがサッカーのキーパーだったからだ、と今でも思う。きっと、初恋の彼の姿と重なって応援に力が入ってしまうのだろう。
    要するに心理学的に言えば、初恋をすることで自分の世界が広がり、初めて見たその世界の中にいた異性が、一種の基準や元型となるのだ。そして自分の好みに、多かれ少なかれ刷り込まれてしまう、と私は信じている。初恋の彼が野球部であれば、バスケットボールの選手であれば、私のスポーツを見る目もきっと違ったものになっていたはずだ。
    大人になったあなたにもそんな元型や基準が、ありませんか?

  • #10

    さとうあやこ (木曜日, 31 7月 2014 00:00)

    タイトル「中途半端な初恋」
    ペンネーム:秋カスミ
    本名:佐藤亜矢子

    「あなたの初恋は?」
    どうしてこの質問をされると答えにつまるのだろう。難しいことを説明するでもなく、いまさら恥ずかしがる話でもなく、ありのままを話せばいいのに、なんでつまるのだろう。
    もしかすると「高校1年の夏です!バスケ部の先輩でした。」みたいな、熱く甘酸っぱい青春の思い出が明確にないからかもしれない。しかし、そもそもみんな自信をもって初恋を語れるのか。

    私の場合を考えてみた。
    曖昧な記憶から、初めてキュンとしたあの時を、押入れの奥にしまったアルバムをそっとひっぱり出すようにゆっくり思い出してみる。
    あれは小学校6年生だった。彼は同じクラスでサッカークラブのキャプテンで小学校の児童会長。背は低いけど、スポーツ万能で人気者だった。勉強はそんなにできた方ではなかったかもしれないが、当時はスポーツ万能=かっこいい!という図式が完全にできあがっていた。
    彼は、いつもプーマかアディダスのジャージを着てきていた。そのジャージ姿はイケていた。
    人気者の彼には、当然ライバルもいた。たぶんクラスで1,2番の才媛。
    そのころ、人生の一大事に値するくらい重要なイベントが「席替え」だった。すべての運をこの席替えにかけてもいいくらいだった。どんなやり方でそのとき席を決めたか定かではないが、とにかくそのライバルの子が彼の隣の席になった。
    私は列を挟んだ斜め後ろ。右前方に彼とライバルの才媛女子が並んでいて、時折二人がしゃべる姿にジェラシーを感じていた。彼が後ろの席の子に話かけるとき、体をよじるタイミングで上半身がこちらを向く。私とは目が合いそうで合わなかった。

    それでも一度だけ行動を起こした。そう、バレンタインデーという王道イベント。溶かして固めただけの手作りチョコ。どうやって渡したのか、どんな反応だったのか…思い出せない。その後小学校を卒業し、地元の同じ中学へ。

    環境はガラリと変わり世界が広がった。異文化が入り込んできた気がした。こちらの小学校にはいないタイプのませたやんちゃも多かった。もう一方の小学校出身者が何もかもリードしていた(気がした)。
    あんなに気になっていた彼がその新しい世界では急に小さく見えた。あのドキドキはなんだったんだろう。こんなに冷めてしまうものなのか。その程度の恋だったのか。
    でも1年近くは確実に好きだった。二人きりの思い出など一つもない。そして何があったわけでもないのに急に冷めるという終わり方。
    幼き自分のドキドキを否定したくないが、小学生の恋などそんなものなのかもしれない。
    要するに、初恋について聞かれて答えにつまるのは、キュンとした思いはあっても、自分の初恋があまりに中途半端な終わり方をして、「初恋」として胸を張って言えたものじゃなかったからだ。

  • #9

    おかだなつこ (火曜日, 29 7月 2014 05:49)

    タイトル「フォルダ的初恋論」
    ペンネーム おかだなつこ
    本名 岡田那津子

    そもそも初恋って、どの恋を指すのだろう?「初恋はいつですか?」そう聞かれて戸惑うことはないだろうか。

    以前、とある男性と恋の思い出は女性は上書き保存、男性はフォルダーごと保存ってよく言うよね、という話をしたことがある。

    すると、彼はこう言った。

    「ということは、女性は常に新しい恋をする度、その恋が初恋になるんですね?」

    なるほど、そうかもしれないと感心したものだ。
    それは極端な話としても、女性はやはり忘れることに長けている。それでも、いくつかの恋はきちんとフォルダ分けして残っている場合があるような気がする。


    私の心の中のフォルダに残っている恋で、「初恋」と呼ぶにふさわしいのではないかと思う恋は、高校生の時だ。私が通う高校は、公立高校でありながら当時ではかなり珍しい学科で、全国ではその学科を設置しているのは3つしかなく、後の2校は私立高校だった。定員は40人、3年間クラス替えもなく、学校で一番の変わり者が集まるクラスとしても有名だった。3年間じっくり相手ができて、個性的な生徒が集まるということで、私たちの学科を担任として持ちたいという先生で希望者が殺到すると聞いたのはずいぶん後のこと。それを教えてくれた相手は社会科の先生。そう、私の初恋の相手は先生だった。

    先生はまだ新卒2年目。童顔で、大きな目。そして、黒板に書く文字は最初は小さくて、一文字書き進めることに大きくなり、気がつけば倍の大きさになっていっていつも生徒を笑わせた。そして、字と同じように声が大きく、生徒よりも生徒っぽい雰囲気を持つ私たちのクラスの副担任だった。剣道部の顧問で、私が6歳から剣道を始め、さらに通っていた中学の剣道部は、全国大会に連続出場、男子は全国2位、女子も県内では負けしらずの学校だったことをしった先生が、「お前、○中学で剣道部だったんだろ?剣道部はいらないか?」と声をかけてきたのだった。

    部活独特の群れる精神が苦手だった私は入部は断ったけれど、部活が休みの日に、先生の稽古相手くらいはできるよ?といったら、大喜びでそれから何度か稽古相手をつとめることになった。先生は前任の顧問が退職してしまったため、「高校時代の選択授業が剣道」だっただけで、顧問を押しつけられた格好で、部員よりも初心者で負けっぱなし馬鹿にされ、ほとほと困っていたらしい。

    実際に稽古を共にしてみるとになってみるとまっすぐな性格なんだろう、「面、面、小手、胴」と連続技が毎回一緒だった。初心者が陥りやすいパターンだ。

    「先生、それじゃ勝てないよ~。すぐ読まれるよ。」

    と言ったら顔を真っ赤にして「もっと早く言えよー!」とばつの悪い表情を浮かべた後、二人で大笑いしたことを今も覚えている。

    顧問になってから剣友会にも入っていた先生は毎日練習を積み、あっと言う間に上達していった。大人なのに、真っ直ぐにたくさん努力をして、結果を出していく先生にあこがれはじめたのはこのころだろう。

    1年生の夏休みには、「学校にばれたらお前等は退学、俺はクビ」といいながら、クラスの仲のよかった友人達3人で、帰省する先生についていって、長岡の花火を見て、実家に泊めてもらったこともあった。

    そして、志望大学の受験の必須科目でありながら、選択科目にもなっていない日本史を「お前の志望校、俺の母校じゃないか!!」と大喜びしながらマンツーマンで教えてもらったり、思春期独特の悩みをぶちまけたりしていた。いつも全力で教えてくれて全力で一緒に悩んでくれていた。そんな先生と接するうち、いつしか憧れから恋心に変わっていくにはそんなに時間はかからなかった。

    いつだったろう、先生がふとこんなことを言った。

    「お前は真っ直ぐにぶつかっていくから大分生きにくいこともあるだろうけど、俺はそれでいいと思うよ。真っ直ぐ自由に生きていこうよ。」

    そして、満面の笑みでこう付け加えた。

    「お前は俺に似てるんだよ。」

    あれから、もう30年近い時が過ぎた。先生はご結婚され、他の高校で今も教鞭を執っているらしいということは風の噂で聞いている。

    先生にいわれた「真っ直ぐ自由に生きていこうよ。」は今でも私のポリシーになっているっていったら驚くだろうな、なんてことを考えている。確かに生きにくいことはたくさんあったけど、「それでいい」といってくれたから、今の私がある。私にとって先生は初恋の相手であると同時に、似たもの同士で、さらに人生の指針を授けてくれた人でもある。だから上書き保存はされず、今も心の中に淡い恋心のかけらとともに、大切に大切に保管しているのだろう。「真っ直ぐ自由に生きていこうよ。」という言葉とともに、これからもずっと。

  • #8

    dainosuque (月曜日, 28 7月 2014 14:20)

    タイトル:15の告白
    ペンネーム:dainosuque
    本名:今井大輔
    1989年15歳の夏。中学最後の夏休み。
    イヤホンで耳を塞ぎ、ウォークマンから流れる尾崎豊の曲を聴いていた。YOU&Iで全作品を借りてテープにダビングした。
    受験生だが、すべてが嫌になっていた。親は学歴社会では、どこの大学行ってたかというのが大事だから高校もちゃんとした学校に行け、と口酸っぱく言っていた。私は幼ながらに、それは間違っていると思っていた。私は家では何も勉強しなかった。普通に授業を受けていれば、5段階でオール3は取れる。それで良かった。
    扇風機の風が私の身体を慰め程度に冷やす。開きっぱなしの窓の向こうは青い空と入道雲が見えた。
    はじめて聴く曲が流れる。「太陽の破片」と書かれてあった。
    私はコピーした歌詞カードを見ながら聴いた。自然と涙が出た。魂が震えた。
    もう一度巻き戻し聴いた。また聴いた。私は何度も繰り返した。
    そして、ふと君の顔が浮かんだ。君に告白しなくてはと突然思った。
    もう一度聴く。その気持ちは更にたかぶる。
    私は電話機のところまで行き、受話器を手に持った。かけたこともない君の電話番号を押す。暗記していた。一生かけることはないと思っていた。と考えていると弱気な私が現れる。受話器を置いてしまう。情けない。
    そんなことを何度か繰り返していると、そんな女々しい自分が嫌になった。
    「ハァ」ひとつため息をこぼす。
    今度こそはと思い受話器を持ち、電話番号を押す。トゥルルル〜トゥルルル〜乾いた電子音が私の耳を突つく。
    「もしもし」出たのは君の父親だ。(今のように携帯電話がない時代、こういうことはよくあった。誰もが心臓の止まる思いになったに違いない)
    「失礼だが、君は娘とどういう関係なんだ?」
    私は連絡網だと言い誤魔化し、君がいるか聞いた。父親はしぶしぶ代わってくれた。
    「もしもし」君の可愛い声が私の耳に入る。それだけで幸せだ。
    「もしもし、突然ごめんね」と私は言った。
    「去年はクラスが一緒だったけど、今年は違うから、何してるのかな〜って思ってさ。宿題とか終わった?」
    「宿題はあと半分くらい、そう言えば、受験する高校決まった?」
    「俺は決まってないよ。君は?」
    「私は◯◯高校受けるつもり」彼女の言った学校は女子校だった。私は少し落ち込んだ。君とは違う学校になってしまうことを考えると、やる気のない勉強がさらにやる気がなくなった。
    私は一度大きく深呼吸をした。心を落ち着けるためだ。
    二人の間にしばしの沈黙が流れる。この空間に我慢できずに私は口を開いた。
    「あの〜、お、お、俺、君のことが好きだ。去年同じクラスになってからずっとずっと君のことが好きだった。よかったら俺と付き合ってください。一回デートしませんか?」
    しばらく彼女は黙っていた。やっと彼女の声が聞こえたのは私が呼吸を十回した時だった。
    「ありがとう。でも私、はじめて男の人にそういうこと言われてなんて答えていいのかわからないの。あなたのことは面白い人だと思うわ。でも即答はできない。明日まで待っててもらえる?」と言い、彼女は電話を切った。
    私はわけがわからなくなり、大音量で尾崎豊の「FREEZE MOON」を聴いた。そして聴き終わると、外に飛び出して心の中に流れるそのメロディにあわせ猛ダッシュをした。ちょうど部活帰りの兄とすれ違う。
    「お前、なにやってるんだよ?」と兄は大声で尋ねる。
    私は答えた。
    「青春してるんだよ!」
    薄明かりの空の大きな満月が、私を応援してくれているように思えた。
    次の日、君からOKをもらい私たちは交際をはじめた。一回か二回デートして、別れた気がする。

    あれから15年後、地元の祭りで私は君と会った。会ったというよりは5メートルくらい離れた場所で目が合ったというのが正解だ。
    若干、君の目の横に皺があるように見えたが、あの頃と同じ、笑顔だった。君は抱いている赤ん坊を見て、もう一度、僕と目を合わせ、軽く会釈し人混みに消えて行った。

  • #7

    みか (日曜日, 27 7月 2014 09:46)

    再投稿申し訳ございません

    1)タイトル:恋に落ちるきっかけ
    2)ペンネーム:夏来 みか
    3)本名:戸部美香



    人は、どうしたきっかけで「恋」に落ちるのだろう?

    恋に落ちた理由なんてないってよく聞くけど、本当に理由なんてないのだろうか?というのが、初恋の時からの私の疑問だ。

    初めて恋に落ちた。と思ったのは、高校一年生の時。三年間の禁欲的な女子中学校での経験のあと入学した、渋谷駅近い、自由な校風の、規則があまりない高校に、戸惑っていたときだった。

    最初の座席の並びは、アイウエオ順で左から順番に縦並びだった。だから、後ろの席は、「と」から始まる男子だった。
    あるとき、彼が後ろの席で誰かに言った。私に言ったのか、別の人に言ったのかはわからない。

    「僕、好きな人ができた。『と』で始まる名前の人」

    それをきっかけに、私は彼が気になりだし、いつの間にか好きになっていた。その恋は、すごく仲良くしてもらっていた、1学年10クラスもある中で、とても目立っていたお友達が、彼の彼女になったことをきっかけで終わった。ちなみに彼女の名前に『と』はどこにもない。

    こんな事もあった。
    大学生になったときだった。二浪して私と同じ学年の男子を、
    学年二つ上の華やかな女性の先輩が「S君かっこいい」と言っているのを聞いた。それまで、別の男の子の方がかっこいいなとか、素敵だなって思っていたのに、S君の事が急に気になりだし、結局、大学4年間、実らなかったけど、S君にずっと片思いしていた。

    自分を振り返ってみると、
    「相手が自分を好きかも」
    「誰かがその人好きかも」
    というきっかけだけで、簡単に恋に落ちる経験しかないものだから、
    人が恋に落ちるきっかけなんて、そんなものじゃないかと思っている。

  • #6

    関根 雅史 (筆名:石賀 次樹)  (日曜日, 27 7月 2014 09:45)


    『初恋の相手を即答できる人できない人』

     どうして「初恋はいつですか」という問いに対して、即答できる人と逡巡する人に分かれるのだろう? 即答できる人は自分史の年表に「初恋」と明記できるくらいにゆるぎないそのときを自覚しているに違いない。一方、逡巡する人は、様々な前提条件によって「初恋」の対象がシフトしてしまうのだろう。

     もしかすると、即答できる人はオクテの人が多く、逡巡する人はワセの人が多いのかもしれない。オクテの人は初恋の段階ですでに人としての感性ができ上がっていて、自分の好みが明確になっている。しかし、ワセの人はまだそれが形成段階のため、かなり流動的な状態にある。そのことが即答と逡巡という違いの生まれる原因なのではないか。

     私の場合を考えてみた。私はオクテとワセで二分するならば、ワセに属すると思う。そして、私は逡巡タイプだ。
     はっきり友達とは異なる感情で私が最初に異性を意識した相手は、幼稚園の先生だった。しかしその後、小学校に入ってからは毎年気になる女子が変わっていった。また、その各々のケースが恋と言っても間違いではないくらいに、私は彼女たちにはっきりと思いを寄せていたように思う。
     だが、「では初恋はどれ?」と聞かれると、単純に時系列で最初の幼稚園の先生とは返答しかねるところがある。憧れ、関心をひきたい、話をしたい、友達になりたい、手をつなぎたい、相思相愛になりたいなど、それぞれの段階で欲求もシフトしていった。一体どの段階が初恋というにふさわしいものなのかで逡巡する。
     ところが、私の友人の場合はまったく違った。中学生時代まで、彼はずっと異性に対する特別な感情はなく、女子からも同様に思われていた。しかし、高校に入っていきなりある女の子に一目惚れをしてしまった。ちなみに彼はその後、彼女と目出度く交際することができた。そのうえ結局、結婚して今も仲睦まじく暮らしている。彼に「初恋の人は?」と聞けば、まぎれもなく彼女と答えることだろう。

     初恋の相手を即答できる人と逡巡する人の違いが、オクテかワセかにあるという私の仮説は一理あると思う。しかし、それがすべての理由ではなく、相手への一途な思いの度合いによっても、即答できるかできないかは大きく変わってくるに違いない。上記の友人の一途と私の気の多さを比較しても、そのことは明らかである。

  • #5

    みか (日曜日, 27 7月 2014 09:42)

    人は、どうした瞬間に「恋」に落ちるのだろう?

    恋に落ちた理由なんてないってよく聞くけど、本当に理由なんてないのだろうか?というのが、初恋の時からの私の疑問だ。

    初めて恋に落ちた。と思ったのは、高校一年生の時。三年間の禁欲的な女子中学校での経験のあと入学した、渋谷駅近い、自由な校風の、規則があまりない高校に、戸惑っていたときだった。

    最初の座席の並びは、アイウエオ順で左から順番に縦並びだった。だから、後ろの席は、「と」から始まる男子だった。
    あるとき、彼が後ろの席で誰かに言った。私に言ったのか、別の人に言ったのかはわからない。

    「僕、好きな人ができた。『と』で始まる名前の人」

    それをきっかけに、私は彼が気になりだし、いつの間にか好きになっていた。その恋は、すごく仲良くしてもらっていた、1学年10クラスもある中で、とても目立っていたお友達が、彼の彼女になったことをきっかけで終わった。ちなみに彼女の名前に『と』はどこにもない。

    こんな事もあった。
    大学生になったときだった。二浪して私と同じ学年の男子を、
    学年二つ上の華やかな女性の先輩が「S君かっこいい」と言っているのを聞いた。それまで、別の男の子の方がかっこいいなとか、素敵だなって思っていたのに、S君の事が急に気になりだし、結局、大学4年間、実らなかったけど、S君にずっと片思いしていた。

    自分を振り返ってみると、
    「相手が自分を好きかも」
    「誰かがその人好きかも」
    というきっかけだけで、簡単に恋に落ちる経験しかないものだから、
    人が恋に落ちるきっかけなんて、そんなものじゃないかと思っている。(了)665字

  • #4

    さや☆えんどう (土曜日, 19 7月 2014 19:06)

    1)タイトル:人は二次元を愛せるか!?

    2)ペンネーム:さや☆えんどう

    3)本名:小塩 幸子



     人は、キャラクターという二次元の存在を愛する事ができるのでしょうか?

     愛と聞けば、つい、人に対するものだという連想が浮かびがちです。
     でも本当にそれだけなのでしょうか?
     ペットを家族として愛している人、アイドルに恋してコンサートに通う人もいます。

     そう考えると、ペットやアイドルどころか、現実にいないはずのキャラクターを愛するということもありうるのではないでしょうか?

     私の場合を思い出してみました。
     幼稚園児の頃、私は当時やっていたテレビアニメのキャラクターに一目ぼれしました。それは、銀河鉄道999というアニメに出てきた「ハーロック」という隻眼の海賊のキャラクターでした。今あらためて見ると、ハーロックは年齢が40歳近くに見えます。なんというシブ好みの幼稚園児だったのでしょう。しかしそれは間違いなく、とても幼い恋だったのだと思います。
     幼い私は、そのアニメの影響を受けて、絵ばかり描くようになりました。アニメのキャラクターには、そのアニメをやっている時間しか会えません。運が悪ければ、見ている回に登場しない事も多々あります。幼なすぎて「グッズや本が出ているだろう」という知識はありませんでしたし、だからこそ好きなキャラクターに会うためには、自分で描くしかないと思っていたのです。
     そしてそこから、将来は絵を描くような仕事に就きたい、と思い始めた気がします。
     しかし一方で、あまりに幼すぎてそれが恋だということにも気づかず、キャラクターへの想いは心のうちに秘めたまま、小学生になり、やがて中学生になりました。
     この中学校で大きな転機が訪れました、引っ越しで、田舎の小学校から、神奈川の都会の中学校へと通う事になったのです。田舎の小学校は、アニメの好きな人がまったくいない学校でした。私は絵ばかり描いてはいたものの、好きなアニメについて話す事も、深く知る事もない状態で6年間を過ごしました。
     しかし、都会の学校は違いました。
     アニメファンという存在が、たくさんいたのです。
     好きな作品は違えどアニメや漫画が大好きで、そういう絵を描いてばかりの、私のような女の子がいっぱいいたのでした。私の友達環境は一変しました。
     友人は私に、アニメ雑誌を教え、アニメグッズショップへ連れて行きました。はじめて同人誌即売会(コミケが有名ですね)に連れていってくれたときの興奮は、忘れられません。
     例えば好きな人の影響で、その人が好きなCDを聞いたり、映画を見たりして世界が広がることがあるでしょう。
     私の場合は、アニメや漫画が好きという気持ちを通じて、そしてもうとっくの昔に終わってしまった初恋のあのキャラクターを探して、世界が広がっていったのです。

    つまり、2次元への恋もまた、現実の恋と同じく、たとえかなわぬ恋であったとしても、自分の世界を広げ、良き経験を与えてくれる存在。愛のひとつに違いないのです。

  • #3

    今 巧己(コンタクミ) (土曜日, 19 7月 2014 10:37)

    1)タイトル:初恋の定義とは?

    2)ペンネーム コンタクミ

    3)本名 :今 巧己



    何をもって『初恋』と定義されるのだろう?




    「あなたの初恋はいつですか?」
    と聞かれると、いつも迷うのはなぜか?


    “いつ”初恋をしたのかと聞かれれば、
    幼稚園の頃になる。



    しかし、幼少期に人を好きになることは、
    恋といえるのか?

    ただ最初に人を好きになったことが初恋となるのか?


    少し疑問を投げかけたい。





    もしかすると、
    初めて心に残る恋をした相手のことを、
    初恋としての“思い出”にしたいのかもしれない。




    具体的に私にとっての初恋はどうであったか?





    先ほども述べたように、
    女の子を意識し始めたのは幼稚園の頃である。


    しかし、子供なので気に入った子がいたということだろう。



    小学校三年生の頃、
    バレンタインデーでチョコレートを初めてもらった。


    隣の席の子と仲良くしていたので、
    自分も相手のことを気に入っていた。



    実際、この時を初恋と言ってもいいかもしれない。


    ただ、そのエピソードの思い出はあるが、
    好きだったという感情の記憶が薄い。




    心に変化が生じたのは、
    小学校6年生のときである。




    隣のクラスの子で、
    学級委員長をするような活発な子だった。


    まだ小学生だった私は、
    恥ずかしさから自分の気持ちを伝えることなどできずにいた。


    その後、学級副委員長になり、
    私も各クラスの集まる委員会に参加。

    それをきっかけで、放課後仲良く話すようになり、
    いつしか手紙をやり取りするようになる。



    その手紙のやり取りで、
    お互いのことが好きだったことがわかり、
    初めて両思いという経験をした。


    大人の恋にはほど遠いのだが、
    お互いの友達も含めて一緒に遊んだ。

    二人でよくお話もした。



    この時私は、はじめて彼女を大切にしたい、
    守りたいという心が芽生えたのを感じる。



    私にとって、大きく心が変化した瞬間だ。




    少年はアニメやマンガの勇者に憧れ、
    勇者とは大切な人を守ることとインプットされている。


    この心の変化を感じることで、
    初めて勇者のような気持ちをもったのであろう。

    初恋という冒険を始めたに等しい。



    要するに、人間はロマンスを求め、
    思い出を糧に生きているところもある。




    だから、一番印象的、
    思い入れの強い初めての恋を『初恋』としたいのであろう。




    「初恋はいつですか?」と聞かれるより
    「初恋の相手は誰ですか?」と聞かれた方が、
    迷わず答えられそうだ。


    初恋は掛け替えのない思い出。



    私は一番最初に思い出をくれた恋を初恋としたい。

  • #2

    高山雄大(髙荷一良) (水曜日, 16 7月 2014 13:54)

    「男の啖呵」

    「あなたの初恋は?」
    そう問われると、決まって身体が火照ってくるのはどうしてだろう?
    狂おしいほど好きになってしまったから?
    時がたつのを忘れてしまうほど濃密な関係になったから?

    もしかすると、穴に飛び込みたいくらいの恥ずかしさから身体が「カーッ」となるのかもしれない。

    私の場合を考えてみた。
    中学・高校の頃、私は硬派を気取っていた。
    「女とちゃらちゃらしてられっかよ」
    強弁は次第に意地となり、意地は強固な鎧となった。
    いつしか女の子と話ができない自分をどうすることもできなくなっていた。
    「このまま女の子と喋れないまま人生が終わるのか」
    喋りたいけど喋れない葛藤が延々と続く。

    池袋にある予備校に通うようになっても続くもどかしさ。
    そんな私がとてつもなくすらっとして瞳のぱっちりした女の子に恋をした。
    一緒に学ぶ教室で姿を探す日々。うつむきがちな顔がとても清楚に見える。

    「だったら声をかけてみるんだよ」
    初めて胸の内を明かした友人からそっけないひと言。
    「人のことだからって気楽に言うな。オレが声をかける?そんなの無理だ。相手は何も知らないんだ。断られるのは間違いない。ダメと分かってやるのか?」
    家と予備校の道のりは、すべて自問自答で占領された。

    けしかける友人の声が日増しに大きくなる。あまりにうるさいので
    「声かけることができたら、メシ、おごれ」
    とうとう啖呵をきった。

    授業が終わった昼下がり。その子の後をさりげなく追う。このままいくと電車の改札口だ。太陽が容赦なく照りつける。不意に怒りが込み上げてきた。
    「何でオレだけ?ふざけるな」
    振りきるように足を速めて前に出た。声をかけようとした瞬間、振り向く彼女。憧れの人は今目の前にいる。高なる動悸。額に浮かぶ汗。赤くなる顔。
    「あの~。オレ、…実は同じ予備校で…」
    どもりながら話したのは覚えているが、その後は…、何も思い出せない。
    さぞ彼女はびっくりしたことだろう。今だったらストーカーと名指しされるに違いない。

    要するに、私の身体が火照るのは、悶々としたエネルギーの喜びの発露なのだろう。
    それとも、「メシおごれ」というあまりに単純な動機が、殻を打ち破る原動力になりうることに気づいた
    嬉しさの表れなのか。
    打ちひしがれ肩を落として戻る自分はかっこ悪かったが、自分に握手を求めてきた友人たちの姿が35年を過ぎた今でも鮮やかによみがえる。

  • #1

    平泉あき(高橋フミアキ) (月曜日, 14 7月 2014 10:50)

    『胸がキュウンとする思い出』

     どうして、初恋を思い出すと胸がキュウンとするのだろう? 初恋を思い出しているとき鏡を見ると私は悲しい顔をしていた。少なくとも笑ってはいない。かといって悲しいわけではない。「胸がキュウンとする」としか表現しようがない感情が襲ってくるのだ。いったい、なぜなんだろう。

     もしかすると、心に深い傷を負っているからかもしれない。「傷」というとトラウマという言葉が浮かんでくるが、そんな仰々しいものではないような気がする。ただ、初恋の思い出は決して忘れることはできないものだ。その忘れられなくしているものは何だろうか。

     私の場合を考えてみた。
     私の初恋は高校2年生のときだ。広島県福山市の山間部にある進学高である。私は同じクラスの女性を好きになった。それまで私は女性と交際した経験はなく、交際を申し込むとき、どう言えばいいのかさえわからなかった。
    「付き合ってください、って言えばいいんだよ」と友人が教えてくれた。
     なるほど、と思った。「付き合ってください」とは便利な言葉だなと感心したものだ。
     ドキドキする胸を押さえながら学校で電話番号を聞きだし、帰宅し電話口で「付き合ってください」と言った。答えは「いいよ」。あっさりしたものだった。
    「デートって、どうすればいいの?」と友人に聞くと、
    「映画に誘えばいいんだよ」と教えてくれた。私は友人の教え通りに実行した。彼女が椅子に座ったら、「トイレへ行ってくる」と言ってポップコーンとコーラを買ってくること、上映中は決して話しかけないこと、映画が終わったら喫茶店へ行くこと、始終笑顔を絶やさないことなど、友人のアドバイスは微細にわたっていて、ありがたかった。

     しかし、いま思えば、あのとき、ああしておけばよかった、こうしておけばよかったと、後悔ばかりが浮かんでくる。そうか、後悔なのだ。忘れることのできない心の傷とは。
     要するに、後悔の念が残っているから、初恋を思い出すと胸がキュウンとするのだ。