何気ない出来事をおもしろい物語に変える3つのコツ

◇ネタは日常生活のなかに転がっている

 正直、小説になるネタは、日常生活のなかにいくらでも転がっています。前回もお話ししましたが、小説というのは、ちょっとしたつまらない話ですから、テレビ番組の『人志松本のすべらない話』のようなものなのです。

 

 その話を聞いて、みんながちょっと笑ってくれたらOK!

 

「なんやそれ、つまらんのう」とか

 

「で、オチは?」とか、

 言われたってかまわないのです。

 

 そもそも、あの番組でも、ちっとも笑えない話がいっぱいありますよね。

 

 それでも、出演者らは笑って「すべらんなぁ~」と言うわけです。

 

 たとえば、人志松本さんの「アメリカの飛行機にて」という話があります。これは何気ない日常の出来事です。多少、創作があるかもしれませんが、天才松本さんは、おもしろく料理しています。ネタをまとめると、次の3つです。

 

・アメリカの飛行機

 

・英語が話せない

 

・喉が渇く

 

 たったこれだけの、何気ない日常のネタです。これを、天才は、どうおもしろく料理しているのか、解説していきましょう。

 

 

 

◇こうやって人志松本のワザを盗め!

 天才、人志松本さんのワザを分析してみました。

 

 この「アメリカの飛行機にて」はこんなお話です。

 

 日本語が通じないアメリカの航空会社の飛行機に乗ったのですが、松本さんは英語がまったく話せません。

 

 そこへCAがやってきます。松本さんが座っていた席は、いざというとき英語が話せないといけないポジションにあるから、席を代わって欲しいとCAが言います。英語がわからないなりにも、とにかく席を代わればいいのだということは理解できたので、素直に松本さんは席を代わります。

 

 

 そのとき、松本さんは、買ったばかりの、真っ新な水の入ったコップを持って移動しました。喉が渇いたので水を注文していたのです。

 

 案内された席につくと、テーブルに移動した男の残したコップが刺してあります。席を代わった男が忘れていったのです。

 

 すぐに、CAがやってきて、松本さんの真っ新なコップを持っていきました。CAは間違えたのです。

 

 「お~~い」と怒鳴っても、それ以上英語が話せないので、松本さんはCAにコップを間違えていることを指摘することができなかったのです。

 

 しばらくしてCAがワゴンを引いてやってきます。喉が渇いていた松本さんは、何か飲み物でも頼もうとするのですが、英語がうまく通じなかったので、CAのなかでは、松本さんは「水分はいらない人」と認識されていたらしく、素通りされてしまうのです。

 

 それでも、あきらめずに松本さんがCSさんに訴えていると、CAが大きなクッキーを持ってきた、という話なんです。

 

 この話のなかには、物語をおもしろくするコツが3つ秘められています。

 

◇その1/困った状況を次々と創り出す

 この話は松本さんが困った状況にあります。

 

 1つは、アメリカの飛行機なのに英語が話せないということ。

 

 2つは、席を代わってくれと言われたこと。

 

 3つは、喉が渇いているのに松本さんのコップをCAが持って行ってしまいます。

 

 4つは、ワゴンがやってきますが、素通りされてしまいます。それで、ますます喉が渇きます。

 

 5つは、喉が渇いているのに、極め付けにクッキーを出されてしまいます。これが、この話のオチになっています。

 

 畳みかけるように、これほど困った状況を次々と出されると、聴衆はどんどん引き込まれてしまいます。主人公が窮地に追いやられるというのは、お話の基本なんです。

 

 問題が発生すると、人はそのあとのことが気になります。どうやって解決するんだろうと考え、好奇心が刺激されるわけです。

 

 好奇心が刺激されるから、のめり込みます。聴衆を話しの世界に引き込むテクニックです。

 

 ですから、小説を書くとき、主人公を困った状況にどんどん追い込んでみることです。

ネタをまず見つけます。そのネタのなかで、困った状況が作れないかどうかを考えるのです。その困った状況を次々と考えていけば、おもしろいお話が作れます。

 

◇その2/怒りの感情を入れる

 松本さんが天才なのは、その話し方です。飛行機のなかの何気ない出来事が、松本さんの話術にかかると、みんながドッと笑ってしまいます。どうすれば、そんな話術が身につくのでしょうか?

 

 見つけました。何気ない出来事をおもしろい物語に変えるコツは、怒りの感情を入れることです。

 

 たとえば、席を代わった男がコップを忘れていたというところで、松本さんは、腹立ちまぎれに話すのです。

 

「その男のコップはちょっとしか入ってないねん。ほんのちょっとなんよ! オレのコップは買ったばかりだから、ひと口も口をつけていない真っ新なんですよ。忘れとるがなぁ~と思ったけど、英語がとにかく話せないから、もう、ええわ!」

 

 CAさんが松本さんの真っ新の水を持って行ったところも、松本さんは怒りを込めた声で話します。

 

「CAがオレの真っ新の水をもっていくねん。とにかく、英語がしゃべられへんから、お~~い! て言うねんけど、何にもよう言わんねん」

 

 実は、この怒りの感情がもっとも重要なコツです。

 

 この怒りがあるからこそ、何気ない日常の出来事がおもしろくなるのです。

 

 

 

 

◇その3/周囲の細かい描写を挟む

 周囲の細かい描写が、おもしろさを増幅させます。怒りの感情と同時に、周囲のこともちゃんと入れることです。

 

 松本さんは、そのへんのこと、ちゃんとわかっているみたいです。

 

 喉が渇いて困っているとき、隣の座席のアメリカ人の親子のことをこんなふうに描写しています。

 

「隣に、外人の親子がおったんねん。その娘がクスクス笑いよるねん。

『パパ、この東洋人、可哀想だよ』

ほな、オヤジが、

『そんなことで笑っちゃいけないよ』

 みたいなことでクスクスクス、笑われてんねん。

 腹立つなぁって思うてんねんけど、なにせ、何にもできへんから、もう、喉が物凄く乾いてしもう

て。喉、渇いたなぁと思ってたら・・・」

 

 

◇3つのコツを応用して物語を作る

 人志松本さんのテクニックを盗んで物語を作ってみましょう。この「怒りのテクニック」を整理すると、次の3つです。

 

・その1/困った状況を次々と創り出す

 

・その2/怒りの感情を入れる

 

・その3/周囲の細かい描写を挟む

 

 その1の「困った状況を次々と創り出す」というテクニックは、物語のプロットになります。最初に「困った1」を出して、次は「困った2」、そして、次が「困った3」、オチとなる極め付けは「困った4」でいく、というふうに、事前にどの順番で出していくかを考えておくといいでしょう。

 

 その2の「怒りの感情を入れる」と、その3の「周囲の細かい描写を挟む」というテクニックは表現技法です。困った状況に対して主人公の怒りを心理描写していけばいいのです。

 

 まずは、日常生活のなかからネタを見つけましょう。ネタというのは、ちょっと関心を持ったことでいいんです。

 

 たとえば、毎晩行くコンビニエンスストアでもいいのです。そこに、中国人の店員と、キャバクラの仕事帰りみたいな若いキャバ嬢がいて、2人がモメていたというのはいかがでしょうか?

 

 そして、あなたは、トイレを借りたく入ったのですが、どこにトイレがあるかわからないという困った状況を考えてみたらいかがでしょう?

 

 次々と困ったことが起こらなければいけませんので、事前に考えておきましょう。

 

 どんなことがいいでしょうか。

 

 2人が喧嘩しているので、店員に「トイレ、どこですか」と聞けないわけです。自力で探そうとして、店内を歩いていたら、ぶら下がっているグミみたいな商品に体があたって、床に落ちてしまうとか、それを拾おうとして、腰をかがめると、膀胱が張っているせいか、躰のバランスを崩して転倒してしまうとか。

 

 床に転がりながらも、喧嘩している店員とキャバ嬢のことが、なぜか腹が立ってしょうがなくて、睨んでいたら、キャバ嬢が睨み返してくるとか。そうこうしていたら、イカツイにいちゃんがコンビニ入ってきて「おい、どうしたんじゃ」とキャバ嬢に声をかけて来たとか。

 

 周囲の細かい描写も欲しいので、雑誌コーナーに黒縁のメガネをかけた男が立ち読みしていて、チラチラこちらをみながら、『このオッサン、床に転がって何しとるんじゃ』みたいな、軽蔑した視線を送っているとか。

 

 そうしたことを、事前に考えてから書きはじめればおもしろい小説が書けます。

 

 

 

 もっと本格的に小説を書いてみたいという人は、

 下記の書籍を読んでみることを、

 おススメします!